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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

【法務情報】中2女子2人が電車に飛び込み自殺!かかった費用は遺族が払う!?

 │ 弁護士朝妻太郎

 

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Q

電車に飛び込み自殺する方は,残念ながら毎年多いですね。
今月も中2女子2人が電車に飛び込み自殺!という悲しい事故が起こりました。

しかし,他の乗客に大きく迷惑をかける事にもなる電車の事故。
電車の人身事故があった際に,遺族に賠償請求が来ると聞いたことがあります。
ご遺体の移動にかかる費用,電車や線路を元通りにするための工事費,また他社路線への振替切符も発行,時間遅れで払い戻しした特急料金など考えると莫大なお金もかかりますよね?
請求された場合,家族を亡くし,悲しみに暮れる遺族には大変なことですね。
また,認知症の老人が徘徊して電車を止めてしまい,その損害賠償を家族が求められたという事件もありました。
自殺の場合,本当に財政的負担はかかるのか?
また自殺ではないが,認知症という病気の場合はどうなのか?

A

理屈の上では,鉄道会社から遺族に対して損害賠償を請求をすることは可能です。
そして,ご遺体を移動させ線路を原状に戻したり,壊れた設備等を直す費用はもちろんのこと,自殺行為がなく通常通り鉄道を運行したら得られたであろう利益に相当する金額を請求されることが考えられます。
本来的には,自殺行為は,亡くなられた方がした行為なので,亡くなられた方が負担すべきものですが,相続により残された遺族が責任を引き継ぐとも考えられます。

しかし,実際に請求するかどうかは,その鉄道会社の判断次第であり,全ての事案で請求されているわけではなさそうです。

また,認知症の方が電車を止めてしまった場合,家族が、その人の「監督者」としての責任を負うかどうかが問題となります。
最近では,生活状況や介護の状況から家族に責任を負わせることが妥当か決めるとした裁判例が出されています。
こちらもケースバイケースの判断となります。

 

◆弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 朝妻太郎◆

 

【法務情報】紛争以外での弁護士活用法

 │ ビジネス, 上越事務所, 弁護士朝妻太郎, 遺言・相続

紛争解決だけが弁護士の仕事ではない
当事務所の顧問先の皆さんは,弁護士が裁判などの紛争解決だけを業務としていないことを既にご存じだと思いますが,多くの一般の皆さんはそのような認識をお持ちでないようです。例えば,争いのない相続は弁護士に相談・依頼することではないとお考えの方は多くいらっしゃいます。また,企業においても,紛争処理以外では弁護士は契約書のチェックくらいしか相談・依頼することが無い,と思われている方もいるかもしれません。

 

本稿では,紛争から離れたところで弁護士がお手伝いできる事柄について,その一端をご紹介し,弁護士をフル活用するヒントにして頂ければ幸いです。

 

企業の内部規程を整備する
各企業・団体内部には様々な内部規程があることはご承知のとおりです。定款,就業規則など基本的なものから,社内共済の取り決めや慶弔金規程等特定の事柄について定めたものも存在すると思います。

 

会社・団体の設立時には,そのような内部規程制定が会社・団体設立の条件になっていることが多く,内部規程の作成が不可欠となります。そのような場面で,弁護士が内部規程作成のアドバイスを行ったり,場合によっては弁護士自体が内部規程を作成することが可能です。また,当事務所には内山社労士が所属していますので,就業規則・賃金規程等については,社労士の立場から詳細なアドバイスをすることが可能です。

 

また,現在の内部規程を変更すべき必要性を感じた時にも,変更内容に関するアドバイスもさることながら,規程変更時に法律上要求される手続(例えば,株式会社の定款変更には当該会社の株主総会の特別決議が必要となります。)について,アドバイスが可能です。

 

各種書式を整える

書式の点検・整備の典型例は契約書のチェックですが,それ以外にも弁護士に内容の確認を求めたり,場合によっては弁護士が書式の作成を依頼することも可能です。

 

例えば,売掛先に対する催告書・督促書や,未払いとなっている取引先に分割払いを約束させる際の合意書の作成が挙げられます。

 

社内セミナーで社員教育を図る

当事務所の弁護士が社内・団体内教育をお手伝いすることができます。

 

具体的には,当事務所の弁護士が皆さんのもとに訪問させて頂き,セミナー講師を担当させて頂くことが可能です。

 

実際に各弁護士が企業・団体にお邪魔して「コンプライアンス全般」「セクハラ,パワハラなどの各種ハラスメント対策」や「クレーム対応」などについて講師をさせて頂いております。最近では,消費税率アップに関するセミナー講師をさせて頂いた例もあります。

 

会社の合併・分割等のアドバイス

企業活動の中で,特定の会社と合併する,若しくは自社の特定の部門を別会社にする,特定の事業を他の会社に譲渡する等,いわゆるM&Aの必要に迫られる場合があります。これらの手続の際に法律で定められた手続を踏むことが不可欠であり,経営上の必要性のみから,法定の手続を無視して実行することはできません。

 

このような場面で,いかなる手続・スケジュールを組む必要があるか,弁護士に確認して頂くことができます。

 

また,この場面は経営者側だけでなく,従業員・当該会社の労働組合としても重要な場面となります。従業員の待遇等に影響を及ぼしかねない事柄となりますので弁護士に相談して頂くニーズがあろうかと思います。

 

遺言書作成とその後の遺言執行

つぎは個人の方向けの話です。

 

自分が亡くなった後,親族間での相続争いをしてほしくないと望まれるのであれば,遺言書を作成した上で,その遺言に沿った遺言執行を行う者を選任する方法があります。

 

この際,適切な遺言執行者がいなければ,当事務所の弁護士が遺言執行者に指定頂くことも可能です。

  

 

揉めない遺産分割

遺産分割で弁護士に依頼,というと,兄弟間で骨肉の争いをしているケースを想像しがちです。確かに,親族間で深刻な紛争になっているときというのは,典型的な弁護士の出番であり,その想像は半分正解かもしれません。

 

しかし,全く争いがないケースにおいて,弁護士を依頼するメリットが無いかといえば,必ずしもそうは言えません。

 

相続手続を一度体験された経験のある方はご存じと思いますが,様々な金融機関を回ったり,不動産の相続登記を行ったり,各手続ごとに相続人間を行き来して印鑑をもらったり…,とにかくやることが多く,慣れない人には極めて苦労を伴う手続となりかねません。

 

このようなとき,弁護士に依頼することで,適切な遺産分割協議書の作成のみならず,弁護士が相続人の代理人として各種手続の代行を行うことができます。

 

その他,番外編

これまで,外国籍の方が某国の銀行口座を開設するにあたり,必要な書類を作成するという依頼を受けたことがありました。また,入国管理局の手続を行ったこともあります。

 

皆さんに典型例として理解されている「紛争処理」以外にも,弁護士がお手伝いできることが多くあります。

 

何か気になることがありましたら,ひとまず当事務所に相談をしてみてください。

 

◆弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 朝妻 太郎◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2014年2月14日号(vol.144)>

【遺言・相続】非嫡出子の相続分に関する最高裁判決が出ました

 │ 上越事務所, 弁護士朝妻太郎, 遺言・相続

1 ついに出た違憲判決

 新聞・ニュースで大々的に取り上げられましたので,皆さんもご存じのこととは思いますが,今年9月,嫡出子と非嫡出子の法定相続分に差を設ける民法の規定(民法900条4号)が憲法に違反する(憲法14条の平等原則違反)とした最高裁判所の違憲判決が出ました。

 

2 そもそも「非嫡出子」とは

 まずは,嫡出子と非嫡出子について簡単にご説明します。

 嫡出子とは,「婚姻関係にある男女から生まれた子」のことを言います。

  そして,非嫡出子とは,「嫡出でない子」のことを言います。

 結婚していない男女間にできた子の場合,母親は懐胎・分娩の事実から母子関係が認められます。他方,父親は認知(父子関係を法律上発生させる手続)をすることで(若しくは子等の認知請求で),法律上父子関係が認められます。ただ,父親と母親とが結婚していませんので,その子どもは非嫡出子ということになります。

 ただ,このように説明しますと,男女間で子どもができた後に結婚するような場合には「婚姻関係にある男女から生まれていない」ので,子どもが非嫡出子であるように思えます。しかし,民法は,子の出生後父母が婚姻することで,子どもに嫡出子の身分を認めていますし,婚姻中父母が認知した場合にも嫡出子の身分を認めています(これを「準正」といいます。)。

 また,父と母とが後に離婚したとしても,嫡出子が非嫡出子に変わることはありません。

 ですので,非嫡出子というのは,父親と母親とが過去にも未来にも法律上の結婚をしない場合を考えていただければ良いかと思います。

 

3 民法の規定内容

 以上が嫡出子と非嫡出子の違いですが,民法は遺産相続の場面で両者に差異を設けていました。

 すなわち,民法900条4号は非嫡出子の相続分は,嫡出子の半分(2分の1)と定めています。

 単純な例を挙げると,例えばA(男性)が死亡して,その相続人がAの配偶者(妻),子2人(2人とも妻との間の子で嫡出子)の場合,法定相続分は,配偶者が1/2,子2人がそれぞれ1/4ずつとなります。

 他方,相続人が,配偶者(妻),子2人(子の内1人はAと配偶者との間の子(嫡出子),もう1人が別の女性との間で生まれた非嫡出子)の場合,法定相続分は,配偶者が1/2,嫡出子が2/6,非嫡出子が1/6となるのです。

 

4 今回の最高裁判決の内容

 最高裁判所は,これまでも非嫡出子の相続分に関して判断を下してきましたが,これまでは違憲とまでは判断しませんでした。

 しかし,今回の最高裁判所の判決は,このように嫡出子と非嫡出子の法定相続分に差異を設けた民法900条4号について,憲法14条1項に違反して違憲無効と判断したのです(裁判官14人の全員一致)。最高裁は,これまでの判例と結論を異にした理由として,日本の家族形態の変遷などに言及しながら,個人の尊重という観点から,法律婚という制度の下で父母が婚姻関係にないという子にとって自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由として子に不利益を及ぼすことが許されないこと,子を個人として尊重し,権利を保障すべきという考えが確立されていることなどを指摘しています。

 

5 民法規定の違憲無効がもたらすもの

 民法900条4号が違憲無効と判断されたことで,これまでこの規定に基づいて決着がついた個々の遺産分割の問題が全て白紙に戻るのではないか,と心配される方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし,全てが白紙に戻ってしまっては,せっかく決着がついた問題が蒸し返され,極めて不適当です。

 そこで,この点について最高裁は,民法900条4号の規定を前提としてされた「遺産分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係には影響を及ぼすものではない」と判断しています。すなわち,既に決着のついている個々の相続について蒸し返すことを認めず,将来発生する相続や現在未決着の相続についてのみ妥当するとしています。

  

◆弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 朝妻 太郎◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2013年9月17号(vol.134)>

【法務情報】平成25年度の相続税改正について

 │ 上越事務所, 弁護士朝妻太郎, 遺言・相続

1 ようやく改正法成立

 相続税が変わる,という話は皆さんも耳にされたことがあると思います。もっともこの改正は,一昨年の東日本大震災などの影響もあり,改正までずるずると先延ばしになっていました。

   

 しかし,今年の1月に入り政府が平成25年度税制改正大綱をまとめた後,3月29日の参議院可決によって,改正関連法が成立するに至りました。

 

2 そもそも相続税とは?

 相続税は,皆さんもご存じのとおり,相続によって引き継いだ財産を「評価」して,その評価額によって税額が決まる国税(国に支払う税金)です。後に説明しますが,一定額以上の相続財産に対してのみ課税されるため(基礎控除),ほとんどの方には関係の無い話でした。

    

 実際,平成22年中に発生した相続のうち,相続税の発生した相続は全体の約4パーセント程度と言われています(100人亡くなったうちの4人の相続にだけ相続税が発生した計算)。

  

 今回の相続税改正では,この範囲が広がるといわれているのです。

 

3 相続税が課税される財産

 そもそも相続税が課税される財産にはどのようなものがあるかを簡単に説明します。

  

 相続財産というと,不動産,有価証券,預貯金など,相続争いでよく問題となる財産が思い浮かびますが,これらは当然課税の対象となる財産です。

  

 他方,借金などのマイナスの遺産や葬儀費用などはプラスの財産から差し引くことができます。

  

 気をつけなければならないのは,遺産分割で分割方法を協議しなければならない上記の不動産や預貯金,負債だけでなく,遺産分割の時には問題にならないが相続税の課税対象になる財産が存在するということです。典型的なものが,生命保険金,死亡退職金といったものです(みなし相続財産といいます。)。

   

   例えば,受取人が妻になっている生命保険金があったとします。この生命保険金は受取人が妻と指定されていることから,妻の固有の財産と見ることになります。つまり,遺産分割で当該生命保険金を誰が引き継ぐのか話し合って決める必要はなく,当然に妻の財産となるのです。ですから,弁護士に遺産分割協議や調停を依頼した際に,受取人が決まっている生命保険金の分割という問題は基本的には生じません。しかし,相続税を計算する上では他の財産同様,考慮に入れなければならなりません。

   

 4 基礎控除の縮小

 ここからが今回の本題。基礎控除とは,簡単に言うと,相続税が課税されるか否かのボーダーラインを言います。今回の改正前は,「5000万円+1000万円×法定相続人の数」とされていました。この範囲内ならば相続税は発生しません。

   

 単純な事例で説明します。例えば,夫が亡くなり,妻1人,子2人が法定相続人,相続財産全体の評価額が7000万円だったとします。他方,基礎控除額は「5000万円×1000万円×3=8000万円」となります。そうすると,相続財産の評価額が8000万円までであれば相続税が発生しないことになりますので,このケースでは相続税の課税対象にならないことになるのです。

  

 これが相続税の基礎控除ですが,平成25年度改正により「5000万円+1000万円×法定相続人」から「3000万円+600万円×法定相続人」と変更されたのです。

   

 先ほどの事例ですと,「3000万円+600万円×3人=4800万円」となり,4800万円を超える部分には相続税が課税されることになりますから,7000万の相続では相続税課税の対象になるというわけです。

  

 このように,基礎控除の縮小により相続税が生じる相続の範囲が拡大するのです。

  

 

5 税率の増加やその他の改正

 改正内容は基礎控除の縮小だけではありません。

  

 法定相続人の取得金額2億円超の場合,現行の税率よりも高くなりましたし(例えば,法定相続人の取得金額が2億円超3億円以下の場合の税率は,40パーセントから45パーセントに上昇),最高税率も55パーセントになりました(現行は最高税率50パーセント)。

    

 他方,未成年者控除,障害者控除額が増えるなど,相続税額が減額の方向に作用する改正内容もありますが,総じて見ると,相続税額増額の方向で改正がなされていることがわかります。

 

6 この改正がいつから適用されるのか

 さいごに,この相続税の改正はいつから適用されるのかについてですが,平成27年1月1日以降の相続に適用されることになります(なお,相続発生が平成27年1月1日以降のものに適用されます。平成26年中に発生した相続は申告が平成27年になっても,改正前の規定が適用されることになります。)

  

   相続税のみならず贈与税等も併せて改正されていますが,ほとんどの改正が平成27年1月1日以降の贈与に適用される内容となっています(一部例外もあるので注意)。

  

 いずれにせよ,この改正により多くの人が相続税を心配しなければならなくなったことは間違いありません。この改正を契機に,税理士による相続税セミナーなどは急激に増加し,一つのブームとなっているとも聞きます。

  

   気になる方,興味のある方は,顧問税理士の先生などにおたずね頂くとよいかもしれません。

   

 

※財務省 税制に関するホームページはこちら  http://www.mof.go.jp/tax_policy/

 

◆弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 朝妻 太郎◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2013年4月15日号(vol.124)>

 

【法務情報】個人情報とコンプライアンス

 │ ビジネス, 上越事務所, 弁護士朝妻太郎

1 個人情報保護が声高に叫ばれる時代

 最近はやたら「個人情報にうるさい」という印象を抱く方も多いと思います。法律相談の中にも,「○×株式会社が私の個人情報を勝手に外部に漏らした,損害賠償請求をしたい。」というものや,企業の方から,「個人情報の流出だといって,会社に『誠意ある対応』を求めてくる顧客がいる。どのように対処したらよいのか。」などといった相談をお受けすることがあります。それだけ社会が「個人情報」というものに過敏になっているのだと思います。

 もっとも,実際に個人情報が流出した事件ではどのような法的責任を取らされているのでしょうか。

 

2 ヤフーBB顧客情報流出事件

 この事件は,マスコミも大きく取り扱いましたので,覚えている方もいらっしゃるかも知れません。

 平成14年から平成16年までの間に,表記のブロードバンドサービスを運営するS社による顧客情報管理に不備があったことから,インターネットカフェのパソコンを用いてのS社内部サーバーへの不正アクセスを許し,顧客データベースから顧客情報(住所,氏名,電話番号,メールアドレス等)が流出してしまった事件です。S社の社長がカメラに向かってお詫びをしていた光景を覚えている方がいらっしゃるかもしれませんが,実はこの個人情報流出事件は,民事訴訟にまで発展しています。

 S社は個人情報の流出の被害者か否かに関わらず,全会員に対して,金券(500円相当)を送付する等の対応を迫られたわけですが,これに満足しない一部の被害者が,S社に対して損害賠償を求めて訴訟を提起しました。

 大阪地方裁判所で提起された訴訟ですが,原審の大阪地方裁判所は,被害者顧客1人当たり6000円(内5000円が慰謝料,内1000円が弁護士費用)の損害賠償を命じ,控訴審である大阪高等裁判所はS社が提供した500円相当の金券分を控除し,被害者顧客1人当たり5500円の損害賠償を命じています(この高裁判決が確定しています。)。

 原審の大阪地方裁判所は,インターネット接続等の総合電気通信サービスの顧客情報として保有管理されていた被害者の氏名・住所等の個人情報が外部に漏えいしたことにつき,同サービスを提供していたS社に,外部からの不正アクセスを防止するための相当な措置を講ずべき注意義務を怠った過失があり,それによって原告らのプライバシーの権利が侵害された,と認定し,S社の不法行為責任を肯定しています。

 この事件に限らず,氏名,住所といった,いわゆる個人情報の流出事例では,概ね被害者1人当たり数千円から数万円程度の損害賠償が認められているケースが多いようです。

 

3 民事上の責任が認められる理由

 ヤフーの事案は,外部からの不正アクセスという第三者が介在して個人情報の流出が生じたという事案ではありますが,そのような不正アクセスを許してしまったというS社に過失(不注意)による責任を認定しています。

 ヤフーの事案は,ヤフーBBの直接の顧客が被害者でしたので,顧客からの直接の損害賠償請求という形を取られました。しかし,例えば,取引先から取得し管理していた取引先顧客の個人情報を流出させたとなると,個人情報流出の被害者のみならず,取引先からも損害賠償請求される場合があります。

 

4 数千円という慰謝料額をどう見るか

 もっとも,ヤフーBBの事案では,最終的に慰謝料として認容された金額が1人当たり5500円です。そのため,個人1人で訴訟を提起するとなると,費用対効果を考えれば,訴訟提起することが妥当とは言い難いでしょう。

 では,情報を流出させた企業側として,あまり気にしなくとも良いかといえばそうではありません。被害者1人あたりの金額としてはそれほど大きくないとしても,損害を賠償する企業にしてみれば相当な金額に上ることも十分想定されます。

 そして,これは大企業に限った話ではありません。確かに,ヤフーBBの事案では,最終的に情報流出した個人情報は400万人以上に上るとのことですから,ほとんどの中小企業には縁のない話のようにも思えます。しかし,皆さんの会社で100人,1000人レベルの個人情報の流出となると,十分想定しうるのではないでしょうか。100人,1000人のレベルでみても,損害賠償額のトータルは馬鹿にできない金額になることは御理解頂けると思います。

 また,訴訟になった場合の時間的・人的な負担も無視できません。

 

5 個人情報は大量流出事件だけで問題になるものではない。

 そして,個人情報に関連してトラブルとなるのは,大量流出の場面だけではありません。皆さんは,大なり小なり,他人の個人情報を扱っておられると思います。私どもも皆さんを含む,当事務所を使って下さる方々の個人情報を扱っております。何らかの事業を営む以上,他人の個人情報を扱うことは不可避です。

 そして,前述したとおり,個人情報の扱いについて極めて敏感な時代です。たった数件であったとしても,何らかの形で個人情報の流出が生じてしまえば,企業の信頼は地に落ちてしまいます。仮に訴訟騒ぎにならなくとも,企業経営の中でもっとも重要な「信頼」に大きな傷を付けることになってしまいます。

 大きなトラブルが生じる前に,今一度,御社の情報管理体制について考えて頂ければ幸いです。

 

◆弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 朝妻 太郎◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2012年10月1日号(vol.111)>

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