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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

民法(債権法)改正のポイント

 │ 企業・団体, 債務, 弁護士今井慶貴

 

民法(債権法)改正のポイント

 

 

1 改正法案が国会提出へ

 

平成27年2月24日,法制審議会で

「民法(債権関係)の改正に関する要綱」が採択され,法務大臣に答申されました。

これを受けて,3月中には通常国会に法案が提出される見通しです。

現行民法は,全5編…総則,物権,債権,親族,相続から成り立ちますが,

このうち「総則」「債権」の部分が1896年の民法制定以来の大改正となります。

 

「債権」というのは,ある人がある人に特定の行為を請求する権利のことで,

契約に基づく権利が典型です。

「総則」は民法全体の共通ルールを定めた部分です。

 

この度の改正は,民法制定以来の社会・経済の変化への対応を図り,

国民一般に分かりやすいものとする等の観点から見直しを行うものです。

 

法制審議会(債権関係)部会における審議の結果,

改正内容はそれほどドラスティックなものではなく,従来の判例や通説を明文化したり,

規定を合理化するなどの穏当なものが目立ちます。

とはいえ,実質的な規律内容が変更となる点も少なくありません。

 

改正点は非常に多岐にわたるほか,技術的な規定も多いので,

本稿では,特に実務上影響が大きく,皆様に理解していただきたいポイントに絞って解説します。

 

 

2 消滅時効

 

期間の経過により債権を行使できなくなるというのが「消滅時効」の制度です。

現行法では,原則的な時効期間は,権利を行使することが「できる時」から「10年間」です。

改正法では,債権者が権利を行使することができることを「知った時」から「5年間」,

権利を行使することが「できる時」から「10年間」となります。

 

併せて,商法上の5年間の短期消滅時効は削除となります。

また,職業別の短期消滅時効(3年・2年・1年)は,

区別の合理性がなくなったとして廃止され,上記の原則的時効期間となります。

 

例えば,商品販売代金は2年間,請負工事代金は3年間でしたが,原則として5年間となります。

債権・債務についての証票・データの保存期間を見直す必要があるでしょう。

 

 

3 法定利率

 

金銭債務の不履行の場合に,当事者間で合意がなければ,法定利率による遅延損害金が発生します。

現行法の法定利率は「年5%」です。

昨今の低金利から高すぎると言われており,改正法では「年3%」となり,

さらに3年ごとに1%刻みで見直される「変動制」となります。

併せて,年6%とされる商事法定利率も削除となります。

 

例えば,交通事故で死亡や後遺症を負った場合に

将来得られたであろう利益(逸失利益)について損害賠償がなされますが,

これについては法定利率による中間利息が控除される取扱いです。

 

改正法では,請求権発生時の法定利率による中間利息控除がされますので,

結果として交通事故の損害賠償額の増額,さらには損害保険料の増額が予想されています。

 

 

4 保証

 

他人の保証人になったばかりに,

借金を背負わされる「保証人の悲劇」が跡を絶たないことから,

改正法では「保証人保護」のための規定が設けられます。

 

まず,事業のための貸金等債務を主債務とする個人保証について,

経営者等(役員,過半数議決権ある者,

共同事業者・事業に従事する配偶者等)以外の保証については,

契約締結前1か月以内に作成した「公正証書」で保証意思を表示しなければ無効となるとされます。

「第三者保証」のハードルを上げるものです。

 

また,

保証人に対する情報提供義務(契約締結時,債務の履行状況,期限の利益喪失)

が明文化されます。

 

さらに,

個人がする根保証(保証債務の額が不確定なもの)は

種類を問わず一律に「極度額」(保証の上限額)を定めないと無効となります。

 

主として,金融実務への影響が大きいと考えられます。

根保証については,不動産賃貸借の保証人もそれに含まれるため,

今後は契約書で極度額を定めるように見直す必要が出てくるでしょう。

 

 

5 定型約款

 

日常の各種取引で使われている「約款」(細かい字で契約内容が書いてあるものです。)

については,これまで規定がありませんでした。

 

改正法では,「定型約款」として,

「定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって,

その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。)において,

契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。」と定義付けました。

そのため,事業者間の取引や雇用契約は対象外となり,

「事業者対消費者」の画一的取引に使われる約款のみが対象となります。

 

そのうえで,定型約款による契約の内容補充

(相手方の利益を一方的に害する条項は合意したものとみなされない)や,

内容の表示,変更についてのルールが明確にされました。

これに伴い,自社の定款も見直す必要があると思われます。

 

 

6 賃貸借

 

改正法では,「敷金」に関する規定が設けられました。

また,賃借人は通常の使用・収益によって生じた賃借物の損耗や

経年変化の原状回復義務を負わないことが明文化されました。

いずれも,これまでの判例を明文化したものです。

 

 

【弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 今井慶貴】

<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2015年3月2号(vol.169)>

※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

契約ルールの大改正について

 │ その他, ビジネス, 上越事務所, 債務, 弁護士渡辺伸樹

 

1 民法大改正にむけて

今年の8月,民法の改正に関する要綱仮案が法制審議会民法部会で大筋まとまりました。

調にいけば,来年の通常国会に改正案が提出されることになります。

まだ法律として成立していないので,若干フライング気味ではありますが,

制定から100年を経ての大改正ですので,いまのうちに概要を知っておいて損はありません。

今日は,要綱仮案の一部について説明します。

(注:掲載当時は平成26年です)

 

2 改正の目的

民法制定から時が経過し,条文の内容がだんだんと時代にそぐわなくなってきました。

また,以前から条文そのものがわかりづらいという批判もありました。

 

今回の大改正は,

法律の内容を社会・経済の変化に対応させること,

条文をわかりやすくすること,

の2点が目的とされています。

 

今日は,とりわけ皆さんの日常生活や事業に影響しそうな

①消滅時効,②法定利率,③個人保証,の3点に関する改正原案の内容について説明します。

 

3 消滅時効期間の一律化

現行法では,民事の場合は(請求できるときから)「10年」,

株式会社との取引など商事の場合は「5年」という消滅時効期間が設けられています。

 

しかし,民事と商事の区別がわかりづらく,

また民事と商事で一律に5年の差を設けるのが果たして妥当なのかという議論がありました。

 

これを受けて,要綱仮案では

民事商事の区別なく, 債権は債権者が

①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき

or

②債権者が権利を行使することができる時から10年間行使しないとき

時効により消滅するという形に改められています。

 

あわせて,建設工事などの請負代金について3年,

製造業・卸売業・小売業の売掛債権について2年,

飲食代について1年などというように定められていた職業別の短期消滅時効は廃止される方向です。

 

予定どおり改正がなされれば,

事業者にとってはこれまでよりも時効管理がやりやすくなるといえるでしょう。

 

4 法定利率の引き下げ,変動制の導入

現行法では,法定利率は民事5%,商事6%と決まっていますが,

要綱仮案ではこれを一律3%に引き下げ,

さらにその後3年ごとに利率を1%単位で見直すという内容が盛り込まれています。

 

法定利率の引き下げは,主なところでは,

死亡や後遺症を伴う事故(事件)が起こった場合の損害賠償の額に影響します。

 

死亡や後遺症を伴う事故にあった場合,逸失利益として,

事故にあわずに働いていれば将来得られたであろう収入から中間利息を差し引いた金額の賠償が受けられます。

 

つまり,法定利率が低くなれば,

それだけ差し引かれる中間利息(法定利率=中間利息であることが前提)が減り,

支払われる逸失利益の額が大きくなるのです。

 

平均賃金で計算した場合,27歳の男性(被扶養者2名)が亡くなった場合,

これまでにくらべて損害賠償金の額が約2,000万円増額するという試算結果も出されています。

 

ただ,損害賠償金が増えれば,

それだけ各種保険料が上がることが予想されるので,良いことばかりではないかもしれません。

 

5 個人保証の厳格化

特に中小企業では,事業資金等の債務について,

経営者の親族など会社の経営に無関係な第三者が個人保証をすることが多く,

これにより生活の破綻を招くケース,保証の効力を巡ってトラブルとなるケースが少なくありませんでした。

 

要綱仮案では,個人保証のルールを厳格化し,

事業資金等の債務を会社の経営に無関係な第三者が個人保証する場合,

保証人になろうとする者が,契約に先立ち,

公正証書で,公証人に対し保証債務を履行する意思を表示することを要件とすることでまとまりました。

 

6 さいごに

ここで説明したのは,要綱仮案のほんの一部であり,

このほかにも日常生活や事業に与える影響が大きい改正点があります。

 

改正法が制定されてからでは,とても理解しきれない分量ですので,

いまのうちから少しずつでも概要をかじっておくことをオススメします。

かくいう私もこれから勉強をはじめるところですが。。。

 

◆弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 渡辺 伸樹◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2014年10月15号(vol.160)>

※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

【法務情報】保証債務の消滅時効

 │ 債務, 弁護士塩谷陽子, 新発田事務所, 遺言・相続

1 消滅時効とは?

 債務者が債権者からお金を借りてから全く弁済せずに(債権者から裁判を起こされたりや支払督促を申し立てられたりすることもなく)一定の期間が経過すると,債務者は消滅時効を援用することができ,債務は消滅します。これが消滅時効の制度です。
  

 貸金債務の場合,消滅時効の期間は,銀行など会社からの借入の場合は5年,個人同士の借入の場合は10年とされています。

 

2 保証人がいる場合は?

 主たる債務者が債権者からお金を借り,保証人が主たる債務者の貸金債務を保証した場合,主たる債務について消滅時効が完成すれば,保証人も主たる債務の消滅時効を援用し,保証債務の支払いを免れることができます。
   

 保証人が,保証債務だけではなく,主たる債務についても消滅時効を援用することができるのは,保証人は,主たる債務の消滅時効によって直接利益を受ける立場にあるので,主たる債務の時効援用の「当事者」にあたるからです。
    

 そして,保証債務は,主たる債務に付随する性質を有しているため,主たる債務が時効によって消滅すれば,保証債務もこれに付随して消滅します。
   

 これにより,保証人は保証債務の支払いを免れることができるのです。

 

3 保証人が弁済してしまった場合は?

 では,消滅時効の完成前に,保証人が債権者の請求に応じて保証債務の一部を弁済していた場合,保証人は主たる債務の消滅時効を援用することができるのでしょうか。
 

 まず,原則として,主たる債務者が消滅時効完成前に主たる債務の一部を弁済した場合,主たる債務者が債務を承認したことになり,消滅時効は中断します。

  

 したがって,その弁済の時点から再び時効完成に必要な期間が経過しないと,消滅時効は完成しません。

 

 よって,一部弁済の時から再度5年や10年など消滅時効に必要な期間が経過しない限り,主たる債務者はもちろん,保証人も支払を免れることはできません。

 

 そうすると,保証人が消滅時効完成前に保証債務の一部を弁済した場合にも,消滅時効が中断しており,保証人が消滅時効を援用ですることはできないとも考えられます。

 

 しかし,保証人は,主たる債務の債務者ではなく,主たる債務を承認する権利を有しているわけではないので,保証人が保証債務の一部を弁済したとしても,主たる債務の消滅時効は中断しません。

 

 一方,先ほど述べたとおり,保証人は,主たる債務の時効援用に関しては「当事者」にあたるので,主たる債務の消滅時効を援用できます。

 

 よって,保証人は,消滅時効完成前に保証債務の一部を弁済したことがあったとしても,主たる債務の消滅時効を援用することができ,主たる債務が消滅するとそれに付随して保証債務も消滅するため,結局,保証人は,保証債務の一部を弁済したことがあったとしても,保証債務の支払を免れることができるのです。

   

4 保証人が時効援用できない場合がある?!

 ところが,最近出された最高裁の判例(最高裁平成25年9月15日第二小法廷判決)によって,保証人が主たる債務の消滅時効を援用することができない場合があることが明らかになりました。

  

 それは,「保証人が主たる債務者の債務を相続した後に,主たる債務を相続したことを知りながら保証債務の一部を弁済した場合」です。

 

 最高裁は,判決の中で,保証人が主たる債務者の債務を相続した後に,そのことを知りながら保証債務の弁済をした場合には,主たる債務者による債務の承認として,主たる債務の消滅時効を中断する効力を有するので,保証人は,主たる債務の消滅時効を援用して支払を免れることはできない,ということを述べています。

  

 例えば,父親Aが主たる債務者として銀行Gからお金を借りており,息子Bが保証人として父親の債務を保証していた場合に,Aが死亡してBがAの主たる債務を相続(相続人はBのみと仮定します。)した後に,BがAの主たる債務を相続したことを知りながら,保証人として保証債務の一部を弁済した場合には,Bは主たる債務の消滅時効を援用することはできない,ということになります。

  

 この場合,Aの債務を相続したBは,Aから相続した主債務者としての地位と,もともとあった保証人としての地位を合わせ持つことになるので,Bが保証人として保証債務の弁済をしたつもりであっても,その弁済には,Bが同時に負担しているAから相続した主たる債務を承認する意味も含むといえるからです。

 

 このように,保証人が主たる債務者の地位を相続した場合には,保証人が消滅時効を援用することができないことがあることが明らかになりましたので,参考にして下さい。

 

 ◆弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 塩谷 陽子◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2013年10月15号(vol.136)>

【法務情報】借用書をなくしてしまったら??

 │ 債務, 弁護士渡辺伸樹, 新潟事務所

~相談例~

「昨年,友人に100万円を貸しました。念のため借用書をとっておいたのですが,最近,自宅が火事になり,借用書を紛失してしまいました。私は友人からお金を返してもらえないのでしょうか。」

 

~はじめに~

 契約の際に,借用書を作成していたとても,思わぬきっかけでこれを紛失してしまうことはありえます。今回はこのような事態に対処するための方法を考えていきます。

 

~そもそも借用書等の効力って??~

 たまに相談者の方で,借用書をなくしてしまうとお金を返してもらう権利自体が消滅してしまうと思っている方がいらっしゃいますが,それは誤りです。

 借用書をなくしても権利自体はなくなりません。

 ただ,借用書がないと,相手が約束どおりに返済してくれない場合に,困ることになります。

 なぜなら,いざ裁判等でお金の返還を要求した場合に,お金を貸し借りした事実及びその内容を証明することが難しくなるからです。

 つまり,借用書はお金を貸し借りした事実及びその内容を証明する証拠として重要な意義をもっているのです。

 

~借用書を紛失したら??~

 では借用書を紛失したらどのように対処すれば良いのでしょうか。

 

1 もう1通ないか確認

 借用書はあらかじめ2通作って,当事者が各自1通ずつ保管しておく場合があります。このような場合,自分の契約書等をなくしても相手が持っている契約書等を利用して,貸し借りの内容等を証明することが可能です。

 相手が任意で開示してくれない場合には,裁判の中で裁判所を通じて開示を求める方法もあります。

 

2 借用書以外の証拠を探す

 借用書を2通作成していなかった場合には,借用書以外の方法で貸し借りの内容を証明することができないかを考えることが重要になります。

 領収書,振込・入金記録,契約の際に立ち会った人の証言,当時の日記・メモ,など関係のありそうなものはできるだけ多く集められるとよいでしょう。

 ただ,こうした借用書以外の証拠の場合,利息・延滞金の約定についてまでは証明できないことが多いので注意が必要です。

 

3 確認書を新たに作成する

 相手方が応じてくれればですが,契約内容を確認する書面を新たに作成することも有効です。

 その際には最低限,①当事者,②契約日時,③金額,④返還を約する文言,⑤返済期限(あれば)⑥金銭の授受が行われたことが分かる文言,⑦作成日時,⑧作成者の署名・押印は盛り込んでおきましょう。

 例:「①私はXさんから,②平成●年●月●日に,③金100万円を,④⑤平成■年■月■日までに一括で返済するとの約束で借り,⑥前記契約日にこれを受け取ったことを確認します。

 ⑦平成△年△月△日 ⑧借太郎 印」

 また,確認書を作成してもらうときは,後になって,無理矢理書かされた等と言われないよう,注意することが必要です。作成時に中立の第三者を立ち会わせるなどするとよいでしょう。 

 

4 会話の録音は??

 相手が「返済を待ってくれ」「必ず金は返す」等と言っている会話を録音した場合,この録音データは1つの証拠とはなり得ますが,証拠としての価値は必ずしも高いものではありません。

 そもそも,会話の中で相手が3で述べた①~⑥の各要素を盛り込んだ話をすることは期待できませんし(先ほどの例だと何らかの金銭の返還を約束した事実しか証明できない),無理矢理言わされた,編集で都合の良い部分だけを切り取ったなどといって争われる余地もあるからです。

 

5 勝手に作るのはもちろんNG

 いうまでもありませんが,借用書をなくしたからといって,勝手に作成するのは同じ内容であってもNGです。もし勝手に作成した場合,有印私文書偽造罪として刑事罰を受ける可能性があります。

 

~さいごに~

 このように,借用書を紛失した場合でも,とりうる手段はあるので諦める必要はありません。

 とはいえ,借用書を紛失することは大きなマイナスであることに変わりはありません。

 借用書を作ったからといって安心せず,万が一紛失した場合まで想定して,借用書を予め2通作って各自保管する,借用書以外の証拠をできるだけ残すなど,できる限りの措置をとっておくことが大切といえるでしょう。

 

◆弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 渡辺 伸樹◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2013年7月1日号(vol.129)>

 

【法律相談】保証は書面が大事(民法の改正)

 │ ビジネス, 債務, 弁護士古島実, 新潟事務所

質問

  

  私はA社の代表者です。売掛先のB社の経営が思わしくなく,売掛金が焦げ付きそうなので,B社の社長Cに会って,「B社が支払わない場合は社長C個人が支払ってほしい。」と頼みました。そして,社長Cから「覚書 売掛金は必ず私が支払います。 C署名・押印」という書類を作成してもらい,社長の署名の下にその場にいた役員のDとEにも署名・押印をしてもらいました。

  やはり,売掛金は支払われませんでした。私は,社長C,役員DとEに支払を求めましたが支払ってもらえませんでした。裁判に訴えて社長C,役員DとEに対して支払を求めることができるでしょうか。

 

回答

   

1 民法の改正

  A社はB社に対する売掛金の支払いをB社の社長CやB社の役員のDとEに保証してもらったのですね。任意に支払ってもらえない場合は裁判に訴えて支払ってもらうことになります。そして,裁判で確実に勝訴するためには法律で定める要件を証拠でそろえなければなりません。

 ところで,平成16年に,民法の保証に関する条文が改正され,民法446条2項に,「保証契約は,書面でしなければ,その効力を生じない。」という規定が新設されました。これは,保証を求められると人間関係から断り難かったり,気軽に応じてしまう割には保証人に大きな不利益が及ぶことから,保証人となる人の保護のために,口約束での保証契約の成立は認めず,保証のための書面を作らなければ保証契約の成立は認めないという趣旨です。

 そこで,質問にあった「覚書」でも,社長と役員がB社の売掛金を保証したとして,裁判所がA社の勝訴判決を出すかが問題となります。

    

2 「書面」とは

 民法は,保証は「書面」でしなければならないとしているだけで,どのような物が「書面」なのかは定めていません。「書面」と言っても素人が作るメモ書き程度の物から金融機関が作るような契約書まで,様々な物があると思います。

  

 現在,「書面」に関して最終的な基準を定める最高裁の裁判例はなく,下級審の判決は厳しく考えるものと,緩く考えるものがあります。

  

 平成20年に言い渡された大阪高裁の判決では,「保証意思が外部的に明らかになっていれば足りる。」としており,書面の要件を緩く考えています。

  

 しかし,その後に言い渡された平成24年の東京高裁の判決では「保証人となろうとする者が保証契約書の作成に主体的に関与した場合,その他その者が保証債務の内容を了知した上で,債権者に対して書面で明確に保証意思を表示した場合に限りその効力を生ずることとする。」とあります。

 平成24年の判決に則れば,文書の題名を「保証契約書」とすること,保証する債務について「A社のB社に対する平成〇年〇月〇日現在の売掛金〇〇〇円」というように特定して表示すること,「私は上記債務の支払いを保証します。」といった他人の債務を保証するということを表す文言を記載すること,「保証人〇〇〇署名・押印」と「保証」することを示す肩書きを付けて署名・押印してもらわないと確実とは言えないと思います。

  

 裁判所は証拠の書面に重きをおいた判断をしますので,次第に,「書面」を厳密に考えるようになり,背景事情は余り重要視せず,「書面」の字面で判断するようになってくると思います。

  

 平成16年の法改正,平成20年の大阪高裁の判決,平成24年の東京高裁の判決を一連の流れとみると裁判所が保証の成立を認める条件が厳しくなってきているのではないかと思われます。  

  

 そのため,保証を求める場合はしっかりした契約書を作らないと,否定される場合が出てくると思います。

   

3 改正は保証人として署名をする側も不利になることも

 前述のように,民法が「保証は書面でしなければならない。」としたのは,保証人となる人を保護するためです。

 しかし,「保証は書面でしなければならない。」の逆を言えば,しっかり作られた書面や契約書に署名や押印をした以上,責任を免れるのが難しくなるという見方もできます。

  

 金融の世界を描いたある漫画に,薄暗いスナックの中で,「〇〇先生が活動資金を返すために手形に署名をしました。支持者のみなさんは立会人として手形の裏に署名をしてください。」と言って,同行した者が手形の裏に署名したところ,その手形が割引に回され,手形が不渡りになり,署名した人が裏書人として責任を負った。という場面がありました(少し違っているかもしれません。)。手形には手形訴訟と言って,手形に記載された字面のみで判断をして背景事情を考慮しない特別な裁判があります。

 書面重視の行き着く先は,保証契約書が手形の様になってしまい,保証人として署名をした以上は署名をした背景事情が殆ど考慮されなくなるおそれもあります。

 

 そこで,安易に保証契約書に署名しないのが一番ですが,保証する意思がはっきりしないまま署名せざるを得ないときは「保証人」という肩書を消したり,代わりに「立会人」というような保証を否定する記載をすることが必要になってくると思います。

 

★当事務所ホームページ内の保証に関するページはこちらです★

 

◆弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 古島 実◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2012年12月26日号(vol.117&118)>

 

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