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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

【法律相談】地震による建物被害について

 │ 新潟事務所, 弁護士今井慶貴, 震災

Q1 震度6強の大地震によって隣家が倒壊してきたため、私の所有家屋が全壊してしまいました。隣家所有者に対して損害賠償請求はできますか?

 
Q2 震度6強の大地震によって隣家が傾き、徐々に私の所有家屋に向けて倒れてきています。しかし、隣家所有者は倒壊防止のための措置をとってくれません。倒壊防止措置をとらせることはできますか?また、このまま倒壊して私の所有家屋が損壊した場合には、隣家所有者に損害賠償請求ができますか?

 

 本年(※2007年)7月に新潟県中越沖地震が発生し、多大なる被害がでました。被害に遭われた皆様に心からお見舞い申し上げます。

 
 さて、弁護士会において被災者のための無料電話相談を実施しており、私も2回担当いたしましたが、Qのような質問が数件ありました。

 
 
 隣家の建物(ブロック等も含め)は、民法上の「工作物」にあたり、その設置、管理に瑕疵があったために他人に損害を与えた場合には賠償責任があります(民法717条)。

 
 しかし、工作物の損壊が「不可抗力」による場合には損害賠償責任を負いません。

 
 
 どの程度の地震なら不可抗力かというと、一般的には、昭和53年発生の宮城県沖地震に関する裁判例(仙台地判昭和56年5月8日、仙台地裁平成4年4月8日)が「震度5の地震に耐える安全性」を基準としたため、概ね「震度6以上」は不可抗力とされているようです。

 
 
 ただ、その後も阪神淡路、中越など震度6以上の大地震が続発していることを考えると、このレベルの地震発生の予見可能性はあるとも言え、建築関係法令や社会通念の変化により、不可抗力とする震度のレベルが上がる可能性はあります(現状は裁判例の集積が不十分)。

 
 この点、阪神大震災関連では耐震性に不足したホテルや賃貸住宅による圧死について所有者の責任を認めた事例があります(もっとも、震度の目安が示されたわけではない)が、中越地震の関係では寡聞にして知りません。

 
 そこで、Q1の回答としては、これまでの裁判例に照らすと損害賠償請求は難しいが、隣家がより低震度でも倒壊するような住宅であったことが立証できた場合(立証は困難)には損害賠償を問える余地がなくはないでしょう。

 
 Q2の回答としては、倒壊防止の措置が技術的に可能で社会通念上相当性がある場合であれば、予防措置の請求ができ、これを怠ったために家屋に損害を受けた場合には損害賠償を問える余地があるが、そうでない場合にはやはり不可抗力で責任を問えないと考えられます。  

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 今井 慶貴◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2007年9月号(vol.20)>

【法務情報】震災時の企業法務~Q&A~

 │ 新潟事務所, 弁護士橘里香, 震災

【第一 はじめに】

 2011年3月11日,東日本を未曾有の大地震が襲いました。皆様の中にも,親族・友人が被災されたという方がいらっしゃるのではないでしょうか。
 そこで,いざというときの知識として,または,今回被災された知人から相談を受けたときの知識として,震災に関連する法律や今回取られている特例措置等をQ&A方式でいくつかご紹介したいと思います。

 
【第二 震災時の企業法務Q&A】

Q1 地震の影響で事業を休業した場合にも,給与は支払わなければならないの?

 

 A  原則,不可抗力による休業であり,給与の支払義務はありません。
  (解説)労働基準法26条は,使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には,休業手当(60/100)の支払が必要と定めています。
  しかしながら,天災事変や停電による休業の場合には使用者の責に帰すべき事由にあたらず,支払義務はないと解されます。
  ただし,就業規則で異なる扱いの規定を定めていないか注意をして下さい。
 ※今回の震災に際しては,事業所が災害を受けたことにより休止したため休業して賃金を受けることができない場合に,実際に離職していなくても失業手当を受給できるようになっています。

 

Q2 震災の影響で,やむを得ず(交通機関に障害が生じ材料が入手できない等)一次的に事業を縮小せざる得なくなりましたが,従業員の雇用を守りたいと思います。何か使える制度はありますか?

 

 A 雇用調整助成金制度が利用できます。
  (解説)雇用調整助成金制度とは,経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者の雇用を維持するために、休業等を実施し、休業に係る手当等を労働者に支払った場合、それに相当する額の一部を助成する制度です。
 具体的には、「最近3か月の生産量、売上高等がその直前の3か月又は前年同期と比べ5%以上減少している雇用保険適用事業所の事業主」が対象となります。
 なお、中小企業緊急雇用安定助成金は、中小企業向けに雇用調整助成金の助成内容を拡充したもので、直近の決算等が赤字の場合、生産量等の減少が5%未満であっても対象となります。

 
Q3 従業員から,震災で大変なので給与を前払いをして欲しいと言われました。支払わないといけないのでしょうか?

  
 A 支払わなければなりません。
  (解説)労働基準法25条で,労働者が出産,疾病,災害その他厚生労働省で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては,支払期日前でも,既往の労働に対する賃金を支払わなければなりません。

 

 ※様々な特例が随時設けられています。お知り合い等で,お困りの方がおられたら,お気軽にご相談下さい。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 橘 里香◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2011年4月15日号(vol.76)>

 

【法務情報】やっぱり,地震保険って入った方がいいの?

 │ 弁護士中川正一, 燕三条事務所, 震災

はじめに
 3月11日に東日本大震災があり,被災地以外の地域にも大きな影響がでています。
 そこで,地震に関する意識が高まっているこの時期に,地震保険の有意性について検討してみたいと思います。

 
地震保険とは
  まず確認すべきことは,地震保険とは,居住用の建物と家財を対象とする地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没または流失による損害を補償する地震災害専用の保険だということです。
 火災保険では,地震を原因とする火災による損害や,地震により延焼・拡大した損害は補償されません。
 そのため,地震を原因とする被害についても補償を求めたいと考える場合は,火災保険とセットで地震保険の契約をする必要があります。地震保険は火災保険に付帯する方式での契約ですので,火災保険への加入が前提になります。

 
火災保険だけの場合
 では,地震に関して発生した火災による被害は地震保険に入っていなければ一切補償されないのでしょうか。
 阪神大震災の2日半後に発生した通電火災につき減額はされたものの一部保険金の支払いを命じた裁判例があります。これは地震と火災との因果関係を認めています。
 ですから本来であれば地震保険に入っていなければ補償されないのが自然です。
 ですが,居住者が地震後に容易に火災発生の危険を除去できるのにこれを怠ったことが火災発生の直接的な原因となっているとして居住者の不注意による失火であることを重視し,地震保険の説明が不十分であったことをも考慮して,居住者を救済したものです。
 ただし,このような救済は例外的ですから,予め地震保険契約をすることが望ましいでしょう。

 
地震保険でも救済されない場合
 では,地震保険契約を締結していれば,災害時にはすべて補償されるのでしょうか。
 まず,建物は5,000万円,家財は1,000万円を限度として,全損の場合は時価による補償になります。
 ですから,住宅ローンの残高がそのまま補償されるわけではありません。
 また保険金を支払ってもらえない場合もあります。
 例えば,「地震の発生日から10日以上経過した後に生じた損害」,「戦争・内乱による損害」,「核燃料物質もしくは核燃料物質によって汚染された物の放射性・爆発性その他の有害な特性またはこれらの特性による事故」,「地震等の際の紛失・盗難」などの場合には地震保険に加入していたとしても保険金を支払ってもらえません。
 さらに,自動車は家財に含まれません。先日の大震災では津波に流された自動車が大量にありましたが,これらは地震保険では救済されません。また車両保険に加入していても,地震の場合の免責条項がありますので,先の津波被害の例では救済は難しいと思われます。
 地震保険に入る際にはこのようなことも意識して加入するかどうかを検討しなければなりませんね。

 
生命保険と損害保険は別もの
 ところで,先日の大震災の際には,生命保険協会が「各生命保険会社では、被災されたお客様のご契約については、地震による免責条項等は適用せず、災害関係保険金・給付金の全額をお支払いすることを決定」した旨の発表をしました。
 しかし,これはあくまでも生命保険に関しての対応です。損害保険は対応は別なので,お間違いのないようにご注意下さい。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 中川 正一◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2011年3月31日号(vol.75)>

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