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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

【労災事故】労働災害への備えは労災保険だけで大丈夫?

 │ 燕三条事務所, 弁護士古島実, 労災事故

 職場で労災事故が発生し,労働者が怪我をして,入通院治療をしたり,後遺症が残ったりした場合,公的な労災保険から労働者に対して給付金が支給されます。それだけで,使用者は責任を免れるでしょうか?

  

 労働契約法第5条は「使用者は労働契約に伴い,労働者がその生命,身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をするものとする」と規定し,使用者に安全配慮義務を課しています。使用者は,職場に存在する生命や身体等に対する危険を予見して,危険の現実化を防止するために人的物的な処置を講ずる義務を負います。

  

 そして,使用者が同義務に違反して,労災事故が起きた場合は,使用者は,労働者に対して,治療費,入通院や後遺症に対する慰謝料,後遺症のために十分に働けなくなったことに対する損害賠償責任を負い,その額が,労災保険の給付金を超える場合は,その差額について,支払わなければなりません。死亡や重い後遺障害が残った時は,経営を揺るがす金額にもなりかねません。また,使用者が支払えないと,労災事故に遭った従業員やその家族も生活に困窮してしまいます。そこで,災害防止が一番大切ですが,万一に備えて事前に労災保険ばかりでなく労災事故に備えた損害賠償保険に加入する必要があると思います。また,それが,従業員やその家族の生活の立て直しにつながります。

 

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実
(当事務所「事故賠償」チーム責任者)◆

<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2013年8月1日号(vol.131)>

 

【交通事故】事故に遭った時に加害者に請求できる項目

 │ 燕三条事務所, 弁護士古島実, 交通事故

 交通事故に限らず,事故に遭って被害を受けた時は,被害者は加害者に対して損害の賠償請求ができます。そして,被害者が加害者に対して請求できる項目を大きく分けると,物的損害(物損)と人的損害(人損)があります。

  

 物的損害は事故によって物が壊れた場合に請求できる項目です。交通事故であれば,自動車の修理代,自動車が店に突っ込んだ場合の改修費,営業損害などです。

 

 人的損害は事故によって人身が傷害された場合に請求できる項目です。人的損害は大きく分けると三つに分かれます。治療中に関するものと,治療しても治らなかった障害すなわち後遺障害に関するもの,死亡に関するものです。

 

 治療に関するものとして,治療費,治療のために仕事を休んだことによる休業損害,入通院の精神的苦痛に対する慰謝料などがあります。
 

 後遺障害に関するものとして,後遺障害の精神的苦痛に対する後遺障害慰謝料,事故前よりも十分に働けなくなったことによる逸失利益に対する賠償などがあります。

 

 死亡に関するものとしては,精神的苦痛に対する償いである死亡慰謝料,死亡したことによって失った収入に対する賠償である死亡逸失利益などがあります。

 
 ★当事務所ホームページの交通事故に関するページはこちら★

 

 


◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実
(当事務所「事故賠償」チーム責任者)◆

<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2013年5月15日号(vol.126)>

【労災事故】労災事故で多額な賠償金を支払わなければならない場合

 │ 新潟事務所, 弁護士古島実, 労災事故

  当社の建設現場において,パワーショベルのバケットで松杭を地中に打設する作業の準備のために,パワーショベルのバケットにワイヤーをかけて松杭にワイヤーをからげ,トラックから打設場所まで運ばせたところ,旋回速度が速く,ワイヤーから松杭が外れ松杭の打設場所に待っていた作業員に激突しました。作業員は6か月間入院し,6か月間通院治療しましたが,打ち所が悪く下半身不随の後遺障害が残ってしまいました。もちろん労災保険に入っています。労災保険に入っているので大丈夫でしょうか。

 

1 使用者の安全配慮義務

 使用者は従業員に対して公的な労災保険制度に基づく責任のほかに労働契約に基づく安全配慮義務を負います。労働契約法第5条(労働者の安全への配慮)は「使用者は,労働契約に伴い,労働者がその生命,身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう,必要な配慮をするものとする。」としています。そして,労働安全衛生法は労働災害の防止のための危害防止基準を設け,労働安全衛生規則に細かな具体的な規定を置いています。

 労働安全衛生規則は建設機械の使用についても細かに規定し,164条にパワーショベルの使用条件を細かく定めています。これに違反した作業を行わせ,作業中に従業員にけがをさせてしまった場合は,安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任が認められる可能性が大きいです。

 

2 パワーショベルについての規定

 労働安全衛生規則第164条のパワーショベルについての規定を見てみましょう。

   ——————————————————————————————————————————————————————–

  1項 事業者は,車両系建設機械を,パワー・ショベルによる荷のつり上げ・・・・等当該車両系建設機械の主たる用途以外の用途に使用してはならない。

  2項 前項の規定は,次のいずれかに該当する場合には適用しない。

  1号  荷のつり上げの作業を行う場合であって,次のいずれにも該当するとき。

   イ 作業の性質上やむを得ないとき又は安全な作業の遂行上必要なとき。

   ロ アーム,バケット等の作業装置に次のいずれにも該当するフック,シャックル等の金具その他のつり上げ用の器具を取り付けて使用するとき。

  (1) 負荷させる荷重に応じた十分な強度を有するものであること。

  (2) 外れ止め装置が使用されていること等により当該器具からつり上げた荷が落下するおそれのないものであること。

  (3) 作業装置から外れるおそれのないものであること。

  2号 荷のつり上げの作業以外の作業を行う場合であって,労働者に危険を及ぼすおそれのないとき。

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3 今回の事故についてのあてはめ

   パワーショベルで荷のつり上げは原則として禁止されています。また,パワーショベルのバケットでの松杭の打設も主たる用途以外の用途に使用したといえますので,原則として労働安全衛生規則164条1項違反となります。

 荷のつり上げについては,2項1号の定める条件を満たせば違反にはなりませんが,本件では,トラックから作業員のいる場所への松杭の移動であり,イに該当しないでしょうし,単にワイヤーを松杭にからげ吊るしただけではロにも該当しないでしょう。

 その結果,あなたの会社は安全配慮義務違反を理由として,作業員に生じた損害を賠償しなければならない可能性があります。

 

4 人身事故は多額の賠償金

 人身事故は被害者の一生に障害を与えることから結果が重い場合は極めて多額の賠償金になります。 下半身不随の場合は「両下肢の用を廃したもの」として後遺障害等級1級相当の後遺障害です。仮に,作業員が50歳で年収が500万円であったとすると,損害賠償金額を,概算で,裁判所の基準で計算すると次のようになります。 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

   (1)治療費 たとえば200万円(実費)

   (2)休業損害 500万円(1年間休業)

   (3)入通院慰謝料 282万円(入院6か月通院6か月)

   (4)後遺障害慰謝料 2800万円(後遺障害1級)

   (5)後遺障害逸失利益 

    500万円×100%(労働能力喪失率)×11.2741(67歳まで17年間の将来分の現価への引き直し)=5637万円

    合計9419万円となり,そのほか,付添費,雑費,介護必要な場合は介護費用が請求され一括払いが求められます。

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5 事故防止のほか,事業継続と被害者のための保険の必要

 労災保険で支払われるのは治療費と休業損害の一部です。障害年金も支給されますが,既払い金のみが損害賠償金から控除されます。そのため,あなたの会社が損害賠償金のほとんどを支払う必要が出てきます。もし,労災保険以外の保険に加入していなければ,会社の資金繰りに重大な影響を与えますし,十分に支払うことができなければ後遺障害を負った従業員やその家族も生活の再建ができません。

 事業者としては労働安全衛生法や安全衛生規則を守って,労災事故を起こさないこと,万一の発生に備えて労災保険に加入するばかりでなく,上乗せの保険に加入する必要があります。これは,交通法規に従って自動車を運転して事故を起こさないこと,万一事故が起きることに備えて,自賠責保険のほかに,任意保険に加入して,被害者の生活の再建を図ることと同じことです。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2013年8月31号(vol.133)>

 

【交通事故】治療の打ち切りを求められた

 │ 新潟事務所, 弁護士古島実, 交通事故

★当事務所ホームページの交通事故に関するページはこちら★

 

1 交通事故で、ムチウチになって、しばらく近所の医院に通って治療していました。事故直後よりもだいぶ良くなってきましたが、最近は何度も医院に通ってもあまり、よくなりません。首や腰を動かすと未だに痛く、手にしびれが残っています。事故から5か月くらい医院に通ったところで、加害者の保険会社から、「症状固定にして、治療を打ち切りにしてください。」と言われました。事故直後、加害者の保険会社は治療費を支払うので安心して治療してくださいといいました。初めの約束とは違っていると思います。どうしたらよいでしょうか。

  

2 交通事故の怪我は残念ながら治療しても完全に治らず痛みや不自由が残り、後遺障害が残る場合があります。どんなに治療をしても、これ以上よくならず、症状が一進一退になる時期があり、その時期を症状固定といいます。

  

法律上、加害者は被害者の治療費を支払う義務がありますが、症状固定までの治療費しか負担しなくてもよいのです。それ以後は、後遺障害が認められた場合に、加害者は、後遺障害についての慰謝料や十分に働けなくなったことに対する賠償(逸失利益の賠償)をすることになります。症状固定をした以後の治療は、被害者が自分の健康保険を使って一部を自己負担して受けることになります。

  

以上のことからすれば、加害者の保険会社が言っていることは法律上やむを得ないことで、初めの約束と違っているわけではありません。もう、治療をしないでくださいと言っているわけではありません。

  

対応としては次のような選択になると思います。

 

(1)治療をがんばって続ける

 

 主治医を説得して、まだ、症状固定には至っておらず、治療が必要であるという診断書をもらって、加害者の保険会社に示して、加害者の保険で治療を続ける。この場合、主治医が症状固定だという判断をすればどうにもなりません。

 

(2)後遺障害認定手続きへと進む

 

 主治医と相談して、症状固定になっているかどうかを確認し、症状固定になっているという意見であれば、加害者の保険会社の提案のとおりに、治療を止めるか、自己負担で治療を受け、後遺障害の認定を受け、後遺障害についての損害賠償を受ける。ただし、後遺障害が認められない場合もあります。

 

3 どちらが有利かはケースバイケースで、(1)で頑張って、治療費を自己負担せず治療を続け、通院慰謝料や休業損害を多めにもらうこともできなくもありません。頑張って治療を続けたら、症状が治って、後遺障害が認められなくなることもあり得ます。粘らずに、後遺障害認定を受けた場合のほうが全体として多額の賠償金を取得できる場合もありますが、後遺障害と認定されない場合もあります。

 

もし、弁護士が事故直後からかかわれば、将来の見通しを立てながら対策を検討することができます。保険会社との対立や交渉の面倒、どうしてよいかわからない不安からも解放されます。

  

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実
(当事務所「事故賠償」チーム責任者)◆

     

【労災事故】忘れられていた労災による後遺障害

 │ 新潟事務所, 労働, 弁護士古島実, 労災事故

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法律相談に来られた方が、雑談で、「会社の仕事をしているに最中に重いものが落ちてきて、腰椎(背骨の腰の部分)を圧迫骨折した。」と話しました。今は治療が済んで特に不自由はなく、痛みもないとのことでした。そこで、労災保険の給付金の申請について聞いたところ、会社も協力的で、治療費や入院中の給与の一部も労災保険から出て助かったそうです。

   

 私は、後遺障害の認定を受けたかどうかが気になり、後遺障害についての労災保険の給付金の申請をしたかと聞いたところ、「特に後遺症もないし・・」と本人もよくわかっていない様子でした。そこで、病院に行ってもらって腰椎のレントゲンの写真を確認してもらったところ、腰椎の椎体(背骨を形作っているブロックのような骨)の一つがつぶれている様子が写されていたそうです。本人に、「それは後遺障害だから後遺障害についての労災の給付金を請求するように」とアドバイスしたところ、後遺障害11級が認定され労災保険の給付金がもらえたと喜んでいました。

  

 圧迫骨折は椎体がつぶれていても時間が経つと痛みや不自由がなく治ってしまうこともあるらしく、その場合は、痛みや不自由ではなく、腰椎の椎体の変形それ自体が後遺障害になり、労災保険の後遺障害の認定基準に11級として「せき柱に変形を残すもの」との規定があることから11級に認定されたのです。

     

 会社の従業員として作業をしているときにその作業のために怪我をしたときは、労災保険からの給付金があります。労災保険は会社に従業員の安全に対する不注意(安全配慮義務違反)があるかないか関係なく支給されます。

   

 それでは、会社に従業員の安全に対する不注意(安全配慮義務違反)があった場合はどうでしょうか。交通事故と同じく、会社に対して、怪我によって被った損害を支払うように請求(損害賠償請求)できます。

   

 労災保険は国の政策で労働者を保護するために会社に過失が無くても支払われる制度であるため、慰謝料などは含まれず、本来の法律上の損害賠償額よりも低い金額しか支払われません。そこで、会社に安全配慮義務違反がある場合は労災保険で得られた金額と法律上認められる損害賠償額との差額を会社に対して請求することになります。この損害賠償額は交通事故における損害賠償額と同じです。

  

 会社に対して請求する場合、会社に勤め続けている場合は勤め先と交渉や訴訟をするため会社と従業員の関係に配慮する必要があります。会社が損害賠償保険に入っていて、保険を使って従業員を助けてあげるという姿勢があると解決はスムーズに行くと思います。

  

●公益財団法人労災保険情報センターのホームページはこちら

    

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◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実
(当事務所「事故賠償」チーム責任者)◆

     

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