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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

職場のハラスメント対策は万全ですか?

 │ その他, ビジネス, 上越事務所, 企業・団体, 労働, 弁護士渡辺伸樹, 新潟事務所, 新発田事務所, 東京事務所, 燕三条事務所, 長岡事務所

 

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近年メディアからも注目が集まっている「ハラスメント」について,

その種類と企業が講じるべき対策のポイントなどをお伝えいたします。

 

1. ハラスメント対策の重要性

職場で問題となるハラスメントとしては,代表的なセクハラ・パワハラのほか,ジェンダーハラスメント,マタニティハラスメント,アルコールハラスメント,エイジハラスメントなどがあり,昨今,様々な分類がなされています。

これらのハラスメントはいずれも従業員の士気の低下,離職などの弊害をもたらします。

それゆえ,事業主としては自らがハラスメントの加害者とならないよう注意するだけでは足りず,組織全体としてハラスメントの問題が生じないよう目を光らせなければなりません。

過去には,ハラスメントに対して十分な措置を講じなかったために,会社が損害賠償責任を問われた裁判例もあります。

訴訟にまで発展しないケースであっても,従業員が定着しない原因が実は職場のハラスメントにあったということも少なくありません。

 

2. ハラスメント対策のポイント

では,ハラスメント対策は実際にどのようにして行えば良いのでしょうか。

この点については,セクハラに関する厚生労働大臣の指針(平成18年厚生労働省告示第615号)が参考になります。

この指針は,職場のセクハラ対策のために事業者が講ずべき措置を明らかにしているものですが,同指針で示されている内容は,セクハラ以外のハラスメントについても応用が可能です。

以下では,同指針を参考にハラスメント対策のポイントを解説します。

 

 ⑴ ハラスメント禁止規定の整備と従業員への周知・啓発

ハラスメントを予防するためには,まずは就業規則などの従業員が守るべき規律を定めた文書において,ハラスメントの禁止規定を設け,これを従業員に対し周知するとともに,万が一ハラスメント行為を行った場合には,懲戒事由となりうることを明示することが重要です。

あわせて,社内研修を開催するなどして,どのような行為がハラスメントにあたるのかについて,役員・従業員に対し周知・啓発する必要があります。

 

⑵ 相談体制の整備

また,万が一ハラスメントが生じた場合に備え,事業主は,相談窓口を設け,その旨を従業員に周知し,ハラスメント被害を安心して相談できる体制を整えておかなければいけません。

男女それぞれの相談に適切に応じられるよう相談担当者の選定に気を配り,相談にあたっての留意事項をマニュアル化しておくなどして,相談に適切に対応できる仕組みを作ることが必要です。

場合によっては外部の機関に相談対応を委託することも考えられるでしょう。

相談者および行為者のプライバシーを保護すること,窓口に相談したことを理由に被害者に対し不利益な取り扱いを行ってはならないことは当然ですが,これらの事項をあらかじめ従業員に周知することで,相談に対する不安を取り除いておくことも同様に重要です。

 

⑶ 事実調査

相談の結果,ハラスメントが疑われるケースでは,行為者・被害者双方から(必要に応じて第三者から)事情聴取を行い,事実調査を行います。

被害の継続,拡大を防ぐため,事実調査には速やかに着手することが重要です。

迅速な事実調査を実施するためには,担当部署を社内で明確にし,相談から事実調査までのフローを作成しておくなどの工夫が必要になるでしょう。

 

⑷ 行為者・被害者に対する措置

事実調査の結果,ハラスメントの事実が確認できた場合には,行為者・被害者それぞれに対し適切な措置をとる必要があります。

行為者に対しては,就業規則等に基づき,懲戒処分などの措置を課すことを検討します。

懲戒処分を課す際は,処分内容と問題となるハラスメント行為との間でバランスがとれているかについて注意しなければなりません。

被害者に対しては,ハラスメントをきっかけに労働条件の不利益を受けていた事実があれば,その不利益を回復する措置を講ずる必要があります。

さらに,行為者・被害者がその後も同じ部署で勤務するような場合には,謝罪の機会を設ける等,必要に応じて被害者と行為者の関係改善に向けた措置をとります。

ケースによっては,逆に配置転換をして被害者と行為者をなるべく引き離した方が好ましい場合もあり,この辺りは事業主の臨機応変な対応が求められます。

 

⑸ 再発防止措置

ハラスメント問題が生じた場合,事業主としては,ハラスメントについての周知・啓発が足りなかったと真摯に受けとめ,再発防止に向けて,改めて役員・従業員に対する周知・啓発を行うことが大切です。

 

 

3. おわりに

職場のハラスメント対策は面倒,大変と感じる方もいらっしゃるかも知れません。

しかし,長い目で見ればハラスメント対策は職場環境の向上,ひいては会社全体の業績UPにもつながっていくものであることは間違いありません。

この機会に一度,職場のハラスメント対策を見つめなおしてみてはいかがでしょうか。

 

◆弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 渡辺 伸樹

<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2016年7月1日号(vol.198)>

※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

広告・宣伝メールはどこまでOK?

 │ ビジネス, 上越事務所, 企業・団体, 弁護士渡辺伸樹

 

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1 はじめに

 

メールやインターネットが発達して,広告・宣伝の方法は大きく広がりました。

普段メールマガジンなどを購読している方,

あるいはご自身で発行している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は,メールによる広告・宣伝のルールについて学びます。

 

2 規制の対象となるメール

 

営業について広告・宣伝の手段として送信されるメールは,

特定電子メール法により規制の対象となります。

ダイレクトメールなど,電子メールの内容そのものが

サービス・商品等を宣伝するものである場合にはもちろんですが,

そうでなくてもサービス・商品等を宣伝するウェブサイトへ誘導することが

その送信の目的に含まれるメールは広く規制の対象になります。

 

つまり,本文が時事ネタやコラムのメールマガジンであっても,

規制の対象となる場合があるわけです。

なお,通信販売などの広告・宣伝メールについては

あわせて特定商取引法によっても規制がなされます。

 

3 原則として事前の同意が必要

 

広告・宣伝メールを送ることができるのはあらかじめ同意した相手に限られます。

パソコンやスマートフォン用のウェブサイトをみると,

チェックボックスを設けて配信の同意を得ているところが多いように思います。

 

「同意する」のチェックボックスが

あらかじめチェックされた状態になっているウェブサイトをよく見かけますが,

政府のガイドラインでは,このようなサイトでは,

容易に利用者がチェックを外すことができるような工夫をすることが推奨されています。

 

あらかじめ同意を得ず,不特定多数の人にメールを送信し,

受信拒否の手続をとった人に対してだけ配信を停止するという方法は,

かつては認められていましたが,現在は認められていません。

迷惑メールが社会問題となったことで数年前にルールの改正がありました。

 

また,同意を得た場合には,

送信者には同意を得たことを証明する記録を一定期間保管しておく義務があります。

 

 

4 事前の同意が不要な場合

 

例外として,以下の相手に対しては,

あらかじめ同意なく広告・宣伝メールを送ることが許されています。

 

① 取引関係にある人(※通信販売等の広告メールには請求・承諾が必要)

② 名刺などでメールアドレスを通知した人(※同上)

③ HP上でメールアドレスを公開している場合など,

  メールアドレスを公表している団体または営業を営む個人

※アドレスの公開とあわせて,

 広告・宣伝メールを送信しないよう表示されているような場合は除きます。

  

5 受信拒否の通知があった場合

 

あらかじめ同意を得られた場合であっても,

受信者が受信拒否の通知をした場合には,原則として以後のメール送信は禁止されます。

 

受信拒否の通知は,

「受信を拒否するメールアドレス」と「受信を拒否する旨」を伝えれば足り,

それ以外の個人情報を伝える必要はありません。

 

6 表示義務

 

受信者が受信拒否の通知を簡単にできるよう,送信者は広告宣伝メールに毎回,

㋐受信拒否ができること

㋑受信拒否の通知先(メールアドレス・URL)

を表示することを義務づけられています。

 

これらの表示は,受信者が容易に認識できる場所に表示する必要があり,

㋐は㋑の直前または直後に表示しなければならないなど,

表示場所も細かく規制されています。

 

あわせて,

㋒送信者等の氏名または名称

㋓送信者等の住所

㋔苦情・問い合わせ先(電話番号,メールアドレス,URL)

についても表示が義務づけられています。

 

7 行政処分と刑事罰

 

これらのルールに違反して,相手の同意なくメールを配信したり,

表示すべき表示を怠ったりした場合には,行政処分(措置命令)がなされることがあります。

 

さらにこの命令にしたがわなかった場合には,

行為者に懲役や罰金などの刑事罰が課せられるほか,

会社に対しても罰金が科せられることもありますので注意が必要です。

 

8 さいごに

 

無料で手軽な広告・宣伝ツールは増えてきましたが,

ルールを守って戦略的に利用することが重要といえるでしょう。

 

◆弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 渡辺 伸樹◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2014年12月15号(vol.164)>

※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

契約ルールの大改正について

 │ その他, ビジネス, 上越事務所, 債務, 弁護士渡辺伸樹

 

1 民法大改正にむけて

今年の8月,民法の改正に関する要綱仮案が法制審議会民法部会で大筋まとまりました。

調にいけば,来年の通常国会に改正案が提出されることになります。

まだ法律として成立していないので,若干フライング気味ではありますが,

制定から100年を経ての大改正ですので,いまのうちに概要を知っておいて損はありません。

今日は,要綱仮案の一部について説明します。

(注:掲載当時は平成26年です)

 

2 改正の目的

民法制定から時が経過し,条文の内容がだんだんと時代にそぐわなくなってきました。

また,以前から条文そのものがわかりづらいという批判もありました。

 

今回の大改正は,

法律の内容を社会・経済の変化に対応させること,

条文をわかりやすくすること,

の2点が目的とされています。

 

今日は,とりわけ皆さんの日常生活や事業に影響しそうな

①消滅時効,②法定利率,③個人保証,の3点に関する改正原案の内容について説明します。

 

3 消滅時効期間の一律化

現行法では,民事の場合は(請求できるときから)「10年」,

株式会社との取引など商事の場合は「5年」という消滅時効期間が設けられています。

 

しかし,民事と商事の区別がわかりづらく,

また民事と商事で一律に5年の差を設けるのが果たして妥当なのかという議論がありました。

 

これを受けて,要綱仮案では

民事商事の区別なく, 債権は債権者が

①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき

or

②債権者が権利を行使することができる時から10年間行使しないとき

時効により消滅するという形に改められています。

 

あわせて,建設工事などの請負代金について3年,

製造業・卸売業・小売業の売掛債権について2年,

飲食代について1年などというように定められていた職業別の短期消滅時効は廃止される方向です。

 

予定どおり改正がなされれば,

事業者にとってはこれまでよりも時効管理がやりやすくなるといえるでしょう。

 

4 法定利率の引き下げ,変動制の導入

現行法では,法定利率は民事5%,商事6%と決まっていますが,

要綱仮案ではこれを一律3%に引き下げ,

さらにその後3年ごとに利率を1%単位で見直すという内容が盛り込まれています。

 

法定利率の引き下げは,主なところでは,

死亡や後遺症を伴う事故(事件)が起こった場合の損害賠償の額に影響します。

 

死亡や後遺症を伴う事故にあった場合,逸失利益として,

事故にあわずに働いていれば将来得られたであろう収入から中間利息を差し引いた金額の賠償が受けられます。

 

つまり,法定利率が低くなれば,

それだけ差し引かれる中間利息(法定利率=中間利息であることが前提)が減り,

支払われる逸失利益の額が大きくなるのです。

 

平均賃金で計算した場合,27歳の男性(被扶養者2名)が亡くなった場合,

これまでにくらべて損害賠償金の額が約2,000万円増額するという試算結果も出されています。

 

ただ,損害賠償金が増えれば,

それだけ各種保険料が上がることが予想されるので,良いことばかりではないかもしれません。

 

5 個人保証の厳格化

特に中小企業では,事業資金等の債務について,

経営者の親族など会社の経営に無関係な第三者が個人保証をすることが多く,

これにより生活の破綻を招くケース,保証の効力を巡ってトラブルとなるケースが少なくありませんでした。

 

要綱仮案では,個人保証のルールを厳格化し,

事業資金等の債務を会社の経営に無関係な第三者が個人保証する場合,

保証人になろうとする者が,契約に先立ち,

公正証書で,公証人に対し保証債務を履行する意思を表示することを要件とすることでまとまりました。

 

6 さいごに

ここで説明したのは,要綱仮案のほんの一部であり,

このほかにも日常生活や事業に与える影響が大きい改正点があります。

 

改正法が制定されてからでは,とても理解しきれない分量ですので,

いまのうちから少しずつでも概要をかじっておくことをオススメします。

かくいう私もこれから勉強をはじめるところですが。。。

 

◆弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 渡辺 伸樹◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2014年10月15号(vol.160)>

※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

【法務情報】消費税増税に伴う新たな法規制

 │ ビジネス, 弁護士渡辺伸樹, 新潟事務所, 消費者

1 消費税転嫁対策特別措置法とは 

 

 消費税率が平成26年4月1日から8%,平成27年10月1日から10%に,段階的に引き上げられます。

 

 消費税は事業者が納付する税金ですが,価格に上乗せされて最終的には消費者が負担する仕組みになっています(これを消費税の転嫁といいます)。つまり,消費税の転嫁が円滑に行われないと,事業者が不利益を被ることになります。

 

 消費税増税にあたっては,このような事態を防止し,消費税の円滑な転嫁を促進するために,いわゆる消費税転嫁対策特別措置法が制定されました。

 

 今回はこの消費税転嫁対策特別措置法に焦点をあてて解説いたします。

 

2 2つの新たな規制

 

 この法律では,消費税の円滑な転嫁を促進するため,(1)特定事業者による転嫁拒否等の行為の禁止,(2)消費税の転嫁を阻害する表示の禁止,という2つの規制が設けられています。 

 

3 特定事業者による転嫁拒否等の行為の禁止

 

 1つめの規制として,「特定事業者」が,商品やサービスを供給する側の事業者(特定供給事業者)に対して消費税の転嫁を拒否する等の行為をすることが禁止されます。

 

 「特定事業者」には,大規模な小売業者(前年度の売上高が100億円以上の事業者,東京都特別区・政令指定都市で店舗面積3000㎡以上の店舗を持つ事業者等)だけでなく,中小規模の小売業者であっても,資本金等の額が3億円以下の事業者や個人事業者から継続して商品(サービス)の供給を受ける事業者であれば該当しますので注意が必要です。

 

  禁止される転嫁拒否等の行為としては以下の4類型があります。

 

①減額または買いたたき

 

 例えば,平成26年4月1日の消費税率引上げに際して,消費税を含まない価格が100円の商品について,消費税率引上げ後の対価を108円として契約したにもかかわらず,支払段階で合理的理由なく消費税率引上げ分の3円を減じ,105円しか支払わない場合などです(減額の例)。
 108円を一旦支払うものの,合理的理由なく3円をキックバックさせることも禁止されます。

 

 ②商品購入,役務利用,利益提供の要請

 

 例えば,消費税率引上げ分の上乗せを受け入れる代わりに,取引先にディナーショーのチケットの購入,自社の宿泊施設の利用等を要請する場合などです(商品購入,役務利用の例)。

 

 ③本体価格での交渉の拒否

 

 価格交渉の際に消費税を含まない価格を用いる旨の申出を拒むことも禁止されます。

 

 ④報復行為

 

 特定事業者から①~③の行為を受けた事業者が,各種行政機関に対して通報したことを理由に,不利益な取り扱いを行うことは報復行為として禁止されます。

 

 4 消費税の転嫁を阻害する表示の禁止

 

 2つめの規制として,事業者が宣伝や広告をする場合に,あたかも消費者が消費税を負担していないかのような誤認を消費者に与える表示をすることが禁止されます。

 

 この規制は先の「特定事業者」という限定がなく,すべての事業者に対して課されます。

 

 先ごろ公表された消費者庁のガイドラインによれば,具体的には次のような表示が禁止されることになります。

 

 ・「消費税は当店が負担しています。」
 ・「消費税還元セール」
 ・「当店は消費税増税分を据え置いています。」
 ・「消費税相当分,次回の購入に利用できるポイントを付与します。」
 ・「消費税増税分を後でキャッシュバックします。」

 

  消費税を転嫁していない旨を直接表示することだけでなく,消費税に関連して利益を提供する旨の表示も禁止されるのがポイントです。

 

 一方で,以下のように消費税との関連が明らかでない表示や,たまたま消費税率(増税分)と一致するだけの値下げ表示は,基本的には禁止される表示にあたりません。

 

 ・「春の生活応援セール」
 ・「3%値下げ」
 ・「8%還元」

 

 5 最後に

 

 消費税転嫁対策特別措置法に違反した場合には,勧告・公表の措置がとられることがあります。

 

 同法の運用に関しては,すでに政府からガイドラインが公表されており,セーフとアウトの線引きがある程度明確にされています。

 

 対象となる事業者の皆様におかれましては,余裕があればこれらのガイドラインを一読し,来たる増税にそなえて万全の体制を整えておくとよいでしょう。

 

 

 ◆弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 渡辺 伸樹◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2013年10月1号(vol.135)※一部加筆修正>

【法務情報】借用書をなくしてしまったら??

 │ 債務, 弁護士渡辺伸樹, 新潟事務所

~相談例~

「昨年,友人に100万円を貸しました。念のため借用書をとっておいたのですが,最近,自宅が火事になり,借用書を紛失してしまいました。私は友人からお金を返してもらえないのでしょうか。」

 

~はじめに~

 契約の際に,借用書を作成していたとても,思わぬきっかけでこれを紛失してしまうことはありえます。今回はこのような事態に対処するための方法を考えていきます。

 

~そもそも借用書等の効力って??~

 たまに相談者の方で,借用書をなくしてしまうとお金を返してもらう権利自体が消滅してしまうと思っている方がいらっしゃいますが,それは誤りです。

 借用書をなくしても権利自体はなくなりません。

 ただ,借用書がないと,相手が約束どおりに返済してくれない場合に,困ることになります。

 なぜなら,いざ裁判等でお金の返還を要求した場合に,お金を貸し借りした事実及びその内容を証明することが難しくなるからです。

 つまり,借用書はお金を貸し借りした事実及びその内容を証明する証拠として重要な意義をもっているのです。

 

~借用書を紛失したら??~

 では借用書を紛失したらどのように対処すれば良いのでしょうか。

 

1 もう1通ないか確認

 借用書はあらかじめ2通作って,当事者が各自1通ずつ保管しておく場合があります。このような場合,自分の契約書等をなくしても相手が持っている契約書等を利用して,貸し借りの内容等を証明することが可能です。

 相手が任意で開示してくれない場合には,裁判の中で裁判所を通じて開示を求める方法もあります。

 

2 借用書以外の証拠を探す

 借用書を2通作成していなかった場合には,借用書以外の方法で貸し借りの内容を証明することができないかを考えることが重要になります。

 領収書,振込・入金記録,契約の際に立ち会った人の証言,当時の日記・メモ,など関係のありそうなものはできるだけ多く集められるとよいでしょう。

 ただ,こうした借用書以外の証拠の場合,利息・延滞金の約定についてまでは証明できないことが多いので注意が必要です。

 

3 確認書を新たに作成する

 相手方が応じてくれればですが,契約内容を確認する書面を新たに作成することも有効です。

 その際には最低限,①当事者,②契約日時,③金額,④返還を約する文言,⑤返済期限(あれば)⑥金銭の授受が行われたことが分かる文言,⑦作成日時,⑧作成者の署名・押印は盛り込んでおきましょう。

 例:「①私はXさんから,②平成●年●月●日に,③金100万円を,④⑤平成■年■月■日までに一括で返済するとの約束で借り,⑥前記契約日にこれを受け取ったことを確認します。

 ⑦平成△年△月△日 ⑧借太郎 印」

 また,確認書を作成してもらうときは,後になって,無理矢理書かされた等と言われないよう,注意することが必要です。作成時に中立の第三者を立ち会わせるなどするとよいでしょう。 

 

4 会話の録音は??

 相手が「返済を待ってくれ」「必ず金は返す」等と言っている会話を録音した場合,この録音データは1つの証拠とはなり得ますが,証拠としての価値は必ずしも高いものではありません。

 そもそも,会話の中で相手が3で述べた①~⑥の各要素を盛り込んだ話をすることは期待できませんし(先ほどの例だと何らかの金銭の返還を約束した事実しか証明できない),無理矢理言わされた,編集で都合の良い部分だけを切り取ったなどといって争われる余地もあるからです。

 

5 勝手に作るのはもちろんNG

 いうまでもありませんが,借用書をなくしたからといって,勝手に作成するのは同じ内容であってもNGです。もし勝手に作成した場合,有印私文書偽造罪として刑事罰を受ける可能性があります。

 

~さいごに~

 このように,借用書を紛失した場合でも,とりうる手段はあるので諦める必要はありません。

 とはいえ,借用書を紛失することは大きなマイナスであることに変わりはありません。

 借用書を作ったからといって安心せず,万が一紛失した場合まで想定して,借用書を予め2通作って各自保管する,借用書以外の証拠をできるだけ残すなど,できる限りの措置をとっておくことが大切といえるでしょう。

 

◆弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 渡辺 伸樹◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2013年7月1日号(vol.129)>

 

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