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【法務情報】平成25年度の相続税改正について

 │ 遺言・相続, 上越事務所, 弁護士朝妻太郎

1 ようやく改正法成立

 相続税が変わる,という話は皆さんも耳にされたことがあると思います。もっともこの改正は,一昨年の東日本大震災などの影響もあり,改正までずるずると先延ばしになっていました。

   

 しかし,今年の1月に入り政府が平成25年度税制改正大綱をまとめた後,3月29日の参議院可決によって,改正関連法が成立するに至りました。

 

2 そもそも相続税とは?

 相続税は,皆さんもご存じのとおり,相続によって引き継いだ財産を「評価」して,その評価額によって税額が決まる国税(国に支払う税金)です。後に説明しますが,一定額以上の相続財産に対してのみ課税されるため(基礎控除),ほとんどの方には関係の無い話でした。

    

 実際,平成22年中に発生した相続のうち,相続税の発生した相続は全体の約4パーセント程度と言われています(100人亡くなったうちの4人の相続にだけ相続税が発生した計算)。

  

 今回の相続税改正では,この範囲が広がるといわれているのです。

 

3 相続税が課税される財産

 そもそも相続税が課税される財産にはどのようなものがあるかを簡単に説明します。

  

 相続財産というと,不動産,有価証券,預貯金など,相続争いでよく問題となる財産が思い浮かびますが,これらは当然課税の対象となる財産です。

  

 他方,借金などのマイナスの遺産や葬儀費用などはプラスの財産から差し引くことができます。

  

 気をつけなければならないのは,遺産分割で分割方法を協議しなければならない上記の不動産や預貯金,負債だけでなく,遺産分割の時には問題にならないが相続税の課税対象になる財産が存在するということです。典型的なものが,生命保険金,死亡退職金といったものです(みなし相続財産といいます。)。

   

   例えば,受取人が妻になっている生命保険金があったとします。この生命保険金は受取人が妻と指定されていることから,妻の固有の財産と見ることになります。つまり,遺産分割で当該生命保険金を誰が引き継ぐのか話し合って決める必要はなく,当然に妻の財産となるのです。ですから,弁護士に遺産分割協議や調停を依頼した際に,受取人が決まっている生命保険金の分割という問題は基本的には生じません。しかし,相続税を計算する上では他の財産同様,考慮に入れなければならなりません。

   

 4 基礎控除の縮小

 ここからが今回の本題。基礎控除とは,簡単に言うと,相続税が課税されるか否かのボーダーラインを言います。今回の改正前は,「5000万円+1000万円×法定相続人の数」とされていました。この範囲内ならば相続税は発生しません。

   

 単純な事例で説明します。例えば,夫が亡くなり,妻1人,子2人が法定相続人,相続財産全体の評価額が7000万円だったとします。他方,基礎控除額は「5000万円×1000万円×3=8000万円」となります。そうすると,相続財産の評価額が8000万円までであれば相続税が発生しないことになりますので,このケースでは相続税の課税対象にならないことになるのです。

  

 これが相続税の基礎控除ですが,平成25年度改正により「5000万円+1000万円×法定相続人」から「3000万円+600万円×法定相続人」と変更されたのです。

   

 先ほどの事例ですと,「3000万円+600万円×3人=4800万円」となり,4800万円を超える部分には相続税が課税されることになりますから,7000万の相続では相続税課税の対象になるというわけです。

  

 このように,基礎控除の縮小により相続税が生じる相続の範囲が拡大するのです。

  

 

5 税率の増加やその他の改正

 改正内容は基礎控除の縮小だけではありません。

  

 法定相続人の取得金額2億円超の場合,現行の税率よりも高くなりましたし(例えば,法定相続人の取得金額が2億円超3億円以下の場合の税率は,40パーセントから45パーセントに上昇),最高税率も55パーセントになりました(現行は最高税率50パーセント)。

    

 他方,未成年者控除,障害者控除額が増えるなど,相続税額が減額の方向に作用する改正内容もありますが,総じて見ると,相続税額増額の方向で改正がなされていることがわかります。

 

6 この改正がいつから適用されるのか

 さいごに,この相続税の改正はいつから適用されるのかについてですが,平成27年1月1日以降の相続に適用されることになります(なお,相続発生が平成27年1月1日以降のものに適用されます。平成26年中に発生した相続は申告が平成27年になっても,改正前の規定が適用されることになります。)

  

   相続税のみならず贈与税等も併せて改正されていますが,ほとんどの改正が平成27年1月1日以降の贈与に適用される内容となっています(一部例外もあるので注意)。

  

 いずれにせよ,この改正により多くの人が相続税を心配しなければならなくなったことは間違いありません。この改正を契機に,税理士による相続税セミナーなどは急激に増加し,一つのブームとなっているとも聞きます。

  

   気になる方,興味のある方は,顧問税理士の先生などにおたずね頂くとよいかもしれません。

   

 

※財務省 税制に関するホームページはこちら  http://www.mof.go.jp/tax_policy/

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 朝妻 太郎◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2013年4月15日号(vol.124)>

 

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