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【法律相談】貸した土地は容易に返らない

 │ 新潟事務所, ビジネス, 弁護士古島実

Q .当社はAさんに対して、昭和33年(1958年)に10年の契約期間で土地を賃貸しました。Aさんは土地を借りるとすぐに木造住宅を建てました。その後、Aさんは2000年に当社の知らないうちに木造住宅を建て替え、現在も住んでいます。来年(※2008年)が5回目(50年目)の更新になります。当社はこの土地の有効活用のために賃貸アパートを建てようと思っています。Aさんは地代をきちんと支払っていますが、5回目の更新を機にAさんから土地を返してもらおうと思っています。50年も貸したのだし、Aさんが当社の承諾なく勝手に建て替えたのだから、当然に返してもらえますよね。

  
                                                                                         A .御社とAさんの土地賃貸借契約は、借地法が借地借家法に改正された平成4年よりも前に始まったので借地法が適用されます。平成4年以後に始まった土地賃貸借は借地借家法が適用されます。

 
 借地法によれば、契約で定められた賃貸借期間が20年よりも短いときは、賃貸借期間は30年になります。借地借家法でも同じく原則30年です。従って、賃貸借期間を10年に定めたとしても、賃貸借期間は30年となります。そして、当初の建物が存続する限り、何もしなければ自動的に更新(法定更新)され、その後は20年間賃貸借契約が継続します。御社とAさんとの賃貸借は1988年に一回目の更新、2008年で2回目の更新を迎えることになり、この土地を明け渡してもらえそうです。

 
 しかし、今回の場合Aさんは2000年に木造住宅を建て替えています。賃貸借期間中に次の更新時期(2008年)まで使うことができる建物を建て替えたときは、木造住宅の場合は前の建物が取り壊された時から20年間賃貸借期間が延長されます。

 
 従って、2000年に建てた木造住宅は2008年よりも長く使えるのは明かであるので2020年が更新時期となります。御社の知らないうちに無断で建て替えておいて期間が延長されるのは納得できないかもしれません。しかし、建て替えの時に速やかに異議を出さなければ期間延長されてしまいます。

 
 建て替えがない場合は当然に2008年に返してもらえるかといえばそうではありません。2008年に建物が壊れて使えない状態でない限り、自動更新されてしまうので、更新拒絶をして自動更新を止めなければなりません。更新拒絶するためには、「自らその土地を使用する必要がある場合その他正当な理由」がなければなりません。自らその土地を使用する必要があれば更新拒絶できるというわけではなく、賃貸人の自己使用の必要性や立退料の提供など賃借人の利益と賃貸人の利益の公平を考えて総合的に判断することになります。
 

 このような条件が揃い、たとえ更新拒絶ができたとしても、Aさんに対して建物を壊して土地を明け渡すことを求めることができるかと言えばそうではなく、賃借人が建物を時価で買い取ることを求めた場合はこれに応じなければなりません。買い取った後の取り壊し費用は賃貸人の負担になります。従って、賃借人から土地を明け渡してもらって再利用するためには、立退料、建物買取り費用、取壊し費用を含めるとかなりの出費を覚悟しなければなりません。

 
 このように通常の借地は賃貸人の負担が大きいことから、更新のない定期借地権の制度が用意されています。その代わり、利用できる場合が狭く手続きが煩雑なので利用の際は事前に専門家に相談する必要があります。

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2007年7月号(vol.18)>

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