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【法務情報】マンション購入について

 │ 弁護士中川正一, 燕三条事務所, 消費者

 消費税の増税も決まったことで,増税前に資産取得を検討されている方もいらっしゃると思います。そこで,今回は,マンション購入を検討する際に気をつけるべき点を過去の紛争から分析してみたいと思います。

 

1.マンション価格
 やはり,マンション価格の正当性は購入者にとって一番の関心事ではないでしょうか。過去の紛争で有名なのは,眺望の価値,売れ残りの安売り販売などがあります。

  いずれも紛争の個別性が高く,一般論として論ずることは難しい問題です。眺望の説明が実際と一致しない説明をしていたことを説明義務違反とした事例もありますし,当初から一般公募であれば買い手が付かないような高額な価格を設定していた場合に,公募を予定した価格でないことを説明しなかったことに説明義務違反を認めた事例があります。しかし,いずれも個別事案の特殊性から認められた判断であり,そのような判断が常に期待できるわけではありません。ですから,マンションを購入する場合には業者からの説明以外の情報収集も努力してみる必要がありそうです。例えば,近似マンションを販売する他の業者の話を聞いてみることで,眺望を害するような情報や相場などが分かるかもしれません。

 

2.居住者の確認
 せっかく購入したマンションに暴力団員が住んでいた場合,どうでしょうか。そもそも当該マンションで生活することが怖いということになってしまうでしょう。マンションを選ぶ時は,価格などの資産評価のみならず,どのような人が区分所有権を取得しているのか,確認することも重要と思われます。

 因みに過去の事例では,暴力団員が区分所有権を有し組員が出入りしていたことを隠してマンションを売却したことについて,売買契約の解除を認めた事例があります。

 また「共同の利益に反する」行為には,使用差止請求や区分所有権の競売請求が認められる場合があります。

 

3.管理組合の存在
 マンションでは,複数の区分所有者が存在することが予定されていることから,「区分所有者の団体」を構成することが予定されています。これが通常管理組合として機能します。管理組合は,規約の設定,変更,廃止について,決議したりしますが,区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議が必要となります。

 ただし,多数決原則が満たされても,区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすときは,その承諾が必要となります。

 このように,多数決を原則としながらも少数者の権利をも保護することになっている点では公平性に優れているのですが,「特別の影響」が明確ではないため,裁判になったりもします。

 例えば,ペットの飼育全面禁止規定などが問題になる例があります。一般的には全面禁止を原則としつつも,例外的措置について管理組合総会において,盲導犬などの個別事情に配慮して対応することが多数例のようです。ただし,動物愛好家がペットの飼育全面禁止規定の有効性を争えば裁判になる可能性はあります。

 このように他の区分所有者との衝突があった場合には,面倒な手続に巻き込まれる可能性もありますので,やはり,事前に他の購入者のマンション利用方法や,分譲業者が事前に作成した原始規約の内容などにも関心を払っておくとよいでしょう。

 

4.マンション管理費・修繕費積立金
 マンションは購入した後も支出が必要であることを忘れてはいけません。マンション内紛争で多数を占めるのは管理費と修繕費積立金にかかわるものです。管理費は,共用部分等の維持管理費用や管理組合運営費など通常の管理に要する費用です。例えば,エレベーター管理費や共用部分である廊下などの照明に関する電気代などが具体的な維持管理費となります。修繕費積立金は,計画的修繕工事や不測の事故等による修繕に備える等のために積み立てる金員です。マンションも老朽化による修理を想定しなければなりませんから,事前に積み立てるわけです。

 気をつけなければならないのは,管理費等滞納のまま区分所有権が譲渡された場合,特定承継人にも滞納分の管理費を請求できることです。マンションを購入する際には,管理滞納の有無も注意しなければなりません。

 仮に中古マンションではなく,分譲業者から直接購入する場合も,長期間分譲がされていなかった物件については注意が必要です。分譲業者が作成する原始規約には分譲業者の管理費負担義務を免除ないし制限する規定があったりもします。これが有効とされる先例もありますが,管理費免除期間が限定されていない場合には無効とする見解もありますので,中古物件でない場合にも注意しなければなりません。

 

5.建替え決議
 マンションも最終的には老朽化のため立替が必要となります。では,スムーズに立替ができるのでしょうか。

 法は,区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数の賛成があれば立替ができると定めています。旧法では老朽化などによる費用の過分性が要件とされていましたが,平成14年改正で当該要件は不要とされ,建替え決議が容易になりました。

 では建替えに不参加したい人はどうすればよいのでしょうか。この場合は,時価による売却代金を受けとることによって経済的な補償を受ける制度が用意されています。

 この場合は,建替え決議に賛成した各区分所有者らは,建替え不参加人の区分所有権及び敷地利用権を時価で買い取ることになるため,その負担が発生します。

 このように,マンションにはいろいろな場面で紛争が生ずるおそれがありますので,ご購入の際には,建築瑕疵がないこと以外にもいろいろな注意が必要となります。

 以上をご参考に満足のいくマンションをご検討下さい。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 中川 正一◆

<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2012年11月15日号(vol.114)>

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