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【法律相談】保証は書面が大事(民法の改正)

 │ 新潟事務所, ビジネス, 弁護士古島実, 債務

質問

  

  私はA社の代表者です。売掛先のB社の経営が思わしくなく,売掛金が焦げ付きそうなので,B社の社長Cに会って,「B社が支払わない場合は社長C個人が支払ってほしい。」と頼みました。そして,社長Cから「覚書 売掛金は必ず私が支払います。 C署名・押印」という書類を作成してもらい,社長の署名の下にその場にいた役員のDとEにも署名・押印をしてもらいました。

  やはり,売掛金は支払われませんでした。私は,社長C,役員DとEに支払を求めましたが支払ってもらえませんでした。裁判に訴えて社長C,役員DとEに対して支払を求めることができるでしょうか。

 

回答

   

1 民法の改正

  A社はB社に対する売掛金の支払いをB社の社長CやB社の役員のDとEに保証してもらったのですね。任意に支払ってもらえない場合は裁判に訴えて支払ってもらうことになります。そして,裁判で確実に勝訴するためには法律で定める要件を証拠でそろえなければなりません。

 ところで,平成16年に,民法の保証に関する条文が改正され,民法446条2項に,「保証契約は,書面でしなければ,その効力を生じない。」という規定が新設されました。これは,保証を求められると人間関係から断り難かったり,気軽に応じてしまう割には保証人に大きな不利益が及ぶことから,保証人となる人の保護のために,口約束での保証契約の成立は認めず,保証のための書面を作らなければ保証契約の成立は認めないという趣旨です。

 そこで,質問にあった「覚書」でも,社長と役員がB社の売掛金を保証したとして,裁判所がA社の勝訴判決を出すかが問題となります。

    

2 「書面」とは

 民法は,保証は「書面」でしなければならないとしているだけで,どのような物が「書面」なのかは定めていません。「書面」と言っても素人が作るメモ書き程度の物から金融機関が作るような契約書まで,様々な物があると思います。

  

 現在,「書面」に関して最終的な基準を定める最高裁の裁判例はなく,下級審の判決は厳しく考えるものと,緩く考えるものがあります。

  

 平成20年に言い渡された大阪高裁の判決では,「保証意思が外部的に明らかになっていれば足りる。」としており,書面の要件を緩く考えています。

  

 しかし,その後に言い渡された平成24年の東京高裁の判決では「保証人となろうとする者が保証契約書の作成に主体的に関与した場合,その他その者が保証債務の内容を了知した上で,債権者に対して書面で明確に保証意思を表示した場合に限りその効力を生ずることとする。」とあります。

 平成24年の判決に則れば,文書の題名を「保証契約書」とすること,保証する債務について「A社のB社に対する平成〇年〇月〇日現在の売掛金〇〇〇円」というように特定して表示すること,「私は上記債務の支払いを保証します。」といった他人の債務を保証するということを表す文言を記載すること,「保証人〇〇〇署名・押印」と「保証」することを示す肩書きを付けて署名・押印してもらわないと確実とは言えないと思います。

  

 裁判所は証拠の書面に重きをおいた判断をしますので,次第に,「書面」を厳密に考えるようになり,背景事情は余り重要視せず,「書面」の字面で判断するようになってくると思います。

  

 平成16年の法改正,平成20年の大阪高裁の判決,平成24年の東京高裁の判決を一連の流れとみると裁判所が保証の成立を認める条件が厳しくなってきているのではないかと思われます。  

  

 そのため,保証を求める場合はしっかりした契約書を作らないと,否定される場合が出てくると思います。

   

3 改正は保証人として署名をする側も不利になることも

 前述のように,民法が「保証は書面でしなければならない。」としたのは,保証人となる人を保護するためです。

 しかし,「保証は書面でしなければならない。」の逆を言えば,しっかり作られた書面や契約書に署名や押印をした以上,責任を免れるのが難しくなるという見方もできます。

  

 金融の世界を描いたある漫画に,薄暗いスナックの中で,「〇〇先生が活動資金を返すために手形に署名をしました。支持者のみなさんは立会人として手形の裏に署名をしてください。」と言って,同行した者が手形の裏に署名したところ,その手形が割引に回され,手形が不渡りになり,署名した人が裏書人として責任を負った。という場面がありました(少し違っているかもしれません。)。手形には手形訴訟と言って,手形に記載された字面のみで判断をして背景事情を考慮しない特別な裁判があります。

 書面重視の行き着く先は,保証契約書が手形の様になってしまい,保証人として署名をした以上は署名をした背景事情が殆ど考慮されなくなるおそれもあります。

 

 そこで,安易に保証契約書に署名しないのが一番ですが,保証する意思がはっきりしないまま署名せざるを得ないときは「保証人」という肩書を消したり,代わりに「立会人」というような保証を否定する記載をすることが必要になってくると思います。

 

★当事務所ホームページ内の保証に関するページはこちらです★

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2012年12月26日号(vol.117&118)>

 

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