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【法務情報】税務訴訟のすすめ

 │ 弁護士今井誠, 新潟事務所, ビジネス

1.最高裁判所(第3小法廷)は、去る7月6日(※2010年)、年金特約付きの生命保険契約に基づく権利を相続した妻が長崎税務署長から受けた更正処分を不服として訴えた「所得税の更正処分取消訴訟」において、申立人(一審原告・上告人)の主張を容れて原判決(原告の請求を認容した一審・長崎地裁の判決を覆した二審の福岡高裁の判決)を破棄し、申立人の主張を認容する判決を下した。

 

2.この事件は、夫の死亡により、生前夫が契約していた特約付きの生命保険(年金型の生命保険)の指定受取人になっていた妻が、保険金(特約年金)230万円の支給を受けた際、所得税法の規定に基づき源泉所得税22万800円の控除を受けたので、翌年の確定申告の際、230万円の保険金を収入に計上しないで、控除(納税)された所得税の還付申告をした。

 
 しかし、所轄の税務署長は、この還付申告を認めず、最終的に還付金を19万7864円に減額した更正決定(再更正)をした。

 

3.この訴訟での基本的争点は、保険金(特約年金)に対する「相続税」と「所得税」の二重課税の是非であったが、二審の福岡高裁は年金型の生命保険の受給権の法的性質を「年金受給権」それ自体と「毎年支払われる年金」(支分権)を区別し、相続税の対象とされた生命保険契約上の基本権と毎年支払われる年金額を所得税の対象とすることは「二重課税」に当たらないとして、申立人(原告)の請求を認めなかったものである。

 

4.一昔前までは「税務訴訟は勝てない」「税務に関しては争っても無駄」と考えられてきたが、今や時代は大きく変化し、税務訴訟も勝てる時代になりつつある。ここ数年税務訴訟を取り巻く環境は大きく変化し、税務訴訟の件数は増大し、納税者側の勝訴率も上昇しつつある。訴訟事件だけを見ても、10年前のほぼ5%の勝訴率が今では10%程度になっており、訴訟前の「異議申立」「審査請求」の認容率が15%程度であることを考えると「諦めるのは早すぎる」というべきであろう。

 

5.当事務所でも、最近になってやっと本格的な税務訴訟に取り組みつつある。

 
 これまでも、税務署の課税処分を不服として、税務署と交渉し、異議申立をし、審査請求などをしてきたが、訴訟まで至らずに解決してきた。交渉で成果の上がった案件も何件かあったが、多くは勝訴の見込みが無く訴訟を断念したのが実情である。これまで新潟地裁に提起された税務訴訟は、数えるほどしかないはずである。

 
 全国的にはここ数年相続税関連をはじめとして多くの税務訴訟が提起され、最高裁判所の判決も積み重ねられつつある。税務訴訟に取り組む弁護士や税理士の数も増えつつあるようだ。

 

6.私自身が税理士登録をしてから30年近くなるが、これまで税務訴訟の依頼を受けないことが不思議なくらいである。税務署と税理士の関係は、弁護士から見ると異様な上下関係に見える。納税者(顧客・依頼者)が課税処分に不服であっても、よほどのことがないと訴訟に訴えることをしようとしないが、はたしてそれでよいのだろうか?

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 今井 誠◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2010年9月15日号(vol.62)>

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