【法務情報】2010年4月から保険法が施行されました
もともと、保険については、旧商法に規定がおかれていましたが、約100年間ほとんど改正されずにこれまできました。
これまで規定がないために生じていた問題の解決や社会経済情勢の変化に対応するために、保険契約に関するルールを改めて制定したものです。
今回の改正点は、多岐にわたりますが、保険契約者等(消費者)の観点からの改正を中心に説明したいと思います。
1 契約締結時の告知義務について
(1)旧商法では、保険契約者等の告知義務(たとえば病歴の告知)について、保険契約者等の告知義務の対象を「重要ナル事実」としており、何が重要な事実であるか保険契約者等が判断して告知しなければならず、しかも保険契約者等が悪意または重大なる過失により告知義務違反である不告知や不実告知があると保険者(保険会社等)が、保険契約を解除できるとされていました。
それを、保険法では、告知義務の対象を「重要な事項のうち保険者になる者が告知を求めたもの」とし、また、保険者が重要なる告知事項を指定して保険契約者等に質問をし、それに対して保険契約者等が回答する形にしました。
このように自発的申告義務から質問応答義務に改正されたのは、保険者側の方がいわばプロだから、保険上の危険などの判断については保険者側が負担すべきとしたものです。
(2)また、保険契約者等による告知義務違反があった場合でも、保険者のために保険契約の締結の媒介を行なうことができる者(保険媒介者)が告知妨害や不告知教唆をしたときには、保険者は保険契約を解除できないこととしました。
これは、たとえば保険代理店などは、保険契約者より保険者側に近い立場にあるので保険者側が監督等すべきだという考えで、保険契約者等の保護に沿った規定です。
2 保険給付の履行期について
旧商法には、保険給付の履行期に関する規定はありませんでした。
それを、保険法では、履行遅滞の時期に関する規定を設けました。つまり、保険者が保険金支払までの適当な期間を定めますが、その時期は、保険者が保険金支払いをするのに必要とされる事項を確認するための合理的期間(相当の期間)に限定されるものであり、その時期が支払期限としてそれを超えて支払う場合には履行遅滞になります。
保険事故があれば、原因調査が必要な場合があるところですが、必要以上に時間をかけることは保険契約者等の保護の観点から許されないものとの観点から設けられました。
3 片面的強行規定の導入
保険契約者等の保護の観点から、保険法の規定の内容よりも保険契約者等の不利な内容の約定を無効とする規定が多く定められました。約定(約款)を作る側の保険者のためでなく、保険契約者等の保護のためという意味で片面的強行規定といえるものです。
◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 佐藤 明◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2010年7月31日号(vol.59)>