企業利益を守るための不正競争防止法①
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今回から2回にわたって,
企業利益を守るための不正競争防止法をお伝えいたします!
第一弾は,不正競争防止法で禁止されている行為についてご説明いたします。
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はじめに―不正競争防止法とは―
事業者の経済活動に深く関わる法律の一つとして,不正競争防止法という法律があります。
不正競争防止法は,その名前のとおり,経済活動における「不正」な「競争」を「防止」するための法律です。
では,不正な競争や公正な競争とは何かといいますと,
一般社会において事業者は,ライバル事業者との間で,顧客獲得のための競争を絶えず行っています。
この顧客獲得のための競争については,価格,品質またはサービスの質といった面で行われるのが公正とされていて,それらの面によらない競争のうち一定のものが,不正な競争として法律で禁止されています。
今回は,不正競争防止法によって規制されている行為のうち,
例として同法2条1項1号から10号までに規定されている行為を取り上げ,その概要を解説いたします。
周知な商品等表示主体の混同
“他人の周知済みの商品等表示と同一または類似した商品等の表示を利用して,その他人の商品等と混同を生じさせる行為”は,不正競争防止法によって禁止されています。
このような行為がなされると,上記の「他人」がそれまでの営業努力によって獲得してきた営業上の信用が,他の事業者によっていわばただ乗りされてしまい,顧客を奪われる危険性があります。
また,同一または類似の商品等が劣悪なものであった場合は,模倣された元の商品等まで信用を損なわれかねません。
そこで,元の商品等との混同を生じさせる行為を法律で規制するものです。
過去の例では,事業者Aが,松葉がにを模した大きな動く看板を掲げてかに料理店を営んでいたところ,同一または近接する地域において事業者Bがその看板と酷似する看板を掲げてかに料理店を営んだという事案において,裁判所は不正競争にあたると判断して,Bに対して看板の使用差止めと損害賠償を命じました。
著名な商品等表示の冒用
“他人の著名な商品等の表示と同一または類似の表示を,自己の商品等の表示として使用する行為”も,不正競争防止法によって禁止されています。
商品等の表示が,2に記載した「周知」を超えて,「著名」,すなわち極めて良く知られているという状態になると,その表示自体が強い顧客誘引力をもつ場合があります。
このような著名な表示と同一または類似のものを他の事業者が使用すると,2で記載したと同様にただ乗りを許すこととなってしまいます。
また,元の事業者の努力により表示が著名となって強い顧客誘引力を獲得したにもかかわらず,表示と元の事業者との結びつきが希釈化されてしまいます。
そこで,著名表示と同一または類似の表示の使用を法律で規制するものです。
過去の例では,事業者Cが「○○○ミンA25」という名称でビタミン製剤を製造販売していたところ,事業者Dが「○○○ビッグA25」という名称のビタミン製剤を製造販売したという事案において,裁判所は不正競争にあたると判断して,Dに対して名称の使用差止めと損害賠償を命じました。
商品形態の模倣
“他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡し,貸し渡し,譲渡もしくは貸渡しのために展示し,輸出しまたは輸入する行為”も,不正競争防止法によって禁止されています。
これは,上記の「他人」が商品の形態を作り出すまでには資金や労力を投下していることから,それを模倣(他人の商品の形態に依拠して,実質的に同一の形態の商品を作り出すこと)して譲渡等することを,不正なただ乗り行為として規制するという規定です。
ただし,「商品の機能を確保するために不可欠な形態」につきましては,独占的利用を認めると他者が全く市場に参入できなくなってしまうことから,保護の対象とはなりません。
また,この模倣についての不正競争防止法による保護期間は,元の商品が日本国内において最初に販売された日から3年間にとどまります(3年の期間があれば,先行者は投資を回収することができ,ただ乗りの防止として十分である,という趣旨です)。
次回は営業秘密の保護とまとめ編になります!
「企業利益を守るための不正競争防止法②」もご覧ください。
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2016年3月1日号(vol.190)>
※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。