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【法律相談】過重労働による健康被害

 │ 新潟事務所, 弁護士角家理佳, 労働

 Q.会社の従業員が勤務時間中に脳出血で倒れ、後遺症がのこってしまいました。このような場合、会社にも何らかの責任が発生するのでしょうか。

 
 A.会社は、雇用契約上の信義則に基づいて、使用者として労働者の生命身体および健康を危険から保護するように配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っていると解されています。

 
 そこで、会社が過重な労働をさせたため従業員が病気になったり、もともと持っていた病気を悪化させたということになると、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求をされることがあります。

 
 これについては、労災認定されれば会社は民事上の責任を負わないと誤解されている方もいらっしゃいますが、労災と民事責任は択一的な関係にはないので、労災の申請とは別に、損害賠償請求をされることがあります。このほか、労働安全衛生法違反により罰則が適用されることもあります。

 
 それでは、会社としては、どうすべきだったのでしょうか。

 
 この点について、裁判例は、高血圧は脳出血など致命的な合併症を発症する可能性が高いこと、持続的な困難かつ精神的緊張を伴う過重な業務は高血圧にさせたり悪化させたりすること、会社が定期健診で従業員の高血圧の悪化を認識していたことから、会社はその従業員を過重な業務に就かせない、あるいは業務を軽減するなどの配慮をすべきだった、としました。

 
 もっとも、従業員も、会社から毎年検診結果の通知を受け自分が高血圧だと知っていたこと、会社から精密検査を受けるよう指示されていたのに医師の治療を受けなかったこと等から過失相殺を認めました。

 
 なお、先ごろ、残業代割増率を引き上げる改正労働基準法が成立し、平成22年4月施行となりましたが、この改正により、過労死等従業員の健康被害の一因となっている長時間労働が抑制されることも期待されているところです。

 
 義務と言うと負担ばかりのような印象を与えますが、優秀な従業員を失うことは会社にとって大きな損失のはずですし、適切に配慮された環境にあってこそ従業員はその能力を発揮することから、業務の合理化・効率化にもつながると言われています。従業員を失った上に、多額の賠償金を支払うことを思えば、安全配慮にコストをかけることは会社にとってもメリットの大きいことです。

 
  また、事故などを起こした結果、会社の信用を失墜させることにでもなれば、それこそ大打撃です。厚生労働省の通達「過重労働による健康障害防止のための総合対策」「職場における心理的負荷表」等も参考に対策を立てておかれるとよいでしょう。
  経済情勢の厳しいときだからこそ、事業主も従業員も、快適に効率よく業務にあたることが重要といえそうです。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 角家 理佳◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2009年1月号(vol.35)>

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