相続財産から生じる賃料
│ 弁護士橘里香
Q 相続の対象に賃貸物件が含まれる場合,
遺産分割協議が整うまでの間の毎月の賃料は法律上どのように扱われるのでしょうか。
A 賃料のような物から生じる収益のことを法律上は「果実」といいます。
法律上,相続財産から生じる果実は,遺産には含まれません。
被相続人が死亡した時点では発生していないものだからです。
相続財産は,遺産分割協議が整うまでの間,相続人の共有に属するという扱いをされます。
それ故,遺産から生じた果実も,
各相続人(=共有者)が相続分(=持分)の割合に応じて
固有の権利を有することになります(最判平成17年9月8日)。
たとえ,その後の遺産分割協議で,
相続人の一人がその遺産を相続することで協議が整ったとしても,
協議までの間に生じていた果実は,その者一人に帰属するのではなく,
各相続人の法定相続割合に応じて分配しなければならないのです。
すなわち,毎月の賃料は相続分に応じて分けなければならず,
その物件を誰が取得するかとは別問題となるのです。
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2014年10月15号(vol.160)家事チーム連載㉑>
※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。