法務情報

HOME > 法務情報 > カテゴリ「弁護士上野祐」

法務情報

社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

契約の錯誤無効について~反社会的勢力への対策~

 │ 弁護士上野祐, 東京事務所, ビジネス, 新潟事務所, 長岡事務所, 新発田事務所, 企業・団体, 燕三条事務所, 上越事務所

865b8c7dbaf1c427818a6e2bf3599084_s

 

今回は、反社会的勢力と契約の有効性について取り上げたいと思います。

 

暴力団が典型ですので、暴力団を中心に説明したいと思います。

 

暴力団対策法(正式には「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」)は、暴力団を構成員が犯罪に当たる暴力的違法行為を集団的・常習的に行うことを助長するおそれがある団体と定義し、各都道府県の公安委員会は同法に基づき、様々な取り締まりを行っています。

 

もし、暴力団から、暴力的な犯罪行為の被害に遭ったり、遭いそうになったりした場合には、警察、暴力団追放センター、弁護士・弁護士会に相談をし、被害の回復や被害の防止を図っていくことになります。

 

その一方で、暴力団は、その資金源を得たり、活動拠点を確保するために、日常生活や取引社会における様々な場面に現れ、一般人や一般事業者と接点を持とうとしてくるため、知らないうちに暴力団と接点を有してしまうことがあります。

 

例えば、外見からは暴力団員が運営しているとは分からないような会社を立ち上げ、金融機関から融資を受けたり、事業所を借りたりする場合があります。

 

そして、事業者にとって、取引相手が暴力団関係者と判明した場合には、直ちに関係を絶つことが求められています。

 

新潟県暴力団排除条例は、暴力団の排除を基本理念に掲げ、事業者に対し、相手が暴力団であることを知りながら、その活動を助長したり、運営に資することになる利益の供与(取引)を禁止しています(第11条第1項⑵)。

 

他方で、同条例は、相手が暴力団であることを知らないでした契約上の義務を履行することは禁止していません。

 

これは、暴力団であるとの事情は、当然には契約を無効にするわけではないという法解釈に基づいています。

 

つまり、“取引相手が暴力団であることを予め知っていれば契約を交わすことはなかったから契約はなかったことにしてほしい”との主張は、法制度に当てはめると「錯誤」(民法95条)の主張となります。

 

確かに、「錯誤」が認められれば契約は無効となりますが、前記のような契約締結の“動機”内容に錯誤がある場合については、無制限に契約を無効とすれば取引が極めて不安定になります。

 

それゆえ、裁判所は、「動機が表示されて契約の内容となった」と認められる必要があるとの法解釈を採っています。

 

最高裁は、近年、金融機関が暴力団に対し貸し付けた貸付金を保証する旨の信用保証協会の保証契約の有効性について、貸付者が反社会的勢力であるとの事実が事後的に判明した場合の対応や取扱いに関する規定が契約書にないことを理由に、契約は有効であると判断しました(平成28年1月12日判決)。

 

その賛否はともかく、契約書に明示的に定めていない限り、“取引相手が暴力団であることを予め知っていれば契約を交わすことはなかったから契約はなかったことにしてほしい”との主張は、法的には認められないことになるのです。

 

以上を踏まえると、取引相手が暴力団であるとの事情が事後的に判明した場合への事前の対応策は、詰まるところ契約書に必要な条項を挿入すべきことになります。

 

新潟県暴力団排除条例は、事業者に対し、書面で契約を締結する場合には、契約の相手方が暴力団員であることが判明したときには催告することなく契約を解除することができる旨を定めることの努力義務を課しています(第12条第2項)。

 

法的義務ではなく努力義務ではありますが、暴力団排除という社会的使命を果たすためにも、必要な措置として励行すべきと思われます。

 

もう一つ、大切な対策として、事前の確認義務の問題があります。

 

先に触れた事例も、保証人側は、金融機関が、借主が反社会的勢力に属することの調査を怠ったと主張し、最高裁判所も、契約時に一般的に行われている調査方法に照らして相当と認められる調査を怠った場合には、金融機関と保証人との間の保証契約違反に当たり得ると判断しています。

 

この事例について、最高裁判所の判断を受けた高等裁判所は、金融機関ですから、グループ会社で得た情報や外部団体(暴力団追放センター等)からの情報を基にデータベースを構築し、そこで確認をしていることをもって、相当と認められる調査がされたと判断し、保証契約を有効としました。

 

実際に、どの程度の調査を行うべきかは、取引の内容や事業者の規模にもよるかと思いますが、新潟県暴力団排除条例では、契約時に、取引相手に暴力団員でないことを書面で誓約させることを求めていますから(第12条第1項)、最低限、その程度の確認作業が必要と思われます。

 

また、警察や暴力団追放センターは、場合によっては情報提供をしてくれますので、適宜照会を行うことも有効かと思います。

 

最後に、事業者にとっては、たとえ事前に知らなかったとしても、暴力団とつながりを持ってしまったこと自体が企業イメージを大きく損ねる結果となりますし、事後的に判明した場合の対応を誤ると、大きな損失を被るおそれもあります。

 

ですから、先の説明を参考に、適正な対処につなげられるような事前の対策を意識することが重要になります。

 

まだ特段の対策を行っていない事業者におかれましては、当事務所にも適宜ご相談いただければと思います。

 

 

Point


 

契約後に相手方が反社会的勢力と判明した場合、

その契約を無効と主張するためのポイントとして……


 

・反社会的勢力であるとの事実が、事後的に判明した場合の対応や取扱いに関する規定を契約書に明示する。

ex.「契約の相手方が暴力団員であることが判明したときには、催告することなく契約を解除します。」

・契約時に、取引相手に暴力団員でないことを書面で誓約させる等、確認作業を行う。


 

 

◆弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 上野 祐

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2016年12月5日号(vol.203)>

※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

敷金が法律に明記されるとどうなる?

 │ 弁護士上野祐, 新潟事務所, その他

 

n853_usuguraiapa-tonorouka_tp_v

 

1 マスコミ報道を見て

皆さんは,テレビや新聞などのマスコミから法律に関する情報を仕入れていると思います。

私たち弁護士も,マスコミを通じての情報収集を欠かせないわけですが,

先日テレビを見ていたら,民法が改正されて,

敷金に関する規定が盛り込まれるという話題が取り上げられていました。

(※掲載は平成26年9月です。)

 

敷金の定義を置き,

借主は経年変化に対する原状回復義務を負わずに敷金が返還されるというものです。

そして,敷金を返してもらえなかった経験がある人のお話が紹介されました。

これを見た時,ちょっと誤解を生みそうな報道だなと私は感じました。

 

改正自体がまだ予定の段階なのもそうですが,

民法が改正されるまでは,借主は経年変化に対して原状回復義務を負い,

敷金は返してもらえないのが今のルールであるかのような印象を受けたからです。

 

しかし,以下に詳しく説明しますが,実は,そうではないのです。

 

2 敷金とは

昔から,特にアパートなどでは敷金の差し入れが求められ,

その返還をめぐるトラブルも多く,裁判も提起されています。

以下では,わかりやすいように,アパートなどの住宅の賃貸を念頭に述べます。

 

裁判所は,敷金を,

未払賃料や明渡しまでに発生する借主の債務を担保する趣旨で交付される金銭と定義しており,

改正予定の定義も,これに合わせた形になります。

 

この定義から明らかなように,未払の賃料が敷金から控除されるのは当然として,

「明渡しまでに発生する借主の債務」も敷金から控除されます。

タバコの不始末で床に焦げを付けてしまったなど,

通常の使用で生じたとはいえない場合の修繕費用がこれにあたります。

 

それでは,経年変化や日常生活で生じた汚れはどうなのでしょうか。

裁判で問題となった事例を紹介して説明します。

 

3 判例の紹介

問題となった事案は,契約書において,借主が負担する補修費用の一覧表があり,

例えば手垢など日常生活による障子の汚れ,

床仕上材・壁の日常生活にともなう汚れ・変色についての補修を借主の負担とする規定がありました。

 

貸主は,当然,この契約書の規定に基づいて

一部の敷金しか返還しなかったわけですが,借主がこれを不服として提訴したのです。

 

裁判所は,借主は「通常の損耗」(通常の使用により生じる劣化)を

修繕する義務を負わないのが原則であるから,

もし借主に「通常の損耗」についての修繕義務を負わせるためには,

その範囲が契約書に具体的に明記されているなど明確な合意が必要である,としました。

 

そして,本件では一応,契約書に借主の負担に関する規定があったわけですが,

裁判所は,契約書の内容は具体的でなく,明確な合意は認められないと判断しました。

(最高裁平成17年12月16日判決)

 

このように,裁判所は,契約書の内容には

借主が「通常の損耗」を修繕しなければならないような書きぶりがあったにもかかわらず,

借主が「通常の損耗」の修繕をする義務を否定したのです。

 

しかも,この判例に従うかぎり,

借主が「通常の損耗」の修繕義務を負うことを貸主側が立証しなければ,

貸主は,敷金を返還しなければならないことになります。

 

4 民法が改正されることの意義

以上のとおり,現在でも,

借主は経年変化,つまり「通常の損耗」に対する原状回復義務を負いません。

予定されている改正の内容は,3で紹介した判例の趣旨を明記したことになります。

 

なので,報道どおりに民法が改正されたとしても,

裁判実務への影響は,それほど大きくないと思われます。

 

まだ確定ではないわけですが,

民法を改正して敷金規定を明示することにどのような意味があるのでしょうか。

 

その一つは,民法改正にともなって賃貸業者が契約書を見直す際に,

敷金の規定が整備されることです。

 

多くの事業者は,判例の存在など知りませんから,

自分の都合のいいように契約書の文言を決めていることがあります。

ですが,民法に明記されることによって,法律に抵触しそうな文言は設けないでしょう。

 

もう一つは,もし一般の方が,

貸主が敷金が返還されないことに対して不満を言う場合に,

法律に明記してある方が交渉しやすいということが挙げられます。

 

5 最後に

約120年ぶりの大改正とあって,

民法改正は多くのマスコミに取り上げられ,抜本的な制度変更を予定しているものもあります。

例えば,短期の消滅時効は,今では種類によって期間が別々なのですが,

一律に5年になるというのが有名です。

 

マスコミは,基本的には優れた情報収集の手段ですが,

時折不正確な情報を流すので注意が必要です。

 

民法改正に関心を持つことは大切ですが,

それによってどのような影響を受けるのかについては,

きちんと専門家に相談するのが適切かと思われます。

 

民法改正は,まだ要綱仮案の段階なので改正内容については,流動的な部分があります。

ですが,現段階からきちんと情報を集めて,情報発信をしていきたいと思っています。

 

◆弁護士法人新潟第一法律事務所 弁護士 上野 祐◆

 <初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2014年9月17日号(vol.158)>

※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

悩むよりも、まずご相談ください

お客様のトラブルや不安を一日でも早く取り除くためのサポートをいたします。

ご相談の予約は、

0120-15-4640 メールからのご予約はこちら
受付時間
9:00~17:00 受付時間 受付時間 受付時間 受付時間 受付時間 受付時間 受付時間
17:00~19:00 受付時間 受付時間 受付時間 受付時間 受付時間
販売書籍のご案内 マイナンバー、情報管理対策のためのサポートサービスのご案内 介護事業所向けの案内 保険代理店向けの案内 法務情報 スタッフブログ 弁護士採用情報 事務局採用情報 さむらいプラス
お急ぎの方はこちら
PAGE TOP