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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

民法改正のポイント vol.1 ~保証編~ (弁護士:中澤亮一)

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中澤亮一弁護士の法改正コラムを更新いたしました。


1 はじめに

民法改正については、このコモンズ通心でも何度かご紹介しているところです。

今回は、実務への影響も大きいと思われる「保証」分野について、ポイントを絞りつつ、事例をまじえておさらいしたいと思います。

2 個人保証の制限

⑴ 保証人の負担は大きなものになりがちであり、保証人の保護を図る必要があります。

そこで、改正前民法においても、保証契約は書面でしなければその効力を生じないとして(446条2項)保護を図っていますが、改正後民法ではさらに、個人による「事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担した貸金等債務が含まれる根保証契約」については、契約締結前1か月以内に作成した公正証書で保証意思を表示しなければ、保証契約は無効としました(改正法465条の6)。

⑵ ただし、この規定には適用除外となるケースがあります。以下の通りです(改正法465条の9)。

主債務者が法人である場合には、その法人の理事、取締役、執行役や、議決権の過半数を有する株主等

主債務者が個人である場合には、主債務者と共同して事業を行っている共同事業者や、主債務者の事業に現に従事している主債務者の配偶者

要するに、主債務者と近い関係にある人には、公正証書での意思確認が不要とされているのです。


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中澤亮一弁護士の法律コラム「暴行罪と傷害罪はどう違う?」

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中澤亮一弁護士の法律コラムです。

今回のテーマは『暴行罪と傷害罪はどう違う?』です。


1 はじめに

ニュースなどで、「暴行罪」「傷害罪」という言葉はよく耳にすると思います。

いずれもよく似た犯罪ですが、どのような違いがあるのでしょうか。

2 暴行罪とは

⑴ 暴行罪は、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」に成立します(刑法208条)。

簡単にいうと、暴力を振るったけど怪我をしなかった、というような場合に成立するのが暴行罪です。

2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料が科されます。

 

正確な定義も確認しましょう。

「暴行」とは、他人の身体に対する有形力の行使をいい、「傷害」とは、身体の生理機能の障害または健康状態の不良な変更を意味します。

どちらも難しい言い回しですが、このように解釈されています。

 

 「暴行」は、殴る蹴る等のいわゆる暴力が含まれることは当然ですが、音、電流、光等の物理力を行使する場合も含まれ、古い判例では、被害者の耳元で大太鼓を叩いた行為が暴行罪とされた例もあります。

 

⑶ また、相手の体に接触していなくても、「暴行」にあたることがあります。

例えば、脅かす目的で石を投げたが当たらなかった場合などです。

最近話題となっている自動車のあおり運転も、危険な方法での運転(並走中の自動車の幅寄せ行為、追越行為、割り込み行為など)それ自体が有形力の行使、すなわち暴行であるとして、暴行罪が成立する場合があります。

これはニュースで聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。

あおり運転は道路交通法違反に問われることは当然ですが、暴行罪になることもあるのです。

3 傷害罪とは

⑴ 傷害罪は、「身体を傷害した者」に科されます(刑法204条)。

15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

傷害といっても千差万別なので、刑の幅も広く定められています。

 

 「傷害」は、先ほど述べたとおり、身体の生理機能の障害または健康状態の不良な変更を意味します。

これだけだとよくわかりませんが、つまり、創傷(切り傷)、擦過傷(擦り傷)、打撲傷といった外傷だけでなく、めまい、嘔吐、失神、病気、外傷後ストレス障害なども、「傷害」に含まれるということです。

いわゆる「怪我」だけではないのですね。

 

⑶ また、傷害は暴行によって生じることが多いでしょうが、暴行によらない傷害の場合も、傷害罪が成立することがあります。刑法204条に、「暴行によって」といった文言がないことからも、これがわかります。

たとえば、いやがらせ行為により不安及び抑うつ状態に陥れた場合や、自分が病気であることを知ったうえで故意に病気をうつした場合(ただし厳密には学説上争いがあります)は、傷害罪が成立します。

長期間にわたってラジオやアラーム音を大音量で流し続け慢性頭痛症にさせた場合も、暴行によらない傷害として傷害罪が成立することがあります。

この代表例が「騒音おばさん」事件です。

奈良県に住む被告人の女性が、トラブルとなっていた隣人に向けて大音量のラジオ等を流し続けて、精神的ストレスを負わせ慢性頭痛症等にしたというものです。

被告人の女性は最高裁まで争ったようですが、最高裁は、

 

「自宅から隣家の被害者に向けて、精神的ストレスによる障害を生じさせるかもしれないことを認識しながら、連日連夜、ラジオの音声及び目覚まし時計のアラーム音を大音量で鳴らし続けるなどして、被害者に精神的ストレスを与え、慢性頭痛症等を生じさせた行為は、傷害罪の実行行為に当たる」

 

としています。

4 結論

このように、暴行罪と傷害罪の違いは、わかりやすくいえば、「暴行によって相手が怪我をしなかったら暴行罪」「怪我をしたら傷害罪」ということになります。

 

弁護士:中澤亮一


<参考文献>

西田典之『刑法各論 第四版補正版』弘文堂

騒音おばさん事件の部分、判例秘書Internetの判決要旨を引用

ネット中傷への対応方法

 │ その他, 弁護士中澤亮一

近年インターネット上の口コミサイトが人気を博していますが、そこに特定の個人や企業に対する中傷的なコメントを書き込まれるといった事案が後を絶ちません。

このような書き込みは、高い匿名性を背景として行われるがゆえに、対応も簡単ではないのが現状です。

しかし、ネット上の匿名性は完全ではない場合が多く、法的手段を用いて発信者の情報を得る(書き込み者を特定する)ことができますし、問題となっている書き込みの削除を求めることもできます。

 

今回は、主に口コミサイトにおいて中傷コメントが書き込まれたという事例を想定し、その対処法として、削除請求と発信者情報開示請求の概要をご紹介しようと思います。

 

 

削除請求

(1) 任意の削除依頼

一番手軽な方法としては、当該サイトの管理者等に対して、削除依頼をするというものがあります。

多くはサイトに削除依頼専用の依頼フォームが設けられています。

ただし、単にフォームから依頼を送ればそれでいいかというと、そうではありません。

 

①氏名

②連絡先(メールアドレス等)

③削除対象のURL等及び問題箇所の具体的指摘

④削除を求める理由

⑤生じた被害の程度

は、最低限記載すべきでしょう。

 

当該サイトに依頼内容の指示がある場合にはそれにしたがってください。

 

もっとも、任意の削除依頼をしても無視するようなサイトも多く、そればかりか削除依頼の内容を公表するようなサイトもあるようなので、手軽な反面、実際に削除してもらえるかは難しい部分もあります。

 

(2)テレコムサービス協会の書式による削除依頼

テレコムサービス協会とは、インターネットサービスプロバイダ(ISP)や回線事業者等を会員としている一般社団法人であり、プロバイダ責任制限法関連のガイドラインを公表しています。

 

同協会が公表している書式を使って削除を求めることもできます。

この場合は、「侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書」という書面を作成し、当該サイト管理者等に郵送することになります。

書式は「プロバイダ責任制限法 関連情報WEBサイト」(http://www.isplaw.jp)というサイトから、記入例付きでダウンロードすることができます。

 

(3)裁判手続

上記の書式を使った送信防止措置依頼をしても削除に応じない場合には、法的手段として削除仮処分を検討します。

 

仮処分とは、裁判の一種ではあるものの、通常裁判よりも迅速な手続により審理を行い、一定額の担保金の供託を条件として暫定的な措置を行うものです。

「仮」の処分ではありますが、この手続で削除が認められれば多くのサイトは削除に応じますし、一度削除されればその後に書き込みが元に戻るということもありません。

担保金の額は事案によりますが、30万円程度を求められることが多いようです。

 

仮処分決定を得るには、どの書き込みがどのように権利(人格権、著作権等)を侵害しているのか、すぐに削除されなければ権利回復が困難になるといった事情があるか(保全の必要性)、書き込みが違法ではないといい得る事情がないか(違法性阻却事由の不存在)等を主張する必要があります。

 

裁判手続では法的な知識が求められますので、この手段をとる場合には弁護士に依頼せずに行うのは難しいでしょう。

 

発信者情報開示請求

(1)大まかな流れ

一般ユーザーが書き込みを行う場合、書き込みデータはその者が契約しているISPのサーバーからコンテンツプロバイダ(当該書き込みをしたサイト)のサーバーという流れをたどりますので、この接続の順番を逆にたどり、契約者の個人情報の開示を求めていきます。

 

具体的には、①証拠保存→②コンテンツプロバイダへI Pアドレス等の開示請求(任意の請求、若しくは仮処分)→③ログの保存請求→④ISPへ契約者情報の開示請求訴訟という方法を順にとっていきます。

 

 

(2)①証拠保存から②コンテンツプロバイダへの請求まで

今後裁判等の手段をとる場合に備えて、当該書き込み及びその関連情報を証拠として保存しておきます。

スクリーンショットや紙への印刷で構いませんが、当該サイトのURL全体が明確に分かるようにしてください。

証拠を保存したら、まずは当該サイトの管理者等に対してIP アドレス、通信日時等の開示を求めます。

この段階では任意開示に応じるサイトも多いので、上記テレコムサービス協会の書式を用いて請求します。

応じない場合には仮処分を検討します。

 

(3)③ログ保存請求及び④ISPへの開示請求

I Pアドレスの開示を受けたら、「W h o i s」というサイトを使ってどのISPなのかを検索することができます。

ISPが明らかになったら、発信者情報開示請求訴訟を提起します。

ISPとしては自分の契約者の個人情報を開示することになるわけですから、任意開示にはほとんど応じてくれず、そのため訴訟を提起する必要があります。

 

ここで重要なのは、ISPのログ(通信記録)は一定の期間(早いと3 か月程度)が経過すると削除されてしまうため、訴訟提起に先立ってログの保存請求をしておく必要があるということです。

直接ISPに対して任意保存を求めるか、仮処分申立をしておく必要があります。

 

ISP側も訴訟では開示を争ってきます。

法的な主張を尽くす必要がありますので、訴訟対応は弁護士に依頼した方がよいといえるでしょう。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 中澤 亮一

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2018年6月5日号(vol.221)>

※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

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