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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

人を雇うということは外注扱いでは済まされない②

 │ 労働, 労災事故, 企業・団体, 弁護士飯平藍子

 

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労働者を雇い入れるときには,労働条件の明示,保険加入が必要

 

前回は,建設業就労者も,

就労の実態によって「労働者」に当たるというお話をしました。

今回からは,「労働者」を雇う場合に発生する義務を見ていきます。

 

今回は,雇入れの始めの段階で生じる,

労働条件の明示や保険加入の義務について説明します。

特に,保険については,近年,建設業就労者の未加入が問題視されているので,

組合員の皆さんにもよく理解していただきたいところです。

 

労働条件の明示

 

労働者を雇い入れる際には,労働条件を明確に示さなければなりません。

労働条件の中でも,

①労働契約の期間,

②就業場所・仕事の内容,

③始業・終業時刻,早出・残業の有無,

休憩時間・休日・休暇,就業時転換(シフト制・交代勤務制など)に関する事項,

④賃金の決定・計算・支払の方法・時期,

⑤退職に関する事項

については,「労働条件通知書」などの書面で明示しなければなりません。

もっとも,それ以外の事項(労働者に負担させる作業用品や職業訓練など)についても,

併せて書面で示すことが望ましいです。

 

労働保険への加入

 

労働保険とは,労働者災害補償保険(労災保険)及び雇用保険をいいます。

労災保険とは,労働者の業務上または通勤によるけがや死亡に備える保険で,

保険料は事業者が全額を負担します。

労働者を一人でも雇う事業者は,原則として労災保険に加入しなければなりません。

 

雇用保険とは,労働者の失業等に備える保険で,

保険料は事業者と労働者が折半して負担します。

 

事業の規模にかかわらず,

①1週間の労働時間が20時間以上で,

②31日以上雇用する見込みがある人

を雇い入れた場合には,必ず雇用保険に加入しなければなりません。

 

労働保険に加入しないでいると,

最大で2年間遡って労働保険料を徴収されるほか,

併せて追徴金も徴収されることになります。

 

さらに,労働災害が発生した場合には,

労災保険給付の費用の全部又は一部も徴収されます。

 

社会保険への加入

 

社会保険とは,健康保険及び厚生年金保険をいいます。

健康保険とは,労働者やその家族の病気やけがに備える保険です。

厚生年金保険とは,労働者が高齢で働けなくなったり,

病気やけがで身体に障害が残った場合等に備える保険です。

保険料はいずれも事業者と労働者が折半で負担します。

 

社会保険は,常時5人以上を雇用する事業者は,

必ず加入しなければなりません。

社会保険に加入しないでいると,社会保険料を最大2年間遡って追徴されるほか,

罰則(6月以下の懲役又は50万円以下の罰金)が適用されるおそれがあります。

 

以上,労働者を雇い入れるときに生じる義務についてお話しました。

次回のテーマは「労働者を雇い続ける責任」の予定です。

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 飯平 藍子◆

<初出:新潟県建設ユニオン様機関紙2016年5月号>

※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

人を雇うということは外注扱いでは済まされない①

 │ 新潟事務所, 労働, 労災事故, 企業・団体, 弁護士飯平藍子

 

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労働法は自分には関係ない?

 

皆さんは,「労働基準法」や「労働者災害補償保険法」等の

「労働法」と呼ばれる法律をご存じですか?

 

これらは「労働者」と労働者を雇用する「使用者」の関係を規律する法律です。

皆さんの中には,

「自分のところでは雇用ではなく,外注(請負)の形で仕事を頼んでいるから,労働法は関係ない」

と思っている方がいらっしゃるかもしれません。

 

しかし,「労働者」にあたるか否かは,就労の実態から実質的に判断されます

したがって,皆さんのところの就労者が実は「労働者」に該当し,

後で残業代を請求されてトラブルになる,ということも起こりかねません。

 

そこで,これから数回にわたり,どのような場合に「労働者」にあたるのか,

「労働者」にあたる場合,どのような権利・義務関係が生じるのかをお話ししていきたいと思います。

今回は,どのような場合に「労働者」にあたるかを考えます。

 

 

労働者とは

 

「労働者」は,職業の種類を問わず

事業に「使用される者で,賃金を支払われる者」と定義されています(労働基準法9条)。

 

「使用される」とは,使用者の指揮命令を受けて働くことをいい,

就労者が

①仕事の依頼を自由に断れない,

②業務の遂行(作業方法や手順等)について指揮監督を受けている,

③勤務時間や場所が拘束されている,

④他人に代替させることができない

などの事情があれば,「使用され」ていると認められやすくなります。

 

「賃金を支払われる」とは,労働の対償として報酬を得ることをいい,

⑤報酬を時間単位で計算するなど,

労働を提供する時間の長さに応じて報酬額が決まる場合には,「賃金」と認められやすくなります。

 

さらに,

⑥事業者性が弱い

(機械・器具を自分で負担しない,報酬の額が同様の業務の従事者に比べて特に高くない等)

⑦他社の仕事を受けることが事実上制約されている,

⑧給与所得の源泉徴収や社会保険料等の控除がされている

等の事情を補完的に考慮して,「労働者」にあたると判断されることもあります。

 

 

建設業就労者の「労働者」性

 

裁判で建設業就労者の「労働者」該当性が争われた例も多くありますが,

労働者性を認めたもの(東京地判平成7・7・17等)も,

認めなかったもの(最判平成19・6・28等)もあります。

 

このように,実際に「労働者」に該当するか否かはケースバイケースと言わざるを得ませんが,

上記の①から⑧の項目にあてはまる数が多ければ,「労働者」にあたる可能性が高いと思われます。

 

次回のテーマは「労働者」にあたる場合に発生する権利・義務関係の予定です。

 

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 飯平 藍子◆

<初出:新潟県建設ユニオン様機関紙2016年3月号>

※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

 

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