ネットサービス 突然の終了(弁護士:後藤 晋太郎)
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1.ネットサービス 突然の終了
家族で動画や写真を共有する無料サービス「ウェルノート(wellnote)」が、2022年12月27日付でサービスを終了するというニュースが話題となりました[1]。
(なお、サービスの提供は、株式会社MIXIから支援の申し出があったとのことで、サービスの終了日を12月27日から2023年4月11日へと変更することが発表されています[2]。)
サービスの終了が発表されたのは2022年11月30日であっため、その時点で終了予定日とされていた12月27日まで1カ月を切っていました。
また、このサービスを10年以上にわたって利用していたユーザーもいたようです。
突然のサービス終了の発表だったため、利用者からは苦情の声が上がっていたようです。
2.利用規約の問題は?
「ウェルノート」の一般会員向け会員利用規約を見ると、事業者側はサービスを廃止することができるほか、投稿内容の保存義務を負わず、廃止による損害も責任を負わないとしています[3]。
「サービス自体を(いつ・どのように)廃止するかどうか」「事業者側がサービスの投稿内容について保存義務を負うかとするか」、といった点は、決まったルールを定める法律はなく、契約の当事者が自由に定めることができます。
これは、自分が誰と契約を締結し、どのような内容を選択するのか、自らの意思によって決定することができる「契約自由の原則」があるからです。
3.炎上を防ぐために…
ところが、急な資金繰りの悪化や、ニーズの変化などを理由に、事業者側からサービスの提供を終了するケースがあります。
今回のケースでも表れたように、サービスの突然の終了は予期せぬ批判や混乱の原因になりかねません。
ネットサービスは継続して利用することが予定されている「継続的契約」のため、事業者側の都合で終了させるためには、合理的予告期間を設けて事前に解約告知を行うことが重要です。
裁判例の中には、長期間にわたり取引関係が継続してきた場合には契約当事者に今後も取引が継続されるとの期待が生じることがあり、取引継続への合理的期待が必要であり、また、解約を認めるためには合理的予告期間が必要であるとしたものがあります[4]。
特に、有償で利用していた利用者は、商品やサービスの購入に利用することを予定していたため、取引継続の期待は高まるといえます。
そのため、利用者に対し突然サービスを終了してしまうと、利用者から訴訟を起こされるおそれもあり、慎重な判断が必要です。
事業者の一方的都合によるサービス終了、廃止をすることは、結果的に大きな法的リスクとなります。
サービスを終了、廃止する場合においても、余計な混乱を招いたり、ステークホルダーの信用を失ってしまわないよう、慎重かつ適切な対応をとることが重要です。
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【参考URL・資料】
[1] https://www.j-cast.com/2022/12/07452003.html?p=all
[2] https://wellnote.jp/221207_download_data_announce.pdf
[3] https://wellnote.jp/static/user/terms.html
[4] 東京地裁平成22年7月30日判決・判例時報2118号45頁
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