適切な財産管理で紛争予防 その2
前回,財産管理の方法についてお話しましたが,
そのうち,法定後見は,財産管理する人を裁判所が選任するもので,
あなた自身が決めることはできません。
これに対して任意後見は,
あなた自身が誰に頼むかを決めることができる点で優れています。
そうはいっても,効力を生じる時にはあなたの判断能力は低下していますので,
頼んだ人の実際の仕事ぶりをあなた自身が確認することは困難です。
そこで,元気なうちは財産管理契約,
判断能力が低下した後は任意後見に移行するという方法(いわゆる移行型)がお勧めです。
これなら,自分が元気なうちから財産管理の一部(又は全部)を任せ,
その人がきちんと仕事をしてくれるか否か,自分の目で確認することができ,
もし信頼できないと思えば任意後見契約を解除することができるからです。
しかし,最近,この移行型を悪用する例が報告されるようになっています。
どういうものかというと,
主に近隣に財産管理を頼める適当な親族がいない人に近づいてうまいことを言い,
移行型の契約を締結して財産の一切を預かり,
あなたがしっかりしている間は,それなりに管理をします。
ところが,あなたの判断能力が低下し,
本来なら家庭裁判所に任意後見監督人を選任してもらい,
任意後見契約を発効させ,監督人の監督に服するべき段階になってもこれをせず,
あなたの判断能力が低下したのをいいことに,
あなたの財産を自分のために使い込んでしまうのです。
このようなケースは,事態に気づく人が近くにいないため,
発覚しないまま,被害が拡大してしまうことが多いようです。
そこで,親族以外の第三者に任せる場合には,
周囲に相談の上,信頼できる人に依頼し,万一被害が生じた時にも早期に発見してもらえるよう,
財産管理を頼んでいることを親族等に報告しておくとよいでしょう。
また,場合によっては,弁護士,社会福祉士等,
不正を起こす可能性の低い専門職に依頼することも検討してもよいと思います。
◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 角家 理佳◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2015年11月1号(vol.184)家事チーム・連載想いをつなぐ相続⑤>
※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。