CASE

解決事例

2025/06/25

相続・遺言

相続した遺産に田畑があり、耕作委託について対応した事例

相続・遺言

【事案の概要】

Aさんは40代の男性です。このたび、Aさんの父が亡くなりました。


Aさんの母は数年前に亡くなっており、父親の相続人はAさんと、妹の2人でした。

Aさんは父親と同居しており、妹は結婚して県外に居住していました。

父親の遺産には、自宅土地建物、預貯金、株式の他に、田んぼと畑がありました。


遺産分割協議において、妹は、不動産はいらないから預貯金と株式を取得したいとの意向を示しました。

他方、Aさんは、自宅土地建物を取得したいと思ったので、Aさんが自宅土地建物と田んぼと畑を相続し、妹が預貯金と株式を相続する内容で協議がまとまりました。


Aさんは、自宅土地建物を相続できてよかったものの、田んぼや畑については、父親が一人で細々と耕作していたものであり、Aさんは会社員として働いていたことから、農作業の手伝いをしたことがありませんでした。

田んぼや畑は耕作しないで放っておくと土地が痩せてしまうため、Aさんは誰かに耕作を委託したいと思いましたが、耕作を委託する法的な方法を知りたいと思い、弁護士に相談しました。

【解決】

弁護士はAさんに対し、耕作の委託の法的な方法としては、①農地の賃貸借、使用貸借や、②農作業のみの委託、③農業経営の委託といった方法があるということを説明しました。

さらに、このうち①の賃貸借・使用貸借と③の農業経営の委託は、農業委員会の許可を得る必要があるということを説明しました。

Aさんは、弁護士の話をもとにして検討し、近所で農業を営むNさんに、②の農作業の委託をお願いすることにしました。

そのうえでAさんは、弁護士に、Nさんとの間の委託契約書の作成を依頼しました。

【弁護士による解説】

農地の委託の方法としては、①農地の賃貸借や使用貸借、②農作業のみの委託、③農業経営の委託、の3通りが考えられます。

まず①は、土地を貸して、耕作してもらう方法であり、農産物の所有権や農業経営の利益・損失は耕作者に帰属して、賃貸借の場合には地主は賃料収入が得られます。

②は、地主が耕作者に委託料を支払って耕作してもらう方法であり、農産物の所有権や農業経営の利益・損失は地主に帰属します。

③の場合は、地主が耕作者に委託料を支払いますが、農業「経営」の委託なので、農産物の所有権は耕作者に帰属し、農産物の売却等も耕作者が行います。

一方、農業経営の利益や損失は地主に帰属します。

①と③は、土地の使用収益権が耕作者に移転するため、農業委員会の許可が必要となります。

いずれの契約についても、口約束ではなく、契約書を作成しておくことをお勧めします。