遺言で想いを伝えましょう
相続という言葉は仏教に由来するそうです。
この世のあらゆる事象は,姿かたち(相)は移り変わるけれども,
決して絶えることが無く,永遠に連続するという教えを表しているのだそうです。
この言葉が,現代では,
亡くなった人の財産等を次の世代に受け継ぐことを指す言葉として使われるようになりました。
ところで,皆さんは,何を,誰に引き継ぐか,もうお決めになっているでしょうか。
家族は自分の考えを分かってくれている,そうでなくても遺された者がよしなにしてくれればいい,
そんな風に思って,準備をしていない方が多いのではないでしょうか。
しかし,特に,次のような事情がある方は,貴方の想いとは裏腹に,
貴方の死後に,貴方の愛する人同士が揉める可能性が多分にあります。
そこで,遺言でご自身の想いを伝え,それを実現できるよう手当しておくことをお勧めします。
◆後に残される妻や障害を持つ子の生活が心配である。
遺言で負担付遺贈や福祉型家族信託を設定するとよいでしょう。
◆婚姻の届出をしていない事実婚の夫婦である。
◆老後の世話をしてくれた長男の妻にお礼をしたい
事実婚のパートナーや子の配偶者には相続権がないため,
財産を遺したければ,遺言で遺贈する必要があります。
◆先妻(夫)との間にも子どもがいる。
先妻の子と後妻・後妻との間の子は,
話をすること自体が負担になることがありますので,
遺言で分け方を決めておくとよいでしょう。
◆高齢になってから再婚した。
パートナーが,先妻との間の子等他の法定相続人から
財産狙いの再婚だなどと言われて揉めないよう,
財産の分け方や自分の供養の希望等を明らかにしておきましょう。
◆相続人が全くいない
遺産は,最終的には国のものになります。
特別に縁のあった人に財産を分与する制度もありますが,
その人に手続きの手間・時間・費用をかけさせてしまいます。
お礼をしたい人や援助したい団体等があるなら,遺言で遺贈しましょう。
いずれの場合も,単に財産の分け方を決めるだけでなく,
貴方の想い(遺言の理由)を上手に伝えるのが紛争予防のこつです。
◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 角家 理佳◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2015年9月1号(vol.180)家事チーム・連載想いをつなぐ相続①>
※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。