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【法律相談】中小企業経営の承継の円滑化

 │ 遺言・相続, 燕三条事務所, 弁護士海津諭

Q 中小規模の会社を経営しています。会社を長男に継がせるため、自社についての私の保有株式はすべて長男に相続させたいのですが、気をつけるべきことはありますか。

 
        
「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以下、「円滑化法」といいます。)の第2章が、平成21年3月1日に施行されました。 ここでは、その円滑化法を用いた経営承継について説明いたします。

 
1 民法上の原則-遺留分

  各相続人には、相続財産のうち一定割合について、それを取得する利益が留保されています(これを、「遺留分(いりゅうぶん)」といいます)。この遺留分は、遺言によっても減らすことができません。

 
  そのため、相続財産において自社の株式以外に高額の財産がない場合、遺言によって一人の相続人に株式をすべて相続させようとしても、他の相続人が遺留分を主張して、株式が分散されてしまう危険性があります。(なお、生前に予め株式を一人の相続人に贈与しておいた場合でも、当該株式は相続時に相続財産として扱われるので、結局は同じ問題が起こります。)

 

2 円滑化法による遺留分制度の修正
 
  この問題について円滑化法は、相続人となる者らの事前の合意によって、遺留分を算定するための財産の価額から株式等(株式の他にも、被相続人個人名義の事業用不動産等)を除外することを可能にしました。

 
  これにより、遺留分制度による株式等の分散を防ぎ、一人の相続人を後継者として集中的な経営承継を行うことが可能です。

 

3 要件、必要な手続

  円滑化法の適用対象企業は、一定の規模以下のものに限られます(例えば、製造業では資本金3億円以下または従業員数300人以下)。

 
  また、後継者となる相続人が既に株式を総議決権の50%よりも多く保有している場合は、円滑化法の適用はありません(この場合は、被相続人の保有株式が分散しても後継者による会社経営に影響はないため)。

 
  手続としては、まず、相続人となる者全員が、遺留分の算定基礎財産から株式等の財産を除外する旨を書面によって合意する必要があります。その後、当該合意につき経済産業大臣の確認を受け、さらに家庭裁判所の許可を得る必要があります。 (他にも細かい要件が定められていますが、ここでは割愛させていただきます。)

 

4 その他

 
  円滑化法は、上記の定めの他にも、株式等を遺留分算定基礎財産に算入する場合にその株式の価額を事前の合意時の価額に固定できることや、中小企業信用保険法の特例など、経営承継の円滑化に資するための制度を定めています。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 海津 諭◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2009年6月号(vol.39)>

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