業務で出演した会社のSNS投稿を退職時に消去してもらえるか?(弁護士 中澤 亮一)
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1.SNSの普及と企業における活用
SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)は、スマートフォンの普及と相まって、今では私たちの生活にごく当たり前に存在するものになってきています。
個人だけでなく企業にとっても、SNSを様々な分野で活用することはもはや常識になっており、無視できないものといえるのではないでしょうか。
そんなSNSですが、最近よく目にするのは、その会社に所属する実際の社員が、自社の広告宣伝活動として顔や名前を出してSNS等に出演し、会社のアカウントなどから投稿するというものです。
SNSだけでなく、看板やホームページの記事などでも目にすることが多いように感じます。
この手法は、その会社の実際の従業員が出演して、たとえばショート動画などで会社の業務とは関係ない投稿をする(歌やダンス、ちょっとした芸など)ことで、その会社に親近感がわき、売上にも良い影響があるということなのでしょう。
その投稿が「バズる」ことがあれば、会社の知名度アップも狙えます。
2.退職時のSNS投稿削除トラブル
ただ、出演した社員が退職するとき、その社員としては「退職するのだから、あのとき出演した動画(その他広告)は削除してほしい」と考えることが多いと思います。
一方で会社としては、せっかくバズった動画を消したくないとも考えるでしょう
ここで双方の意見が食い違うと、退職時の大きなトラブルとなりえます。
最近、このようなテーマのニュース記事も目にするようになりましたし、SNS時代特有の問題といえると思います。
では、社員の側から、会社に対して、「退職するのだから投稿を削除してほしい」と請求することは可能なのでしょうか。
3.肖像権でSNS投稿を削除できる?
まず、退職する社員の側からは、自分の「肖像権」を根拠に、削除を請求することができると思われます。
肖像権とは、自らの容貌等を、みだりに(むやみに、勝手に)撮影されたり、公開されたりしない権利のことです。
芸能人やスポーツ選手だけに認められていると勘違いされている方も多いですが、そうではなく一般に広く認められた権利です。
問題となるSNSを投稿する際に、通常、会社はその社員の同意を得たうえで投稿していると思いますが、(とくに取り決めをしていない場合には)退職によってその同意がなくなると考え、肖像権の侵害として削除請求することが考えられるでしょう。
会社がこれに応じなければ、損害賠償の請求も考えられます。
会社側としては、社員がそのように希望している以上、基本的には削除に応じる必要があると思われますが、このような場合の対応も含めて、事前にその社員とよく意思確認を行い、「合意書」のような形で書面に残しておくべきと思います。
もし、退社後もSNS投稿を削除しない扱いにしたいということであれば、出演する社員とよく話し合い、必ず合意書にその旨記載しておくべきでしょう。
4.肖像権トラブルを防ぐための対策を
以上のように、SNSが普及した現代においてはこのような問題やトラブルも避けては通れない世の中になってきているといえそうですが、肖像権の問題はSNSに限らず、上に述べたように看板などの従来型広告でも問題になりえます。
軽視すると大きな問題になりかねませんので、気になる場合は弁護士に相談するとよいと思います。
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