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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

監査法人で無資格者を「公認会計士」と記載(弁護士:今井 慶貴)

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この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

一新総合法律事務所
副理事長/新潟事務所長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:早稲田大学法学部

新潟県弁護士会副会長(平成22年度)、新潟市包括外部監査人(令和2~4年度)を歴任。
主な取扱分野は、企業法務(労務、契約、会社法務、コンプライアンス、事業承継、M&A、債権回収など)、事業再生・倒産、自治体法務です。
現在、東京商工リサーチ新潟県版で「ズバッと法談」を連載中です。

無資格者を「公認会計士」と記載してしまった背景

昨年末に、日本公認会計士協会(以下「会計士協会」)から「公認会計士」の名称記載に関する上場会社を担当するすべての監査事務所を対象とした自己点検結果が公表され、計18事務所で無資格者を「公認会計士」と記載していた事実が発覚したというニュースがありました。

事の発端は、昨年夏頃に複数の大手監査法人の作成した書類に、資格を取得していないにもかかわらず「公認会計士」と記載した事案が公表されたことを受けて、自主規制団体である会計士協会が一斉調査を行ったというものです。

同じ国家資格に基づいて仕事をする身からすると、無資格者を資格者として表示することは「あり得ない」ことであり、しかも、コンプライアンスに厳しいはずの監査法人でそのようなことがあったのは、二重の驚きです。

会計士協会の発表した資料をみると、発生原因として、以下のようなことが挙げられていました。

・公認会計士の名称を使用することの重要性の意識の欠如

・公認会計士登録者と非登録者が混在している職位があり、誤認を生じやすい状況の存在

・資格情報を確認する必要があることの周知不足、確認漏れ

・本人の確認不足

「そんな緩い話なの?」という感じがしますが、どうやら公認会計士の資格取得までの制度に一因があるようです。

 

試験に合格しただけでは公認会計士になれない

公認会計士になるためには、公認会計士試験(短答式試験、論文式試験)に合格しただけでは駄目で、その後、2年以上の業務補助等の期間を経て、一般財団法人会計教育研修機構が実施する実務補習を受けて会計士協会による修了考査に合格して内閣総理大臣の確認を受けて初めて公認会計士となる資格が得られます。

そのうえで、公認会計士名簿に登録し会計士協会に入会する必要があります。

ところが、修了考査に合格しているにもかかわらず、⾧期にわたり公認会計士登録していない人がいるようであり、そのことが今回の問題発生の一因となっていたということです。つまり、「無資格者」といはいっても、「ほとんど資格者」という人が公認会計士を名乗っていたということなのですね。

いずれにせよ、この問題によって監査の有効性に影響はないものの、有価証券報告書で会計士の人数などの訂正が数十件に及んでいるということです。顧客企業の立場からすれば「どうなってんですか?」という感じでしょうか?

今後は、会計士協会の執行部と独立した機関が処分内容を検討するとのことで、成り行きに注目したいところです。

 


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那須サファリパーク飼育員の負傷事故、補償や会社の法的責任は?(弁護士:今井 慶貴)

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弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

一新総合法律事務所
副理事長/新潟事務所長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
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1 はじめに

 

1月5日朝に、​栃木県那須町の「那須サファリパーク」で、飼育員の男女3人がトラにかまれて負傷した事故が発生しました。

栃木県警は1月7日、業務上過失傷害の容疑で施設内の捜索を行ったと報道されています。

このような業務上の事故があった場合、従業員への補償や会社の法的責任はどうなるのでしょうか?

 

2  労災保険による補償

まず、飼育員の方は業務に起因する事故で負傷されたわけですので、​会社の過失の有無にかかわらず、労災保険による補償が受けられます。

​療養(補償)給付と休業(補償)給付のほか、後遺障害が残ってしまった場合の障害(補償)給付などが考えられます。

3 企業の損害賠償責任は?

加えて、会社は飼育員に対して、安全配慮義務違反や他の従業員に対する使用者責任に基づく損害賠償責任(民事責任)を負う可能性もあります。

​報道によると、前日に担当した別の飼育員2人は、トラが獣舎に入ったかどうかや、施錠の状況を「はっきり覚えていない」などと話しているということであり、飼育状況や管理体制に不備があった可能性が指摘されています。

仮に、​会社に責任が認められる場合には、慰謝料や将来の逸失利益についての支払責任が生じ、後遺症の程度にもよりますが、賠償額は相当高額になることもありえます。​

さらに、既に施設内の捜索が行われていますが、捜査の結果次第では、会社や管理責任者において、業務上過失傷害等の刑事責任を負う可能性もあります。

​また、1月5日付で栃木県の動物愛護指導センターが再発防止を求める行政指導をしたということです。

同じ施設で過去にも2度、飼育員が負傷する事故が起きていたということですので、過去の事故を踏まえた会社側の対応がどうであったかが問われるでしょう。

 

​4 おわりに

今回、サファリパークでの事故に即した形で説明しましたが、労災が発生した場合、使用者である会社の責任は広範に及ぶことがわかります。​

なんといっても日頃の予防が第一ですが、万一労災事故が発生してしまった場合には、使用者としては、必要に応じて弁護士とも相談しながら、真摯かつ誠実に対応することが大切です。

 

弁護士:今井慶貴

 

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弁護士コラム「相撲協会「コロナが怖くて休場は無理」でよかったのか?」弁護士:今井慶貴

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新型コロナウィルス第三波による首都圏の緊急事態宣言の中、大相撲初場所が始まりましたが、初日前日に序二段の力士(22歳)がTwitterで引退報告をしたことが話題となっています。

 

元力士によれば、「このコロナの中、 両国まで行き相撲を取るのはさすがに怖いので 休場したい」と親方を通じて相撲協会に打診したものの、協会から「コロナが怖いで休場は無理だと言われたらしく 出るか辞めるかの選択肢しか無く 自分の体が大事なので」引退したとのこと。

 

取材に対して、相撲協会の芝田山広報部長は、「会社にもコロナが怖いから出社したくないって言う人もいるだろう。それをみんなが言っていたら仕事にならない」「それに対応ができないなら、本人が出処進退を考えるしかない」と答えたと報じられています。

 

このニュースに対するネット上の意見は賛否両論ですが、どちらかというと相撲協会に対する批判が強いような印象を受けます。

 

そもそも、場所直前の協会員878人を対象としたPCR検査の結果、4部屋65人の力士が陽性者・濃厚接触者として休場する事態となっていることからして、初場所を観客を入れて開催すること自体、やや無理筋なのかもしれません。

 

さて、私もyoutubeの「貴闘力チャンネル」に元力士が出演しているのを視ましたが、ご本人は心臓の持病により手術をしたこともあるということであり、コロナ感染を怖がる気持ちもわからなくありません。

法律的にみれば、力士と協会との関係は、雇用契約そのものではないとしても、それに類似した契約関係はあるので、協会として力士の健康・安全に配慮すべき注意義務があることは否定できないでしょう。

 

力士についていうと、肥満・持病持ちが多いこと、直接の身体接触を伴う競技であること、部屋による共同生活であることなど感染のリスクは高く、実際、これまでいくつかの部屋でクラスターが発生し、昨年2月には糖尿病の持病のある20代の力士が亡くなられています。

 

もちろん、「それをみんなが言っていたら仕事にならない」というのもよくわかるのですが、どこで折り合いをつけるかと考えた場合に、協会側の対応はこれでよかったのでしょうか。
持病のある力士が、番付が落ちてでも自主的に休場したいというのに、そこまで固い対応はしなくてもよかった気がします。

 

とはいえ、なかなか難しい問題であることは確かです。
皆さんの職場に置き換えてみて、色々と考えてみることも有意義かもしれません。

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

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副理事長/新潟事務所長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:早稲田大学法学部

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高齢運転者事故、自ら逆転有罪判決を求める(弁護士:今井慶貴)

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※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」の引用したものです。

 

今月のテーマ(2020/10/26発行 TSR情報)

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。

気楽に楽しんでいただければ幸いです。

今回のテーマは、高齢運転者事故、自ら逆転有罪判決を求めるです。

 

 

その1.異例の弁護側の逆転有罪主張

高齢運転者による重大事故の発生が社会問題となって久しいです。

最近のニュースでも、池袋での元官僚による母子が亡くなった事故についての第1回公判で、被告人が車の故障による暴走を主張して罪を争うという報道がありました。

 

これと対照的に、前橋市で女子高生2人を死傷させた高齢男性による事故について、一審で無罪判決を受けた控訴審において、弁護側が自ら有罪を主張したという報道もありました。

一審で無罪となった弁護側が控訴審で有罪主張に転じるのは、確かに異例と言えるでしょう。

争点は、高齢男性が薬の副作用で意識障害に陥り、事故に至ったことについて、「予見可能性」があったかどうかということです。

一審判決は薬の副作用の説明を受けた証拠はないとして予見可能性を否定し、検察が控訴をしていました。

控訴審の弁護人は、一審判決後に長男を通じて依頼され、被告人と面会し、有罪を認める意思を確認したということです。

弁護人は公判で、「88歳で余命も長くない。人生の最期を迎えるに当たり、罪を認め、その責任を取り、償いたい」と述べ、閉廷後、記者団に「過去に何度も事故を起こし、予見可能性があった。運転を回避する義務があった。」などと説明したそうです。

 

その2.弁護士倫理との関係

この報道に接して思ったのは、刑事弁護人としての倫理との関係で問題がないのだろうかということです。

 

実際、弁護人に対し、群馬弁護士会から「本人の意思を確認するように」と慎重な対応を求める書面が届いたということです。

 

ここで、有罪主張が被告人本人の真意によるものであれば何が問題なのか?とも思われますが、一審判決が無罪と判断していることは、確定判断ではないものの、「客観的に無罪である(少なくともそう主張しうる)のに弁護人が有罪の主張をしている」との見方もできなくはないでしょう。

参考までに、弁護士倫理の設例で出る「被告人が真犯人の身代わりであることを知った場合の弁護人の対応」としては、①被告人の意思に反しても無罪の主張をする、②辞任する、③情状弁護のみをする、④被告人の意思に従って有罪の主張をする、といった選択肢があるとされています。

 

 

 

<最後に一言。>

 

過失の判断はあくまで法的評価であり、過失の自認により直ちに有罪とはなりません。

今回の弁護人の弁護方針は、社会的存在である被告人のための弁護であったと思います。

それよりも、政治の動きの鈍さに言いたいですね。

 

「高齢者の事故を防ぐ政策に本気で取り組め!」

~新潟事務所長 弁護士 今井慶貴~


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今井慶貴弁護士のコラム「法律書のサブスクサービスが登場」

 │ 新潟事務所, 弁護士今井慶貴, ビジネス, 燕三条事務所, 長岡事務所, 新発田事務所, 上越事務所, 東京事務所, 長野事務所, 高崎事務所

今井慶貴弁護士のコラムです。


サブスクの説明イラスト

6/27の日経電子版で、「法律書もサブスク 新型コロナで需要拡大」という記事が載っていました。

サブスクというのは、”サブスクリプション”の略で、今はやりの「月額いくらいで~し放題」という定額課金サービスのことです。

 

…続きはこちらです。

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