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法務情報

2026/06/23

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バイト先の店長から「口座を処分しとく」と言われたら? 不注意で人生が詰んでしまう「口座売買・譲渡」の恐怖(弁護士:海津 諭)

コラム弁護士海津諭

初めてのアルバイトや上京したての大学生活。

新しい環境に少しずつ慣れてきた頃、信頼しているバイト先の店長から、こんな風に声をかけられたらあなたはどうしますか?


「給与振込の手続きだけど、その銀行だと手数料がかかっちゃうから別の銀行で作り直して。最初に作らせちゃった口座はこっちで処分しとくから」


親切な対応のようにも聞こえますし、「お詫び」として数千円を手渡されたら、疑問を持たずに通帳やキャッシュカードを渡してしまう若い方もいるかもしれません。


しかし、ここで預金口座の「処分」を任せてしまった時点で、人生が「詰んで」しまうおそれがあります。


今回は、SNSでも大きな話題となった「口座売買・譲渡」に潜む法的リスクと、その後に待ち受ける恐ろしい現実を、弁護士の視点から解説いたします。

1 なぜ「処分しとくから」で人生が詰んでしまうのか?

結論から言いますと、他人に預金口座の通帳、キャッシュカード、ネットバンキングのID・パスワードなどを渡す行為は、有償・無償を問わず、「犯罪収益移転防止法違反」という犯罪行為となりえます。


世の中には、預金口座を買い取って、特殊詐欺の振込先口座として使用する犯罪組織があります(特殊詐欺とは、犯人が電話やSNSなどを通じて対面することなく信頼させまたは関係を深めて信用させ、犯人が指定する預金口座への振込その他の方法により、現金などをだまし取る犯罪のことをいいます)。


特殊詐欺を行う犯罪組織は、例えば組織の構成員名義の預金口座を詐欺に使ってしまうと、すぐに警察の捜査の手が届いてしまいます。

そこで、警察の捜査の手を届きにくくするために、全くの他人名義の預金口座を欲しがっています。

このような犯罪組織は、他人名義の預金口座を1口座あたり数万円から数十万円といった金額で買い取って、犯罪に使っています。


冒頭のケースでは、バイト先の店長は犯罪組織の構成員ではないものの、「口座買い取ります 1口座20万円 高額買取り」といった怪しいインターネット広告を見て、「お金を手に入れたい」という軽い気持ちで、「処分しとくから」と従業員に持ちかけたのかもしれません。


これに応じて預金口座を渡してしまうと、その預金口座は最終的に犯罪組織の手元に渡り、以下に記述するような大変なことになってしまいます。

2 口座を他人に渡した人に科せられる「4つのペナルティ」

自分名義の預金口座を他人に渡した人には、逮捕や刑事罰、そして社会生活を送ることが困難になるほどの重大な不利益を受ける可能性があります。

① 刑事罰

預金口座の通帳、キャッシュカード、ネットバンキングのID・パスワードなどを他人に渡した場合、「犯罪収益移転防止法違反」という犯罪が成立することで、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金(またはその両方)が科せられる可能性があります。


さらに、最初から他人に渡す目的で預金口座を開設した場合は、銀行に対する「詐欺罪」となり、10年以下の拘禁刑という重い刑を科せられる可能性があります。

② 全ての預金口座が凍結される

預金口座が犯罪に利用されると、警察の要請によってその預金口座は凍結されます。

それだけではなく、その預金口座の名義情報はいわゆるブラックリスト入りとなり、警察を通じて全ての金融機関に共有されます。

その結果、名義人が保有している他の全ての預金口座も凍結されてしまいます。

③ 新規の口座開設が困難になる

一度、上記のブラックリスト入りとなってしまうと、その人はその後数年間にわたり、どこの金融機関であっても新しく預金口座を作ることができなくなってしまいます。

④ 巨額の損害賠償請求を受けるリスク

預金口座が詐欺に使われると、その口座の名義人は、民事上も「詐欺行為をした人の仲間」(共同不法行為者といいます。)として扱われ、損害賠償請求の民事訴訟を起こされるリスクがあります。

3 金融機関の口座がないという重大な不利益

現代の日本において、自分名義の銀行口座を一つも持てないということは、社会生活を送る上で以下のような重大な不利益があります。

給与の振込先の問題:
就職をしたり、アルバイトを始めたりする際に、自分名義の預金口座を給与の振込先として届け出ることができません。

日常生活のインフラの問題:
スマホの料金、アパートの家賃、水道光熱費などの支払いを、自分名義の預金口座からの引き落としとすることができません。

ローンが組めない問題:預金口座がないと、住宅ローンや自動車ローンを組むこともできません。

4 特に若い方が気を付けるべきことと、親が子に教えるべきこと

今回のバイト先のケースのように、身近な人が、お金を儲けたいという軽い気持ちで預金口座を手に入れようとしてくるケースがありえます。


特に、お金の仕組みや法律に疎い高校生、親元を離れたばかりの大学生、就職したばかりの社会人などは、身近な人から頼まれて、事の重大性に気付かずに預金口座を渡しそうになるかもしれません。


上記のような若い方は、ぜひ以下の事柄に気を付けてください。

また、若いお子様をもつ親御様も、ぜひお子様に向けて以下の事柄をよく教えておいてください。

  • 「あなたの口座を高額で買い取ります」という広告を見ても、絶対に口座を売らない。
  • 自分の預金口座の通帳、キャッシュカード、ネットバンキングのIDやパスワードは、絶対に他人に渡したり教えたりしない。
  • 怪しい事を提案されたら、その場ですぐに返事をせず、必ず親や信頼できる大人に相談する。

5 もし、すでに口座を渡してしまったら?

万が一、知らずに預金口座を渡してしまった場合は、すぐに以下の行動をとってください。

(1)金融機関へ連絡し、即座に預金口座の利用停止や解約を行う。
(2)警察署に行って事情を詳しく話す。
(3)今後の対応について弁護士に相談する。

悪用されて被害が出る前に対処できれば、最悪の事態(口座の全凍結や逮捕)を回避できる可能性が残されています。


当事務所でもご相談をお受けすることができますので、「もしかして…」と不安に思うことがあれば、一人で悩まずに、まずは一度お気軽にご相談ください。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 海津 諭

海津 諭
(かいづ さとる)

一新総合法律事務所 
理事/燕三条事務所長/弁護士

出身地:新潟県燕市
出身大学:京都大学法科大学院修了
新潟県公害審査委員、新潟県景観審議会委員を務めています。主な取扱分野は、相続全般(遺言書作成、遺産分割、相続放棄、遺留分請求など)です。そのほか、離婚、金銭問題、その他トラブルなど幅広い分野に精通しています。
相続・生前対策セミナーの講師を多数務めた実績があります。

 

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