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【法律相談】男女雇用機会均等法に対する配慮

 │ 労働, 弁護士中川正一, 燕三条事務所

Q 我が社は市内から通勤困難な支社があります。幹部候補社員には会社全体を把握してもらう必要があると考えますので,その採用にあたり単身赴任が比較的容易な男性に限定したいところです。
 しかし,このような採用方法は,いわゆる男女雇用機会均等法に抵触すると判断し,中立的に「労働者の住居の移転を伴う転勤に応じることができること」を条件として採用決定しました。
 にもかかわらず,当該条件を満たさずに幹部候補社員として採用されなかった女性から苦情を申し立てられました。
 我が社の採用条件に問題はありますか。

  
A たしかに,貴社の幹部候補社員に対する期待からすれば,住居の移転を伴う転勤に応じてくれることを採用の条件にしたい,という希望があることは自然です。

 
 またいわゆる男女雇用均等法の存在に気づいたことからも人事に関心があり,非難される理由はないようにも思えます。

 
 しかし,同法は,間接差別も禁止しています。すなわち,直接的には性別を理由に差別していなくても,実質的に検討すれば性別を根拠にしたに等しい場合も禁止されています。
 
 例えば,貴社が認めているように男性の方が比較的転勤が容易であるという社会背景があることを加味して実質的に検討すれば,貴社が設けた条件は実質的には男女で区別するに等しい,といわれてしまうことになります。

 
 ですから,貴社の当該採用条件は変更するべきでしょう。

 
 このような間接差別の規制は,一見性別に中立的な基準を設けていても,実質的な検討をすれば違法になってしまう危険があるにもかかわらず,どのような基準が間接差別として禁止されるのか分かりにくいといえるでしょう。

 
 そこで,同法の施行規則では,間接差別として禁止される場合を例示しています

 
 例えば,採用において「労働者の身長,体重又は体力」を条件とする場合,また昇進の場面において「転勤の経験」を条件とすること等が禁止事例として挙がっています。前者は,身体的特徴によって男性の標準体型・体力以上のものを条件とすることで,容易に女性を排除することができますから,実質的な性差別といわれてしまうことは分かりやすいでしょう。また後者については,貴社が質問された採用場面での問題が昇進の場面でも当てはまることを意味しています。

 
 前記した施行規則には間接差別として3例しか挙げられていませんが,それ以外の場合においても合理的理由がなく実質的には性差別になっていると評価されてしまう場合には違法と言われる危険がありますので,人事計画は,このような間接差別に該当するか否かということも実質的に検討して行う必要があるといえるでしょう。

 
 また,いわゆる男女雇用機会均等法は,募集・採用・配置・昇進だけでなく,教育訓練・福利厚生・定年・退職・解雇等の雇用のあらゆる場面において,性差別を禁止しています。

 
 ですから例えば,退職勧奨や整理解雇の対象労働者の選別を性別に中立的な基準を設けるだけでなく,実質的にも間接差別といわれないような検討が事前に必要になりますので,ご注意下さい。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 中川 正一◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2009年8 月号(vol.41)>

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