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労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針が公表されました(弁護士:古島 実)

 │ 燕三条事務所, 弁護士古島実, 企業・団体, コラム

労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針が公表されました

[引用元]内閣府ホームページ:https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je22/h06_hz020105.html

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我が国の賃金は、他の先進国に比べ長期にわたって上昇していません。

 

このような状況を改善するために、国から「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」が令和5年11月29日に内閣官房、公正取引委員会から公表されました。

また、毎年3月9月は価格交渉推進月間とされています。概要は次の通りです。

 

1 労務費の転嫁に関する事業者の発注者・受注者の双方の立場からの行動指針。

2 労務費の適切な転嫁のため、発注者及び受注者がこの行動指針に沿った行為を行うことが必要とされています。

3 本指針に記載の12の行動指針に沿わないような行為をすることにより、公正な競争を阻害するおそれがある場合には、公正取引委員会において独占禁止法及び下請代金法に基づき厳正に対処することが明記されています。

4  他方で、記載された発注者としての行動を全て適切に行っている場合、通常は独占禁止法及び下請代金法上の問題が生じない旨を明記しています。

 

具体的な行動指針を示し、指針に沿わない行為が公正な競争を阻害する恐れがあるときは、公正取引委員会が厳正に対処するというのが重要なポイントです。

 

12の行動指針の概要は次のとおりです。各行動指針の詳細は後に掲載します。

行動指針を活用して、労務費の適切な転嫁がなされることが期待されます。

 

1 発注者として採るべき行動/求められる行動

行動①本社(経営トップ)の関与

行動②発注者側からの定期的な協議の実施

行動③説明・資料を求める場合は公表資料とすること

行動④サプライチェーン全体での適切な価格転嫁を行うこと

行動⑤要請があれば協議のテーブルにつくこと

行動⑥必要に応じ考え方を提案すること

2 受注者として採るべき行動/求められる行動

行動①相談窓口の活用

行動②根拠とする資料

行動③値上げ要請のタイミング

行動④発注者から価格を提示されるのを待たずに自ら希望する額を提示

3 発注者・受注者の双方が採るべき行動/求められる行動

行動①定期的なコミュニケーション定期的にコミュニケーションをとること。

行動②交渉記録の作成、発注者と受注者の双方での保管価格交渉の記録を作成し、発注者と受注者と双方で保管すること。

 

国も解説動画を多数作成しています。参考にしてください。

__________

【価格交渉推進月間について】

経済産業省 中小企業庁:適正取引支援サイト
https://tekitorisupport.go.jp/topics/gekkan/

 

【労務費の転嫁について】

政府広報オンライン:「賃上げのための価格転嫁」

https://www.gov-online.go.jp/article/202402/tv-5074.html

12の行動指針の詳細

 

1 発注者として採るべき行動/求められる行動

行動①本社(経営トップ)の関与

①労務費の上昇分について取引価格への転嫁を受け入れる取組方針を具体的に経営トップまで上げて決定すること、②経営トップが同方針又はその要旨などを書面等の形に残る方法で社内外に示すこと、③その後の取組状況を定期的に経営トップに報告し、必要に応じ、経営トップが更なる対応方針を示すこと。

 

行動②発注者側からの定期的な協議の実施

受注者から労務費の上昇分に係る取引価格の引上げを求められていなくても、業界の慣行に応じて1年に1回や半年に1回など 定期的に労務費の転嫁について発注者から協議の場を設けること。

特に長年価格が据え置かれてきた取引や、スポット取引と称して長年同じ価格で更新されているような取引においては協議が必要であることに留意が必要である。

協議することなく長年価格を据え置くことや、スポット取引とはいえないにもかかわらずスポット取引であることを理由に協議することなく価格を据え置くことは、独占禁止法上の優越的地位の濫用又は下請代金法上の買いたたきとして問題となるおそれがある。

 

行動③ 説明・資料を求める場合は公表資料とすること

労務費上昇の理由の説明や根拠資料の提出を受注者に求める場合は、公表資料(最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率など)に基づくものとし、受注者が公表資料を用いて提示して希望する価格については、これを合理的な根拠のあるものとして尊重すること。

 

行動④サプライチェーン全体での適切な価格転嫁を行うこと

労務費をはじめとする価格転嫁に係る交渉においては、サプライチェーン全体での適切な価格転嫁による適正な価格設定を行うため、 直接の取引先である受注者がその先の取引先との取引価格を適正化すべき立場にいることを常に意識して、そのことを受注者からの要請額の妥当性の判断に反映させること。

 

行動⑤要請があれば協議のテーブルにつくこと

受注者から労務費の上昇を理由に取引価格の引上げを求められた場合には、協議のテーブルにつくこと。

労務費の転嫁を求められたことを理由として、取引を停止するなど不利益な取扱いをしないこと。

 

行動⑥必要に応じ考え方を提案すること

受注者からの申入れの巧拙にかかわらず受注者と協議を行い、必要に応じ労務費上昇分の価格転嫁に係る考え方を提案すること。

 

2 受注者として採るべき行動/求められる行動

行動①相談窓口の活用

労務費上昇分の価格転嫁の交渉の仕方について、国・地方公共団体の相談窓口、中小企業の支援機関(全国の商工会議所・商工会等)の相談窓口などに相談するなどして積極的に情報を収集して交渉に臨むこと。

 

行動②根拠とする資料

発注者との価格交渉において使用する根拠資料としては、最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率などの公表資料を用いること。

 

行動③値上げ要請のタイミング

労務費上昇分の価格転嫁の交渉は、業界の慣行に応じて1年に1回や半年に1回などの定期的に行われる発注者との価格交渉のタイミング、業界の定期的な価格交渉の時期など受注者が価格交渉を申し出やすいタイミング、発注者の業務の繁忙期など受注者の交渉力が比較的優位なタイミングなどの機会を活用して行うこと。

 

行動④発注者から価格を提示されるのを待たずに自ら希望する額を提示

発注者から価格を提示されるのを待たずに受注者側からも希望する価格を発注者に提示すること。

発注者に提示する価格の設定においては、自社の労務費だけでなく、自社の発注先やその先の取引先における労務費も考慮すること。

 

3 発注者・受注者の双方が採るべき行動/求められる行動

行動①定期的なコミュニケーション定期的にコミュニケーションをとること。

 

行動②交渉記録の作成、発注者と受注者の双方での保管価格交渉の記録を作成し、発注者と受注者と双方で保管すること。

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 古島 実

古島 実
(こじま みのる)

一新総合法律事務所
監事/弁護士

出身地:新潟県燕市
出身大学:一橋大学法学部卒業(憲法専攻)

新潟県弁護士会副会長(平成19年度)などを務める。主な取扱分野は交通事故、相続、企業法務問題(労務・労働事件(企業側)、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など)。
保険代理店向け交通事故対応セミナーや、三条商工会議所主催の弁護士セミナー等で講師を務めた実績があります。


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