定額残業代の合意を有効と判断した事例 ~東京高裁平成31年3月28日判決~
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事案の概要
当事者
原告となったXは、平成24年8月より、Y社(結 婚式場を運営する株式会社)において、正社員として雇用され、ウエディングプランナーに従事していた。
Xは、プランナーとして、顧客(新郎新婦)の担当者として、担当する結婚式のある日に会場で式に立ち会ったり、担当する結婚式のない日に事務所で準備等をしたりしていた。
Xの雇用契約書の内容
<月額賃金>
・基本給・・・15万円
・職能手当・・・9万4,000円
・通勤手当・・・6,000円
<割増賃金>
職能手当は、時間外割増、深夜割増、休日出勤割増として予め支給する手当です。
法定割増の計算によって支給額を超え差額が発生する場合は、法令の定めるところにより差額を別途支給する。
給与規程の内容
【職能給】
16条 職能給とは、社員個人の職務遂行能力を考慮して加算される時間外割増、休日割増、深夜割増として支給する手当である。
【定額残業制導入の趣旨】(19条)
職能給は時間外割増、休日割増もしくは深夜割増の前払いとして支給する手当である。
Xの請求内容
Xは、雇用契約書の記載やY社給与規程の定めによれば、職能手当が毎月何時間分の残業手当に相当するか不明であり明確性がないことを理由として、XとY社における定額残業代の合意は無効であると主張した。
その上で、Xは、残業代の計算に当たり、基礎賃金(月額)は、基本給(15万円)と職能手当(9万 4,000円)の合計24万4,000円であるとして計算した未払い残業代を請求した。