盗品を買い取った者の法的責任(弁護士 薄田真司)
1040万円の純金製茶わんが盗まれ、売却される
4月11日、東京の日本橋高島屋で開催されていた展示販売会「大黄金展」の会場から純金製の茶わんが盗まれました。
報道によると、その茶碗は、販売価格1040万6000円、直径約11.6センチ、高さ約6.5センチ、重さ約380グラムの純金製でした。
茶碗は、透明のプラスチックケースをかぶせた状態で展示されており、ケースは施錠されておらず、警報器もなかったとのことです。
4月15日になり、盗まれた茶碗が台東区の買取店で見つかりました。
被疑者は、「借金があった」と警察の取り調べで話しており、盗んだその日に江東区の買い取り店に約180万円で売却したようです。
その後、江東区の買取店から台東区の買取店へ480万円で転売されたとのことですが、茶碗の底面の裏の刻印や重量などが一致したことから同一のものと判断されたようです。
被疑者から買い取った江東区の買取店やそこから購入した台東区の買取店は、盗品であるとは知らなかった、と説明しているようです。
4月11日の午後2時以降、新聞やテレビでこの窃盗事件が広く速報されたようですので、買取店はこれらの速報を見ていなかった、ということになるのでしょうか。
販売価格1040万6000円であった純金茶碗を180万円で購入したという買取の状況や経緯も気になるところです。
これらの点は今後の捜査状況を注視するとして、仮に、盗品であることを知ったうえで茶碗を買い取った場合、どのような法的責任が生じるのでしょうか。
盗品と知ったうえで買い取った場合どうなる?
刑法第256条第2項は、盗品等有償譲受罪として、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金を科す旨を規定しています。
刑法第235条の定める窃盗罪の規定が10年以下の懲役又は50万円以下の罰金を定めていますから、盗品等有償譲受罪は窃盗罪と同等の重い罪とされています。
したがって、仮に各買取店が茶碗が盗品であることを知って購入していたとすれば、このような重い刑罰が科される可能性があります。
また、古物営業法第20条は、
古物商が買い受けたものが盗品であつた場合、盗難から1年の間は、そのことを知らずに古物商が譲り受けた場合であっても、被害者は、その古物商に対し、盗品を無償で返却することを求めることができる
と定めています。
今回盗難にあった茶碗の所有者は、高島屋なのか作成者の方なのかは、事実経過が判然としていませんが、台東区の買取店は、被害者に対して無償で茶碗を返却しなければなりません。
そうすると、台東区の買取店は、茶碗を購入する際に代金として支払った480万円を売主である買取店から取り戻すことができるかが気になりますが、この点は民法上の問題であり、売買契約を解除し、支払った代金を返金するよう請求していくこととなるでしょう。
被疑者から買い取った江東区の買取店からしたら、代金として受領した480万円を返金するのは大きな損失となります。
被疑者が所持していた130万円の現金は国に没取(ぼっしゅ)される可能性があるため、買取店から被疑者に代金として支払った180万円を容易に取り戻すことができないと思われるからです。
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