2026/03/24
法務情報
公正証書がデジタル化されます(弁護士:中澤 亮一)

1 公正証書のデジタル化
遺言や離婚協議書といった書面を作成する際に、公正証書の形で作成すると有用であるということは、このメールマガジンや当事務所の各種記事でご存じの方も多いのではないかと思います。
ただ、公正証書を作成する際には原則として公証役場に行って手続きを行う必要があり、たとえば病気療養中の方などにとっては困難となっていた面もありました。
この点、このたび(令和5年法律第53号の一部として)公証人法が改正され、公正証書作成手続の一部がデジタル化され、一定の要件を満たせばオンラインによる作成も可能となりました。
すでに令和7年10月1日から運用が始まっておりますが、今回はその概要をご紹介しようと思います。
2 公正証書の電子化
これまで公正証書の原本は紙で作成され、その原本そのものが公証役場で保管されていましたが、今回の改正によってこれが大きく変わり、原則として電子データ(PDFファイル)で作成及び保管されることになりました。
これに伴って、従来は公正証書の作成にあたって嘱託人(遺言を作成する本人など)や証人は紙に署名押印していたところ、紙ではなくタッチパネルやペンタブレットを用いて電子サインを行うこととなりました。
実際に私も、ご依頼をいただいた件の関係で先日公正証書を作成する機会があったのですが、タッチペンでサインする方式に変わっており少し驚きました。
公証人は、電子サインに加えて電子署名を行い、これによって改ざん等を防ぐことができます。
また、これまで公正証書の正本や謄本も紙で受け取っていましたが、電子ファイルでの交付も可能になりました。
もっとも、以前のように紙で受け取ることも可能ですので、利用者にとっては選択肢が広がったことになります。
3 リモートによる作成が可能に
上記のように、これまで公正証書の作成にあたっては、原則として公証役場に足を運ぶ必要があり、離婚協議書などの場合には、代理人を就けていなければ相手方と対面して作成する必要もあり、負担に感じる場面もありました。
しかし、今回の改正で、web会議システムを利用したリモート方式での作成も可能となりました。
その方式も、各自が自己のパソコンから参加する方法や、列席者の一部は公証役場に赴き公証人のパソコンを使用して参加する方法など、複数用意されています。
これは手続の利便性という意味で大きな改善点と思います。
ただし、リモートによる作成には条件があり、常に利用できるわけではありません。
まず、嘱託人等の一方の申出と他方(全員)の同意があることが前提のうえで、公証人がリモート方式での作成について「相当」と認めなければなりません。
たとえば、本人確認や意思確認が難しい場合には相当とされないケースもあります。
また、公正証書の種別によってはリモート作成が認められていないものもあるので確認が必要です。
さらに、利用者側の機材が揃っていることも必要です。
OSやブラウザなどの要件を満たしたパソコン(スマートフォンやタブレットは不可とされています)、webカメラ、マイク・スピーカーに加え、電子サインするためのタッチディスプレイもしくはペンタブレット等が必要です。
URLを受信するためのメールアドレスも必要となります。
4 おわりに
公正証書作成のデジタル化によって、自宅などから公正証書の作成が可能になることは大きなメリットであるといえます。
また、従前の公正証書作成の場面では、そもそも公証人と当事者全員の日程調整すら大変なこともあり、リモート化によってそれも一定程度容易になるのではないかと期待されるところです。
一方で、とくに機材の準備については、署名用のタッチディスプレイやタッチペンを持っている家庭は多くはないと思われるため、課題が残ると思います。
もっと詳しく知りたい方は、日本公証人連合会や法務省のウェブサイトをご確認ください。
(参考サイト)
日本公証人連合会「Web会議を利用した公正証書の作成の流れについて」
法務省「公正証書の作成に係る一連の手続のデジタル化について」
【ご注意】
◆記事の内容については、執筆当時の法令及び情報に基づく一般論であり、個別具体的な事情によっては、異なる結論になる可能性もございます。ご相談や法律的な判断については、個別に相談ください。
◆当事務所は、本サイト上で提供している情報に関していかなる保証もするものではありません。本サイトの利用によって何らかの損害が発生した場合でも、当事務所は一切の責任を負いません。
◆本サイト上に記載されている情報やURLは予告なしに変更、削除することがあります。情報の変更および削除によって何らかの損害が発生したとしても、当事務所は一切責任を負いません。
カテゴリー
月間アーカイブ
- 2026年3月(2)
- 2026年1月(2)
- 2025年12月(1)
- 2025年11月(2)
- 2025年10月(1)
- 2025年9月(2)
- 2025年8月(2)
- 2025年7月(2)
- 2025年6月(3)
- 2025年5月(1)
- 2025年4月(2)
- 2025年3月(1)
- 2025年2月(2)
- 2025年1月(2)
- 2024年12月(2)
- 2024年11月(2)
- 2024年10月(1)
- 2024年9月(1)
- 2024年8月(1)
- 2024年7月(2)
- 2024年6月(2)
- 2024年5月(2)
- 2024年4月(1)
- 2024年3月(2)
- 2024年2月(2)
- 2024年1月(1)
- 2023年12月(1)
- 2023年10月(2)
- 2023年9月(2)
- 2023年8月(2)
- 2023年7月(2)
- 2023年5月(1)
- 2023年4月(2)
- 2023年3月(2)
- 2023年2月(2)
- 2023年1月(2)
- 2022年12月(3)
- 2022年11月(2)
- 2022年10月(1)
- 2022年9月(1)
- 2022年8月(2)
- 2022年7月(2)
- 2022年6月(1)
- 2022年5月(1)
- 2022年4月(1)
- 2022年3月(2)
- 2022年2月(1)
- 2022年1月(1)
- 2021年12月(1)
- 2021年11月(1)
- 2021年10月(2)
- 2021年9月(2)
- 2021年6月(1)
- 2021年4月(2)
- 2021年3月(1)
- 2021年1月(3)
- 2020年12月(3)
- 2020年11月(10)
- 2020年10月(5)
- 2020年9月(7)
- 2020年8月(4)
- 2020年7月(3)
- 2020年6月(3)
- 2020年5月(11)
- 2020年4月(5)
- 2020年3月(2)
- 2019年12月(1)
- 2019年9月(1)
- 2019年7月(2)
- 2019年6月(3)
- 2019年5月(2)
- 2019年4月(1)
- 2019年3月(3)
- 2019年2月(2)
- 2018年12月(1)
- 2018年10月(2)
- 2018年9月(1)
- 2018年7月(1)
- 2018年6月(1)
- 2018年5月(1)
- 2018年4月(1)
- 2018年3月(1)
- 2017年12月(1)
- 2017年11月(2)
- 2017年5月(1)
- 2017年3月(1)
- 2017年2月(2)
- 2016年12月(5)
- 2016年8月(2)
- 2016年7月(3)
- 2016年5月(1)
- 2016年4月(2)
- 2016年3月(4)
- 2016年2月(3)
- 2016年1月(1)
- 2015年11月(1)
- 2015年9月(1)
- 2015年8月(1)
- 2015年7月(1)
- 2015年6月(1)
- 2015年4月(1)
- 2015年3月(2)
- 2015年1月(3)
- 2014年9月(6)
- 2014年8月(3)
- 2014年6月(3)
- 2014年5月(3)
- 2014年4月(2)
- 2014年2月(2)
- 2014年1月(2)
- 2013年12月(5)
- 2013年11月(1)
- 2013年10月(5)
- 2013年9月(5)
- 2013年8月(2)
- 2013年7月(2)
- 2013年6月(3)
- 2013年5月(2)
- 2013年4月(2)
- 2013年3月(2)
- 2013年2月(2)
- 2013年1月(1)
- 2012年12月(2)
- 2012年11月(2)
- 2012年10月(1)
- 2012年9月(2)
- 2012年8月(2)
- 2012年7月(2)
- 2012年6月(2)
- 2012年5月(1)
- 2012年4月(2)
- 2012年2月(2)
- 2012年1月(3)
- 2011年12月(2)
- 2011年11月(3)
- 2011年10月(3)
- 2011年9月(8)
- 2011年8月(10)
- 2011年7月(8)
- 2011年6月(8)
- 2011年5月(10)
- 2011年4月(9)
- 2011年3月(9)

