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法務情報

2026/05/21

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カスタマーハラスメント対策の義務化(弁護士:細野 希)

コラム弁護士細野希新潟事務所

労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)の一部が改正されて、令和8年10月1日から職場におけるカスタマーハラスメント対策が義務化されることになりました。

1.カスタマーハラスメントとは

職場における「カスタマーハラスメント」とは、次の①~③の要素を満たすものをいいます。

①顧客等の言動であって、
②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるもの


①の顧客等とは、顧客、取引の相手方、施設の利用者、その他当該事業主の行う業務に関係を有する者をいいます。

例えば、事業主が販売する商品の購入やサービスの利用する者、事業主が行う事業に関する内容等に関する問い合わせをする者、企業間での契約締結に向けた交渉を行う際の担当者、施設・サービスの利用者及びその家族、施設の近隣住民などです。


②の社会通念上許容される範囲を超えた言動とは、社会通念に照らし、当該顧客等の言動の内容が契約内容からして相当性を欠くもの、または手段や態様が相当でないものを指します。


政府広報オンラインは、次のような言動をカスタマーハラスメントの例として挙げています。

⒈ そもそも要求に理由がない又は商品・サービス等と全く関係のない要求
 例)性的な要求、労働者のプライバシーに関わる要求をすること

⒉ 契約等により想定しているサービスを著しく超える要求
 例)契約内容を著しく超えたサービスの提供を要求すること

3.対応が著しく困難又は対応が不可能な要求
 例)契約金額の著しい減額を要求すること

⒋ 不当な損害賠償要求
 例)商品やサービス等の内容と無関係である不当な損害賠償要求をすること

⒌ 身体的な攻撃(暴行、傷害等)
 例)殴る、蹴る、叩く等の暴行を行うこと

⒍ 精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要等)
 例)労働者の人格を否定するような言動をすること

⒎ 威圧的な言動
 例)大きな声をあげて労働者や周囲を威圧すること

⒏ 継続的、執拗な言動
 例)同様の質問を執拗に繰り返すこと

⒐ 拘束的な言動(不退去、居直り、監禁)
 例)長時間に渡る居座りや電話で労働者を拘束すること

【出典】政府広報オンライン|カスハラとは?法改正により義務化されるカスハラ対策の内容やカスハラ加害者とならないためのポイントをご紹介


③の労働者の就業環境が害されるとは、当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることをいいます。


改正法は、上記①~③の全ての要素を満たすものをカスタマーハラスメントと定義して、それらを対応する対策を事業主に求めています。

2. カスタマーハラスメントの防止のために講ずべき措置

事業主は、以下の措置を必ず講じなければなりません。

【事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発】
①カスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発する。
②カスタマーハラスメントの内容及びあらかじめ定めた対処の内容を労働者に周知する。
 
【相談体制の整備】
③相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する。
④相談窓口担当者が、適切に対応できるようにする。
 
【事後の迅速かつ適切な対応】
⑤事実関係を迅速かつ正確に確認する。
⑥被害者に対する配慮のための措置を適切に行う。
⑦再発防止に向けた措置を講ずる。
 
【対応の実効性を確保するために必要なカスタマーハラスメントの抑止のための措置】
⑧特に悪質と考えられるカスタマーハラスメントへの対処の方針をあらかじめ定め、労働者に周知し、当該対処を行うことができる体制を整備する。
 
【その他併せて講ずべき措置】
⑨相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知する。
⑩相談したこと等を理由として不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発する。

カスタマーハラスメント対策といっても、講ずべき措置は、企業の業種や業態などによって、異なると思います。

顧客が企業に対し、商品やサービス等に不満を訴えること自体が禁止されているわけではないので、事業主と労働者が、カスタマーハラスメントとはどのような顧客の言動を指すのかの認識を共有し、それに対応する対策が求められることになります。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 細野 希

細野 希
(ほその のぞみ)

一新総合法律事務所 理事/ 弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:新潟大学法科大学院修了

日本弁護士連合会国選弁護本部委員(2022年6月~2024年5月)、新潟県都市計画審議会委員(2021年~)などを務めています。主な取扱分野は、交通事故と離婚。そのほか、金銭問題、相続等の家事事件や企業法務など幅広い分野に対応しています。
数多くの企業でハラスメント研修、相続関連セミナーの外部講師を務めた実績があります。

 

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