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【法律相談】団体生命と遺族

 │ 弁護士今井誠, 新潟事務所, 労働

Q 当社では、幹部職員を対象に団体生命に加入しています。昨年、営業課長がガンで死亡したため、保険会社に死亡保険金2000万円の請求をしたところ、被保険者の遺族(法定相続人全員)の同意書を一緒に提出するよう求められました。
 そこで、遺族にその旨連絡したところ、保険金の全部を遺族に支払うよう要求されてしまいました。遺族の要求に応じなければなりませんか。

 

A 取締役や幹部職員を被保険者とする団体生命に加入している会社は、かなり多いようです。

 
 以前(平成4年以前)は、会社が被保険者の確認を得ないで保険に加入することも多く、そのため、保険金が支払われる段階で遺族との間にトラブルが多発していました。

 
 そのため、当時の監督官庁である大蔵省は生命保険各社に対し、団体定期保険の本来の趣旨に沿った運用を行うことを徹底するよう行政指導を行ってきました。

 
 これを受けて、生命保険各社は、平成4年3月以降、保険契約者に対し、福利厚生制度と関連性を明らかにさせるとともに、保険金の全部又は一部を社内規定に基づいて遺族に支払うことを確約させるなどの取扱いを行ってきました。

 
 こうした保険各社の取扱いの変更によって平成4年以降の契約には、被保険者の同意を前提として、加入契約の際、保険金の使途が相当程度限定されることになりました。

 
 大きな会社では、労働組合との協定で使途を退職金や弔慰金や葬祭費用などに限定するところも出てきました。

 
 しかし、従業員が20~30人程度の会社の場合には、退職金規定や弔慰金規定も定められていないところがあり、平成4年以降も、取締役や従業員に対して死亡保険金が全く支払われなかったり、弔慰金などの名目で保険金のごく一部(1~2割)しか支払われないというケースが続出し、そのため、遺族が裁判に訴え出るということが続いてきました。

 
 従業員の退職金については、ほとんどの会社に退職金規定があり、実務上はその規定に沿って受領した保険金の中から退職金が支払われてきていました。

 
 しかし、取締役の場合には、退職慰労金や弔慰金についての規定が定められていない会社があり、また規定はあっても取締役会決議や株主総会決議がなされないケースもあり、下級審の判断も分かれていました。

 
 こうした中で、平成18年4月11日に最高裁判所の判決が出されました。このケースでは、6000万円を超える高額の保険金を受領しながら、従業員の遺族には約1000万円しか支払われなかったケースについて、ほぼ半額の3000万円の支払を命じました。遺族からは保険金の全額に相当する金員の支払が求められていたものです。

 
 質問のケースについては、退職金規定の有無や退職金の支払基準、勤務実績や他の従業員への支給額との対比、受領した保険金の額などを総合して判断することになると思われますが、半額前後が相当な額と思われます。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 今井 誠◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2008年3月号(vol.25)>

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