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社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

【法律相談】自宅を確保する方法がありますか?

 │ 弁護士今井誠, 新潟事務所, 遺言・相続

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 誠

今井 誠
(いまい まこと)

一新総合法律事務所 
非常勤顧問/弁護士

出身地:新潟県三条市(旧南蒲原郡下田村)
出身大学:中央大学法学部(労働法専攻)

新潟県弁護士会会長、新潟市包括外部監査人、新潟市法令遵守審査会委員長、新潟商工会議会議所常議員、NPOお笑い事業団ニイガタ理事長などを歴任し、現在も北方文化博物館理事、外部監査役、新潟経済同友会幹事などの役職を務めています。

顧問先の各種相談をはじめ、高齢者の後見・遺言・相続などの相談や案件処理に関与しています。
最近は「お笑い法律相談」「オモシロ事件百科」「お笑い人生相談」など肩の凝らない講話を中心に各種企業や団体からの依頼に応じています。

相談者(以下「相」)
 私の夫は、農業のかたわら食品加工業を営んでいましたが、資金繰りに行き詰まり、遺書のようなもの残して自殺してしまいました。
残されたメモ(遺書のようなもの)によると、金融機関をはじめ取引先や友人・知人などから3000万円を超える多額の借金があるようです。生命保険が1000万円ほど出るようですが、自宅のほか工場と農地には、金融機関の担保が設定されています。
相続人は私と子供3人(1人は未成年者)です。私としては、子供たちのため何とか自宅だけでも確保したいのですが、良い方法があったら教えてください。


弁護士(以下「弁」)
まず、遺書のようなものを確認しましょう。「遺言書」としての要件を満たしているか確認する必要があります。
それから、負債の内容を確認するため自宅(事務所)にある経理関係資料を持参してください。
所有する土地建物の内容を知るため、市役所から「名寄せ台帳」の写しを貰ってきてください。
相続人全員の戸籍謄本と住民票も貰ってきて下さい。
生命保険証書も受取人が誰か確認する必要があるので持ってきて下さい。
**********************************************
相:指示された関係書類を持ってきました。この遺書のようなものは「遺言書」として効力がありますか。


弁:方式と内容から正式な「遺言書」と見ることはできません。
主な借入先と金額が書かれているほか、事業を拡大して失敗したこと、家族や周りの関係者にこれ以上迷惑をかけたくないこと、家族のために自宅だけでも残してやりたいこと、そのために妻を受取人とする生命保険をかけてあること、などが便箋に走り書きされていますが、本人の名前もなく、印鑑も押してありませんので、法律的に有効な遺言書とはいえないものです。

 
相:生命保険は私が受取人になっているのでしょうか。もし、私が受取人の場合、保険金を私が自由に使えるのでしょうか。


:受取人は、あなたになっています。あなたがこの保険金をどのように使うかは原則的に自由です
迷惑をかけた関係者に償いをするために使うことも、自宅の確保するために使うことも、これからの家族の生活費に使うことも可能です。

 

相:自宅を確保するには、借金や保証債務を完済しないと無理なのではないですか。


弁:必ずしもそうではありません。
相続放棄の手続きをすれば、相続人は被相続人の負債を返済する義務がなくなります。
もし、夫名義の資産を売却し、生命保険金を有効に使うことによって自宅が確保されるような場合には、子供3人は相続放棄をして、奥さんだけが単独で相続してその後の手続きを進めることも考えられます。
資産を処分しても残債が2000万円を超えるような場合には、相続人全員が相続放棄した上で、奥さんが競売に参加するなどして自宅だけを確保する(1000万円の保険金を使って)ことも可能性があります。

相:相続するか相続放棄するかは、いつごろまでに決める必要がありますか。


弁:原則として被相続人の死亡後3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申立(申述)をしなければなりませんが、債務の調査に時間を要する場合や特別の事情のある場合には、3ヶ月の期間を相当程度(1~3ヶ月程度)延ばしてもらうこともできます

相:未成年者の相続放棄は親権者の私で出来るのでしょうか。
弁:それは出来ません。あなたも共同相続人ですので子供と利害が対立することになるので、子供の利益を守るため「特別代理人」を家庭裁判所から選任してもらうことになります。このような場合も、放棄の期間を延長してもらう理由の1つになります。

 
相 私のようなケースで自宅を確保できたケースがありますか。

 
弁 私自身、同じようなケースを何件か扱ってきています。成功したケースが多いです。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 今井 誠◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2011年8月31日号(vol.85)>

【法務情報】弁護士白書について

 │ 弁護士今井誠, 新潟事務所, その他

 皆さんは「弁護士白書」をご覧になったことはありますか?

 
 おそらく大部分の方々はそのような白書があること自体を知らないのではないかと思います。

 
 今、私の手もとに「弁護士白書」(2009年版)がありますので、内容をごく簡単に紹介します。

 
 2009年度の特集は「多様化する弁護士の活動」となっていますが、2008年は「男女共同参画と弁護士」、2007年は「日弁連の人権救済活動を振り返って」となっています。

 
 この特集の中で、組織内弁護士として働く弁護士が紹介されています。ここで組織内弁護士と呼ばれているのは「企業内弁護士」や「任期付公務員」のことで、昨年(※2009年)6月現在で前者が345人、後者が81人となっています。

 
 企業内弁護士というのは、企業の役員、従業員、使用人として企業内で仕事をしている弁護士で「社内弁護士」とも呼ばれています。企業内弁護士の所属する企業は、大半が民間の大手企業ですが、最近では中小企業に迎えられるケースも出てきているようです。

 
 任期付公務員というのは、法律・条例などに基づいて中央省庁や地方公共団体などで任期付で採用されている職員のことです。企業内弁護士を多く採用している企業としては、パナソニック、三菱商事、第一生命、日本アイ・ビー・エムなどがあります。

 
 一方、任期付公務員を多く採用している官公庁としては、金融庁、公正取引委員会、財務省、外務省などがあります。

 
 こうした組織内弁護士のほかに弁護士の活動領域が年々拡大してきています。

 
 あっせん・仲裁などの「ADR(裁判外紛争解決手続)」活動、国際司法支援活動、法科大学院での実務指導、国会議員や自治体の首長、政策秘書、非常勤裁判官などなどです。

 
 ちなみに昨年9月現在、弁護士登録している国会議員は、衆議院議員21名、参議院議員16名となっています。

 
 なお「企業内弁護士」についての詳しい情報を知りたい方は、日弁連・業務改革委編集の「企業内弁護士」(商事法務刊)をご覧下さい。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 今井 誠◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2010年3月15日号(vol.50)>

【法律相談】転勤命令と退職について

 │ 弁護士今井誠, 新潟事務所, 労働

「転勤に応じないと解雇される?」
Q  私は人材派遣を主な業務とする会社で部長をしています。会社では山形支店を開設するため、私を支店長候補として転勤させたいらしく、年内の転勤を内示してきました。私としては、知らない土地であり、妻や子供も反対なので、転勤に応じたくないのですが、拒否しても解雇されませんか?

 
A  転勤を拒否して解雇された事例は多くあります。裁判所の判断は分かれていますが、解雇が有効とされるケースも少なくないので、慎重に対応する必要があります。

 
「未消化の有給休暇の取得は?」
Q  妻は、転勤に応じて別居生活になるくらいなら、「会社をやめたらどうか」と言っています。私としても、有給休暇の残りを全部使ってから退職できるなら、それも選択肢の一つと考えていますが、有給休暇をそのように使うことは可能でしょうか。

 
A  退職の時期とも関係するので、一概に可能とは言えません。1月1日から新たな休暇が付与される会社も多いので、退職時期を1月末として時期を選択するようなやり方には会社が応じないと思われます。
 
 もしあなたが転勤に応じないことがはっきりすれば、会社は年内にも解雇などの処分をすることも予想されます。もし転勤に応ずるのではなく、退職の道を選択するのであれば、年内(転勤の時期内)にその時期を設定し、それまでの間に有給休暇を申し出るしかないと思います。

 
Q  会社が退職時の有給休暇の消化を認めないときに、有給休暇の買い取りを要求できますか?私の未消化日数は30日あります。
 

A  有給休暇の買い上げは、有給休暇制度の趣旨を損なうおそれがあるため、原則的に認められていません。しかし、いかなる場合にも絶対的に認められないというほどのものではないと考えられるので、会社と合意できれば、そのような措置も例外的に認められるものではないかと思われます。

 
「退職の意思表示は文書で?」
Q  退職する際には、「退職願」を出す必要がありますか?

A  「退職願」・「退職届」は、退職の際に提出するのが通常ですが、必要不可欠という訳ではありません。ただ退職には、自主退職、合意退職、解雇、懲戒解雇など、種々のものがあり、口頭で「やめる」「やめろ」などとすると、区別が曖昧になるだけでなく、「言った」「言わない」と後日の紛争になることも多いので、大事な意思表示は文書にするのが賢明です。

 
「残業手当の請求はできるのか?」
Q  私は管理職ということで、これまで残業手当等をもらっていなかったのですが、これについて退職後でも請求は可能でしょうか。

 
A  あなたが労働基準法第41条2号に定める監督、管理の地位にあるのであれば、時間外手当などが支給されないことになりますが、「部長」と名の付く人が全部これに該当するかは、にわかに判断できません。会社の役員(取締役)に準ずるような部長であれば、給与や管理職手当もそれ相当に高額で、業務上(職務上)の権限なども相当程度付与されているはずですので、ここでいう監理・監督者に該当すると判断されます。管理職手当といっても、額が僅かで、職務上の権限もほとんど付与されていないのであれば、残業代を請求すれば、法的には認められることになります。労基署がどう判断するかということも参考になると思います。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 今井 誠◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2009年11月号(vol.44)>

【法律相談】「うつ病」の契約社員への対応

 │ 弁護士今井誠, 新潟事務所, 労働

相談者=「相」 弁護士=「弁」

 
 私は、食品会社の工場長をしています。2年前に工場で採用した契約社員(A・女性・35才)がこの春から様子がおかしいので、精神科の受診を勧めたところ「うつ病」と診断されました。半年ほど通院していますが、最近では欠勤する日が多く、出勤しても決められた作業を放棄するようになりました。会社として今後どう対応したらよいでしょうか?

 
 最近は、あちこちの職場で「うつ病」や「うつ状態」になっている社員(職員)のことが報告されています。当事務所にも最近、同種の相談が持ち込まれるようになりました。以前は、この種の病気は内臓疾患などと同じように「私傷病」として取り扱われていました。しかし、この種の病気は、発症の有無(時期)やそれの程度を判断することが容易でなく、精神科の受診を勧めても拒否する者さえいます。

 
相 当社のA社員の場合も、最初は精神科の受診を嫌がっていましたが、そのうち、仕事も手につかない状態になったので親(身元保証人)に連絡して一緒に病院に行ってもらったのです。

 
 私の顧問先の会社でも、以前同じようなケースがあり、人事担当者は大変困っていました。その会社の場合は、30年近く勤務している幹部社員であったため、余計に対応に苦慮されたようです。

 
相 当社の場合は工場雇いの契約社員ですので、次の契約更新をしないで措置したいと思っていますが問題になりますか?

 
 1年契約の契約社員だからといって、簡単に更新拒絶ができるかというと必ずしもそうではありません。更新を繰り返し、長期雇用が常態となっているような場合には、正社員と同じ取扱いが要請されます。あなたの会社の雇用実態が問題になるかもしれませんし、A社員の雇い止め(更新拒絶)が「解雇」と判断されるおそれもあります。

 
相 A社員の場合、来年4月が2年目の終期ですので、今すぐ判断しないで様子をみた方がよいでしょうか?

 
 とりあえず、本社の人事担当とよく協議した方がよいと思います。他の工場や他の部門でも、今後、同じような病気になる社員や契約社員が出てくる可能性があるので、この際、他社の取扱事例などの情報も収集して、会社としての取扱基準のようなものを作った方がよいと思います。

  
相 A社員の今後の勤務実績によっては、解雇することも可能ですか?

  
 就業規則に定める解雇事由に該当すれば、更新拒絶は勿論、解雇も可能です。専門医の意見や本人及び家族の意向なども汲んで慎重に手続を進め、労使紛争にならないよう留意して下さい。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 今井 誠◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2008年11月号(vol.33)>

【法律相談】団体生命と遺族

 │ 弁護士今井誠, 新潟事務所, 労働

Q 当社では、幹部職員を対象に団体生命に加入しています。昨年、営業課長がガンで死亡したため、保険会社に死亡保険金2000万円の請求をしたところ、被保険者の遺族(法定相続人全員)の同意書を一緒に提出するよう求められました。
 そこで、遺族にその旨連絡したところ、保険金の全部を遺族に支払うよう要求されてしまいました。遺族の要求に応じなければなりませんか。

 

A 取締役や幹部職員を被保険者とする団体生命に加入している会社は、かなり多いようです。

 
 以前(平成4年以前)は、会社が被保険者の確認を得ないで保険に加入することも多く、そのため、保険金が支払われる段階で遺族との間にトラブルが多発していました。

 
 そのため、当時の監督官庁である大蔵省は生命保険各社に対し、団体定期保険の本来の趣旨に沿った運用を行うことを徹底するよう行政指導を行ってきました。

 
 これを受けて、生命保険各社は、平成4年3月以降、保険契約者に対し、福利厚生制度と関連性を明らかにさせるとともに、保険金の全部又は一部を社内規定に基づいて遺族に支払うことを確約させるなどの取扱いを行ってきました。

 
 こうした保険各社の取扱いの変更によって平成4年以降の契約には、被保険者の同意を前提として、加入契約の際、保険金の使途が相当程度限定されることになりました。

 
 大きな会社では、労働組合との協定で使途を退職金や弔慰金や葬祭費用などに限定するところも出てきました。

 
 しかし、従業員が20~30人程度の会社の場合には、退職金規定や弔慰金規定も定められていないところがあり、平成4年以降も、取締役や従業員に対して死亡保険金が全く支払われなかったり、弔慰金などの名目で保険金のごく一部(1~2割)しか支払われないというケースが続出し、そのため、遺族が裁判に訴え出るということが続いてきました。

 
 従業員の退職金については、ほとんどの会社に退職金規定があり、実務上はその規定に沿って受領した保険金の中から退職金が支払われてきていました。

 
 しかし、取締役の場合には、退職慰労金や弔慰金についての規定が定められていない会社があり、また規定はあっても取締役会決議や株主総会決議がなされないケースもあり、下級審の判断も分かれていました。

 
 こうした中で、平成18年4月11日に最高裁判所の判決が出されました。このケースでは、6000万円を超える高額の保険金を受領しながら、従業員の遺族には約1000万円しか支払われなかったケースについて、ほぼ半額の3000万円の支払を命じました。遺族からは保険金の全額に相当する金員の支払が求められていたものです。

 
 質問のケースについては、退職金規定の有無や退職金の支払基準、勤務実績や他の従業員への支給額との対比、受領した保険金の額などを総合して判断することになると思われますが、半額前後が相当な額と思われます。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 今井 誠◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2008年3月号(vol.25)>

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