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弁護士コラム「ご近所との騒音トラブルをどう解決する?」弁護士:上野祐

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1 はじめに

 

新型コロナの影響で、家での生活が増えたという方も多いかと思います。

家族で過ごす時間が増えたり、今までとは異なる時間の使い方ができるなどの良い影響がある一方で、家にいる時間が増えたことによる問題も聞かれます。
「コロナ離婚」など、家庭内の関係が悪くなるような問題もありますが、これまで意識することのなかったご近所さんとの関係にまつわるトラブルが増えています。

本コラムでは、ご近所さんとのトラブルでよく相談のある「騒音問題」について取り上げたいと考えています。

2 「騒音トラブル」とは?

「騒音トラブル」と言った場合、例えば、道路工事や建設工事の音など、業者の事業によって発生する騒音が問題となることもあります。
もちろん、そのような工事音も、度が過ぎるような場合であれば、法的な責任問題になることもありますが、公共性や必要性が大きいために責任問題とすることが難しい場合が多いですし、何よりも、一時的なことが多いため、不満はあっても、弁護士に依頼をして何とかしたいとまで意識しないことも多いように思います。

そのため、よく法律相談を受けるのは、生活音に伴う騒音です。
子どもが騒ぐ音、「ドン!ドン!」という何をしているのか分からない音、ピアノ・ギター等の楽器を演奏する音…など様々な生活音の相談があります。
特に、マンション・アパートの場合、壁の薄さによっては非常に大きい音が聞こえることがあり、“ノイローゼになった”と訴える方もおられ、深刻な問題となっていることも多いという印象です。

では、どのような対処が必要なのでしょうか。

3 音源の特定と証拠収集

まずは、音源の特定が重要です。
どこの家・部屋からの騒音なのか、きちんと特定することが必要です。
簡単なようで、人の聞こえ方には誤差が生じることも多いようで意外と難しい場合もあります。
もし、間違えた場所を音源と断定してしまうと無用なトラブルの原因となりかねないので注意が必要です。

次に、“どのような音がしているのか”をきちんと証拠に残しておくことが重要です。
よく証拠として録音が重要視されますが、騒音トラブルではなかなか難しいのが実情です。
その理由は、特定の時間に特定の音がするケースは少なく、また、音は一瞬であることも多いからです。
また、耳では聞こえても録音にはうまく残らないことも多いことも、録音による証拠化が難しい要因に感じます。
ただ、反対に言えば、“録音に残せた”というのであれば、騒音被害としても深刻な状況であるということが言えるとも思います。

そうすると、証拠として残す方法としてはメモを取ることになります。
何時何分ころに、どのような音がしたのか、騒音はどの程度の時間続いたのかなど、きちんとメモを取っておくことが重要になります。
重要なことは、複数回の騒音についてメモを取ることです。
そうすることで、たまたま一回の騒音ではないことを裏付けることや、騒音が生じる日時に規則性も発見できることがあるからです。

4 まずは他者からの注意から

まずは、マンション・アパートを管理している管理会社、一戸建住宅であれば町内会長などにお願いし、騒音の苦情が出ている旨を注意をしてもらう方法が重要です。
ここで大切なことは、直接に話に行かない方がよいということです。
当事者同士が直接に話をすると、感情的になり無用なトラブルを引き起こすリスクがあるので控えた方が得策です。
また、他者から注意をしてもらうことで、そのような依頼を行ったことが証拠となり、有益な場合もあります。

他から注意を受けると、人は、“注意しなければいけないな”と感じ、音を立てないよう気を使って生活をすることになります。
そのため、他者から注意をしてもらうことで解決するケースも多いのが実情です。反対に、他者から何度も注意をしてもらっても改善が見られないケースについては、弁護士に対応を依頼する必要が生じる場合もあります。

5 弁護士を通じての対処

弁護士による対応は、前述のとおり他者からの度重なる注意にもかかわらず、改善が見られない場合に考えることになります。

具体的な対応は、お手紙を出し、騒音をやめるよう通知することになります。

これを聞くと、「あれ?結局、他者からの注意と同じでは…」と思われるかもしれませんが、弁護士からの通知となると、“騒音を出すことをやめないと裁判を起こされるかもしれない”というプレッシャーを与えることができ、結果として騒音が収まることもあります。

もちろん、弁護士からの通知にもかかわらず、騒音が収まらないこともあります。
そういった場合、裁判所の手続きを用いることになりますが、直ちに裁判を起こすというわけではありません。
裁判所には、「調停」という話合いの場を設ける手続きがあり、まずはその手続きから進めることが通常です。
その理由は訴訟という手続きのハードルやデメリットがあるためですが、それは後ほど説明します。
調停というのは、あくまで話し合いの場になりますので、お互いが譲り合って紛争を解決するという考えが重要です。

調停でも解決ができない場合、やむを得ず裁判手続きに移行するか検討しなければいけないのですが、次に述べるようなハードルやデメリットがあることに注意が必要です。

6 裁判のハードル、デメリット

裁判(訴訟)と言うのは、お互いの意見に食い違いがあり、話し合っても解決が不可能な場合に、法律に照らして、どちらの言い分が正しいのかを国が判断する制度です。
騒音トラブルで言えば、騒音被害を訴える人と騒音を出している人との間で食い違う意見を、法的にみてどちらの言い分が正しいのかを判断してもらうことになります。

具体的に、どのようなことを求める裁判になるかと言うと、多くは、騒音によって精神的苦痛を被ったとして慰謝料請求を行うことになります。
また、特定の時間に特定の音を出さないよう求める訴え(例えば、「午後7時以降はピアノの音を出してはいけない」よう求める裁判)を求めることもあります。

ここで注意をしなければいけないのが、どのような騒音被害なのか、被害者の側が立証する必要があるといことです。
立証とは、第三者が見て、確かに訴えるような騒音が存在したと認められる程度に真実であると認めさせることを言います。
「言い分が異なっていて、本当に訴えるような騒音が存在したのか分からない」というのでは裁判に負けてしまうのです。

また、どのような騒音の程度かを、ある程度、数値化する必要があります。
音の大きさは、デシベルという数値をもって表させることになりますが、問題となる騒音が、どの程度の大きさなのかを測定し、証拠提出する必要があります。
測定器を準備しなければならず、なかなか大変です。

さらに、裁判手続きを考えるうえでもっとも大きいハードルとなるのは、たとえ騒音被害を立証することができたとしても、認められる慰謝料額はそれほど大きいとは言えないという実情です。
具体的には、個別ケースの判断になりますが、数十万円程度であり、50万円を下回ることが多いようです。
弁護士に依頼をして裁判手続きを行うと、費用として数十万円を要することも多く、裁判となれば1年以上の時間を要することも珍しくありません。
まさに費用倒れになる可能性が大きいということです。
そうであれば引っ越した方がまし、と判断される方もいます。

以上のとおり、立証のハードルと、費用倒れのリスクが大きい・時間がかかるというデメリットから、騒音トラブルについては、裁判手続きを取ることが難しいのが実態です。

7 最後に

以上のように、騒音トラブルの対処法や裁判手続きの問題点について述べさせて頂きました。

騒音トラブルを防ぐ一番の方策は、皆が他人の生活を考え配慮し合うことなのですが、顔の見えないご近所同士であり、また、コロナのストレスも影響しているのか、トラブルに発展する事例が見られます。
その場合には、どのような行動を取ればよいのか、本コラムを参考にしてもらえればと思います。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 上野 祐

一新総合法律事務所
弁護士 上野 祐

一新総合法律事務所 新潟事務所所属

私には、先天的な病気が原因で弱視や視野狭窄の視覚に障害があります。それでも、自分の能力を生かして人のために働きたいとの信念をもって弁護士となりました。
私が、障害により日常多くの不自由を感じているように、価値観が多様化する現代において、社会に多くの不自由を感じておられる方も多いかと思います。どのような法的支援ができるかは事案によりそれぞれですが、皆様と共に最善の解決を考えていければと思っております。


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