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新聞社の『押し紙』行為を大阪地裁が認定(弁護士 薄田真司)

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1 『押し紙』とは

 

新聞社が販売店に対して不必要な新聞紙の仕入れを強制することは、『押し紙』と呼ばれています。

 

販売店からすれば、新聞に「在庫」がない以上、仕入れ費用が無駄になり、残紙の廃棄費用も生じますので、たまったものではありません。

もっとも、販売店は、新聞紙の供給元である新聞社から取引関係を解消されてしまうと経営が成り立たたなくなり、やむなく新聞社の押し紙に応じざるを得ない場合もあるようです。

 

このような押し紙行為は、公正な競争を阻害する行為として、独占禁止法に反します。

公正取引委員会は、独占禁止法第2条第9項に基づき、「新聞業における特定の不公正な取引方法」(平成11年7月21日告示第9号)を定め、その中で押し紙行為を禁止しています。

 

2 提起された訴訟について

読売新聞の販売店を経営していた元店主が、読売新聞社を被告として、押し紙によって不必要に仕入れざるを得なかった新聞の代金相当額を返金する、又は、仕入れ代金相当額の損害賠償をするよう請求する訴えを大阪地方裁判所に提起しました。

 

原告は、販売店の経営を前店主より引き継いだ平成24年4月から、後店主に引き継ぐ平成30年6月までの間、被告から押し紙行為を受けており、独占禁止法に反する押し紙による新聞購入契約は無効である、被告から返還されるべき仕入れ代金は1億2300万円以上に上る、と主張しました。

これに対し、被告となった読売新聞社は、押し紙行為をした事実などないとして全面的に争いました。

 

また、被告は、原告が被告から従業員募集広告補助金等を詐取していたとして、1000万円程度の損害を賠償するよう求める反訴(被告から原告に請求する訴え)を提起しました。

 

3 裁判所に認定された『押し紙』行為について

大阪地裁は、本年4月20日付けの判決で、読売新聞社が販売店に対し、原告が販売店の経営を前店主から引き継いだ後に、実際に販売・配布する部数(実配数)の約2倍にあたる部数を注文するよう指示していたことを認定し、このような読売新聞社の行為は「新聞業における特定の不公正な取引方法」の第3項第2号(「販売業者に自己の指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給すること」)に反するものであることを指摘しました。

 

もっとも、結論として、原告の請求は全て棄却しました。

 

理由は次のとおりです。

第1に、独占禁止法は取締法規(新聞社・販売店の契約関係には直結しない行政による規制)にすぎず、その違反があっても、新聞社と販売店との間の新聞販売契約は直ちに無効とならない。

第2に、原告が販売店の経営を前経営者から引き継ぐ際に、販売店の新聞社に対する従前の注文数を維持しており、残紙が出る状況を引き受けていたといえることなどです。

 

被告が原告に請求した1000万円程度の損害賠償については、900万円程度を認容しました。

 

4 地裁判決後の状況について

報道によると、原告代理人弁護士は、「押し紙問題で、読売の独禁法違反が認定されたのはおそらく初めて」と判決を評価しています。

一方、読売新聞社は、一度も注文部数を指示したことはないとし、明らかに誤った認定であり、承服できないとしています。

 

原告が5月1日に大阪高等裁判所に控訴しており、今後の審理が注目されます。

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 薄田 真司

薄田 真司
(うすだ まさし)

一新総合法律事務所 弁護士

出身地:新潟県胎内市
出身大学:神戸大学法科大学院修了
主な取扱分野は、企業法務(労務・労働事件、倒産対応、契約書関連、クレーム対応、債権回収など)。そのほか個人の方の債務整理、損害賠償請求、建物明け渡し請求など幅広い分野に対応しています。
事務所全体で300社以上の企業との顧問契約があり、数多くの企業でハラスメント研修の講師を務めた実績があります。​また、社会保険労務士を対象とした勉強会講師を担当し、労務問題判例解説には定評があります。​

 


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