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法務情報

2026/08/24

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水没した車、道路に置いていったらどうなる?――今夏の大雨で考える身近な法律(弁護士:朝妻 太郎)

コラム弁護士朝妻太郎新潟事務所

この夏は、記録的な大雨のニュースが相次ぎました。

7月末には新潟市内で道路が一気に冠水し、市街地のバスセンター周辺が水浸しになったほか、複数の車がエンジン故障で動けなくなる様子が報じられました。

8月には千葉市内でも大雨により道路上に約2,500台もの車が取り残され、市が復旧作業に追われる事態となりました。


当事務所は新潟市内に事務所を構えておりますが、地元でも他人事ではない被害を目の当たりにし、あらためて大雨・冠水のリスクの大きさを感じました。

冠水で運転中の自動車が動けなくなることは、運転者の立場を問わず、身近に起こり得るテーマです。

今回は、そんな場面で頭をよぎる素朴な疑問を整理してみたいと思います。

水没して動かなくなった車、持ち主の責任は?

「冠水した道路で車が水没して動かなくなってしまった」というだけで、持ち主や運転者が当然に損害賠償責任を負うわけではない、というのが裁判例の一般的な傾向です。

集中豪雨により道路が損壊し、避難中の車が事故に遭った事案で、自然現象による不可避的な事故として運転者の民事上の責任が否定された裁判例もあります。

 

もっとも、冠水した道路とわかっていて無理に進入した場合など、進入時の予見可能性や回避可能性といった具体的な事情によっては、判断が変わり得るとされています。

道路の管理者の責任が問題になることも

反対に、道路の安全性に問題があり、それを解消する時間的余裕があったにもかかわらず対応を怠っていたというような場合には、道路管理者側の責任が問題となることがあります。

国や自治体などの道路管理者は、国家賠償法2条1項により、道路の設置または管理に瑕疵があり、それによって他人に損害が生じたときは賠償責任を負うとされています。


実際には、市の事故防止体制が不十分であったとして道路管理の瑕疵を認めた裁判例も存在しますが(ただし、車両運転者にも過失があるとして7割の過失相殺がなされています。東京高判平成13年5月31日)、記録的な豪雨そのものが原因と評価された事案では、道路管理者としての行政の責任が否定されたケースもあり(ただし、自動車水没のケースに限りません。)、豪雨・冠水があったというだけで一律に道路管理者の責任が決まるわけではありません。

動かない車、そのままにしておいていいの?

動かなくなった車をそのまま道路に置いておくと、他の車の通行の妨げになり、若しくは災害復旧作業の支障になることがあります。


この点、災害対策基本法76条の3および76条の6は、緊急通行車両の通行確保や災害応急対策に著しい支障が生じるおそれがある場合に、警察官や道路管理者等が、車両の持ち主の同意を得ないまま移動等を命じ、または自ら移動できる仕組みを定めています。

やむを得ない限度であれば車両に損傷が生じることも許容されていますが、その場合は所有者への補償が予定されています。


今回、千葉市が多数の被災車両の撤去をおこなったのも、この災害対策基本法76条の6第1項に基づくものでした。


このほか、道路法67条の2は災害復旧工事などのために緊急やむを得ない場合に長時間放置された車両を移動できる旨を定めています。


また、災害時に限らず、平時であっても、交通の危険や著しい妨害のおそれがあり現場に運転者がいない場合には、道路交通法に基づき警察官が車両の移動等を行える仕組みがありますし(違法駐車に対する措置・道路交通法51条)、道路法44条の3は車両からの落下物などの違法放置物件を道路管理者が除去できる旨を定めています。

当然のことですが、いずれも法令上の要件を満たす場合に限られており、根拠なく移動・処分してよいというものではありません。


なお、道路上の物が道路の構造や交通に支障を及ぼすおそれがある場合には、民法717条(土地の工作物等の占有者・所有者の責任)に基づく責任が問題となる可能性も指摘されています。

逆に言えば、動かなくなった車を放置する側としても、「大雨で仕方なかった」で済まず、その後の対応次第で思わぬ責任を問われるおそれがあるということです。

放置せざるを得ない場合には、可能な範囲で状況を写真等に残し、早めに警察や道路管理者、保険会社などへ連絡することが肝要です。

おわりに

大雨の際は無理な走行を避けることはもちろん、万が一のときの車両保険の内容を確認しておくことも一つの備えです。


法的な責任の有無が問題になりそうな場面に直面した際は、事案ごとに判断が分かれますので、お早めに当事務所までご相談ください。

(本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の法的助言ではありません。)

この記事を執筆した弁護士
弁護士 朝妻 太郎

朝妻 太郎
(あさづま たろう)

一新総合法律事務所
理事/新潟事務所長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:東北大学法学部

関東弁護士会連合会弁護士偏在問題対策委員会委員長(令和4年度)、新潟県弁護士会副会長(令和5年度)などを歴任。主な取扱分野は企業法務全般(労務・労働事件(企業側)、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など)のほか、離婚、不動産、金銭問題など幅広い分野に精通しています。
数多くの企業でハラスメント研修、また、税理士や社会保険労務士、行政書士などの士業に関わる講演の講師を務めた実績があります。​
著書に『保証の実務【新版】』共著(新潟県弁護士会)、『労働災害の法務実務』共著(ぎょうせい)があります。

 

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