法務情報

HOME > 法務情報 > カテゴリ「弁護士朝妻太郎」

法務情報

社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

【遺言・相続】非嫡出子の相続分に関する最高裁判決が出ました

 │ 遺言・相続, 上越事務所, 弁護士朝妻太郎

1 ついに出た違憲判決

 新聞・ニュースで大々的に取り上げられましたので,皆さんもご存じのこととは思いますが,今年9月,嫡出子と非嫡出子の法定相続分に差を設ける民法の規定(民法900条4号)が憲法に違反する(憲法14条の平等原則違反)とした最高裁判所の違憲判決が出ました。

 

2 そもそも「非嫡出子」とは

 まずは,嫡出子と非嫡出子について簡単にご説明します。

 嫡出子とは,「婚姻関係にある男女から生まれた子」のことを言います。

  そして,非嫡出子とは,「嫡出でない子」のことを言います。

 結婚していない男女間にできた子の場合,母親は懐胎・分娩の事実から母子関係が認められます。他方,父親は認知(父子関係を法律上発生させる手続)をすることで(若しくは子等の認知請求で),法律上父子関係が認められます。ただ,父親と母親とが結婚していませんので,その子どもは非嫡出子ということになります。

 ただ,このように説明しますと,男女間で子どもができた後に結婚するような場合には「婚姻関係にある男女から生まれていない」ので,子どもが非嫡出子であるように思えます。しかし,民法は,子の出生後父母が婚姻することで,子どもに嫡出子の身分を認めていますし,婚姻中父母が認知した場合にも嫡出子の身分を認めています(これを「準正」といいます。)。

 また,父と母とが後に離婚したとしても,嫡出子が非嫡出子に変わることはありません。

 ですので,非嫡出子というのは,父親と母親とが過去にも未来にも法律上の結婚をしない場合を考えていただければ良いかと思います。

 

3 民法の規定内容

 以上が嫡出子と非嫡出子の違いですが,民法は遺産相続の場面で両者に差異を設けていました。

 すなわち,民法900条4号は非嫡出子の相続分は,嫡出子の半分(2分の1)と定めています。

 単純な例を挙げると,例えばA(男性)が死亡して,その相続人がAの配偶者(妻),子2人(2人とも妻との間の子で嫡出子)の場合,法定相続分は,配偶者が1/2,子2人がそれぞれ1/4ずつとなります。

 他方,相続人が,配偶者(妻),子2人(子の内1人はAと配偶者との間の子(嫡出子),もう1人が別の女性との間で生まれた非嫡出子)の場合,法定相続分は,配偶者が1/2,嫡出子が2/6,非嫡出子が1/6となるのです。

 

4 今回の最高裁判決の内容

 最高裁判所は,これまでも非嫡出子の相続分に関して判断を下してきましたが,これまでは違憲とまでは判断しませんでした。

 しかし,今回の最高裁判所の判決は,このように嫡出子と非嫡出子の法定相続分に差異を設けた民法900条4号について,憲法14条1項に違反して違憲無効と判断したのです(裁判官14人の全員一致)。最高裁は,これまでの判例と結論を異にした理由として,日本の家族形態の変遷などに言及しながら,個人の尊重という観点から,法律婚という制度の下で父母が婚姻関係にないという子にとって自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由として子に不利益を及ぼすことが許されないこと,子を個人として尊重し,権利を保障すべきという考えが確立されていることなどを指摘しています。

 

5 民法規定の違憲無効がもたらすもの

 民法900条4号が違憲無効と判断されたことで,これまでこの規定に基づいて決着がついた個々の遺産分割の問題が全て白紙に戻るのではないか,と心配される方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし,全てが白紙に戻ってしまっては,せっかく決着がついた問題が蒸し返され,極めて不適当です。

 そこで,この点について最高裁は,民法900条4号の規定を前提としてされた「遺産分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係には影響を及ぼすものではない」と判断しています。すなわち,既に決着のついている個々の相続について蒸し返すことを認めず,将来発生する相続や現在未決着の相続についてのみ妥当するとしています。

  

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 朝妻 太郎◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2013年9月17号(vol.134)>

【法務情報】平成25年度の相続税改正について

 │ 遺言・相続, 上越事務所, 弁護士朝妻太郎

1 ようやく改正法成立

 相続税が変わる,という話は皆さんも耳にされたことがあると思います。もっともこの改正は,一昨年の東日本大震災などの影響もあり,改正までずるずると先延ばしになっていました。

   

 しかし,今年の1月に入り政府が平成25年度税制改正大綱をまとめた後,3月29日の参議院可決によって,改正関連法が成立するに至りました。

 

2 そもそも相続税とは?

 相続税は,皆さんもご存じのとおり,相続によって引き継いだ財産を「評価」して,その評価額によって税額が決まる国税(国に支払う税金)です。後に説明しますが,一定額以上の相続財産に対してのみ課税されるため(基礎控除),ほとんどの方には関係の無い話でした。

    

 実際,平成22年中に発生した相続のうち,相続税の発生した相続は全体の約4パーセント程度と言われています(100人亡くなったうちの4人の相続にだけ相続税が発生した計算)。

  

 今回の相続税改正では,この範囲が広がるといわれているのです。

 

3 相続税が課税される財産

 そもそも相続税が課税される財産にはどのようなものがあるかを簡単に説明します。

  

 相続財産というと,不動産,有価証券,預貯金など,相続争いでよく問題となる財産が思い浮かびますが,これらは当然課税の対象となる財産です。

  

 他方,借金などのマイナスの遺産や葬儀費用などはプラスの財産から差し引くことができます。

  

 気をつけなければならないのは,遺産分割で分割方法を協議しなければならない上記の不動産や預貯金,負債だけでなく,遺産分割の時には問題にならないが相続税の課税対象になる財産が存在するということです。典型的なものが,生命保険金,死亡退職金といったものです(みなし相続財産といいます。)。

   

   例えば,受取人が妻になっている生命保険金があったとします。この生命保険金は受取人が妻と指定されていることから,妻の固有の財産と見ることになります。つまり,遺産分割で当該生命保険金を誰が引き継ぐのか話し合って決める必要はなく,当然に妻の財産となるのです。ですから,弁護士に遺産分割協議や調停を依頼した際に,受取人が決まっている生命保険金の分割という問題は基本的には生じません。しかし,相続税を計算する上では他の財産同様,考慮に入れなければならなりません。

   

 4 基礎控除の縮小

 ここからが今回の本題。基礎控除とは,簡単に言うと,相続税が課税されるか否かのボーダーラインを言います。今回の改正前は,「5000万円+1000万円×法定相続人の数」とされていました。この範囲内ならば相続税は発生しません。

   

 単純な事例で説明します。例えば,夫が亡くなり,妻1人,子2人が法定相続人,相続財産全体の評価額が7000万円だったとします。他方,基礎控除額は「5000万円×1000万円×3=8000万円」となります。そうすると,相続財産の評価額が8000万円までであれば相続税が発生しないことになりますので,このケースでは相続税の課税対象にならないことになるのです。

  

 これが相続税の基礎控除ですが,平成25年度改正により「5000万円+1000万円×法定相続人」から「3000万円+600万円×法定相続人」と変更されたのです。

   

 先ほどの事例ですと,「3000万円+600万円×3人=4800万円」となり,4800万円を超える部分には相続税が課税されることになりますから,7000万の相続では相続税課税の対象になるというわけです。

  

 このように,基礎控除の縮小により相続税が生じる相続の範囲が拡大するのです。

  

 

5 税率の増加やその他の改正

 改正内容は基礎控除の縮小だけではありません。

  

 法定相続人の取得金額2億円超の場合,現行の税率よりも高くなりましたし(例えば,法定相続人の取得金額が2億円超3億円以下の場合の税率は,40パーセントから45パーセントに上昇),最高税率も55パーセントになりました(現行は最高税率50パーセント)。

    

 他方,未成年者控除,障害者控除額が増えるなど,相続税額が減額の方向に作用する改正内容もありますが,総じて見ると,相続税額増額の方向で改正がなされていることがわかります。

 

6 この改正がいつから適用されるのか

 さいごに,この相続税の改正はいつから適用されるのかについてですが,平成27年1月1日以降の相続に適用されることになります(なお,相続発生が平成27年1月1日以降のものに適用されます。平成26年中に発生した相続は申告が平成27年になっても,改正前の規定が適用されることになります。)

  

   相続税のみならず贈与税等も併せて改正されていますが,ほとんどの改正が平成27年1月1日以降の贈与に適用される内容となっています(一部例外もあるので注意)。

  

 いずれにせよ,この改正により多くの人が相続税を心配しなければならなくなったことは間違いありません。この改正を契機に,税理士による相続税セミナーなどは急激に増加し,一つのブームとなっているとも聞きます。

  

   気になる方,興味のある方は,顧問税理士の先生などにおたずね頂くとよいかもしれません。

   

 

※財務省 税制に関するホームページはこちら  http://www.mof.go.jp/tax_policy/

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 朝妻 太郎◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2013年4月15日号(vol.124)>

 

【法務情報】個人情報とコンプライアンス

 │ ビジネス, 上越事務所, 弁護士朝妻太郎

1 個人情報保護が声高に叫ばれる時代

 最近はやたら「個人情報にうるさい」という印象を抱く方も多いと思います。法律相談の中にも,「○×株式会社が私の個人情報を勝手に外部に漏らした,損害賠償請求をしたい。」というものや,企業の方から,「個人情報の流出だといって,会社に『誠意ある対応』を求めてくる顧客がいる。どのように対処したらよいのか。」などといった相談をお受けすることがあります。それだけ社会が「個人情報」というものに過敏になっているのだと思います。

 もっとも,実際に個人情報が流出した事件ではどのような法的責任を取らされているのでしょうか。

 

2 ヤフーBB顧客情報流出事件

 この事件は,マスコミも大きく取り扱いましたので,覚えている方もいらっしゃるかも知れません。

 平成14年から平成16年までの間に,表記のブロードバンドサービスを運営するS社による顧客情報管理に不備があったことから,インターネットカフェのパソコンを用いてのS社内部サーバーへの不正アクセスを許し,顧客データベースから顧客情報(住所,氏名,電話番号,メールアドレス等)が流出してしまった事件です。S社の社長がカメラに向かってお詫びをしていた光景を覚えている方がいらっしゃるかもしれませんが,実はこの個人情報流出事件は,民事訴訟にまで発展しています。

 S社は個人情報の流出の被害者か否かに関わらず,全会員に対して,金券(500円相当)を送付する等の対応を迫られたわけですが,これに満足しない一部の被害者が,S社に対して損害賠償を求めて訴訟を提起しました。

 大阪地方裁判所で提起された訴訟ですが,原審の大阪地方裁判所は,被害者顧客1人当たり6000円(内5000円が慰謝料,内1000円が弁護士費用)の損害賠償を命じ,控訴審である大阪高等裁判所はS社が提供した500円相当の金券分を控除し,被害者顧客1人当たり5500円の損害賠償を命じています(この高裁判決が確定しています。)。

 原審の大阪地方裁判所は,インターネット接続等の総合電気通信サービスの顧客情報として保有管理されていた被害者の氏名・住所等の個人情報が外部に漏えいしたことにつき,同サービスを提供していたS社に,外部からの不正アクセスを防止するための相当な措置を講ずべき注意義務を怠った過失があり,それによって原告らのプライバシーの権利が侵害された,と認定し,S社の不法行為責任を肯定しています。

 この事件に限らず,氏名,住所といった,いわゆる個人情報の流出事例では,概ね被害者1人当たり数千円から数万円程度の損害賠償が認められているケースが多いようです。

 

3 民事上の責任が認められる理由

 ヤフーの事案は,外部からの不正アクセスという第三者が介在して個人情報の流出が生じたという事案ではありますが,そのような不正アクセスを許してしまったというS社に過失(不注意)による責任を認定しています。

 ヤフーの事案は,ヤフーBBの直接の顧客が被害者でしたので,顧客からの直接の損害賠償請求という形を取られました。しかし,例えば,取引先から取得し管理していた取引先顧客の個人情報を流出させたとなると,個人情報流出の被害者のみならず,取引先からも損害賠償請求される場合があります。

 

4 数千円という慰謝料額をどう見るか

 もっとも,ヤフーBBの事案では,最終的に慰謝料として認容された金額が1人当たり5500円です。そのため,個人1人で訴訟を提起するとなると,費用対効果を考えれば,訴訟提起することが妥当とは言い難いでしょう。

 では,情報を流出させた企業側として,あまり気にしなくとも良いかといえばそうではありません。被害者1人あたりの金額としてはそれほど大きくないとしても,損害を賠償する企業にしてみれば相当な金額に上ることも十分想定されます。

 そして,これは大企業に限った話ではありません。確かに,ヤフーBBの事案では,最終的に情報流出した個人情報は400万人以上に上るとのことですから,ほとんどの中小企業には縁のない話のようにも思えます。しかし,皆さんの会社で100人,1000人レベルの個人情報の流出となると,十分想定しうるのではないでしょうか。100人,1000人のレベルでみても,損害賠償額のトータルは馬鹿にできない金額になることは御理解頂けると思います。

 また,訴訟になった場合の時間的・人的な負担も無視できません。

 

5 個人情報は大量流出事件だけで問題になるものではない。

 そして,個人情報に関連してトラブルとなるのは,大量流出の場面だけではありません。皆さんは,大なり小なり,他人の個人情報を扱っておられると思います。私どもも皆さんを含む,当事務所を使って下さる方々の個人情報を扱っております。何らかの事業を営む以上,他人の個人情報を扱うことは不可避です。

 そして,前述したとおり,個人情報の扱いについて極めて敏感な時代です。たった数件であったとしても,何らかの形で個人情報の流出が生じてしまえば,企業の信頼は地に落ちてしまいます。仮に訴訟騒ぎにならなくとも,企業経営の中でもっとも重要な「信頼」に大きな傷を付けることになってしまいます。

 大きなトラブルが生じる前に,今一度,御社の情報管理体制について考えて頂ければ幸いです。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 朝妻 太郎◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2012年10月1日号(vol.111)>

【法務情報】私傷病により仕事が出来なくなった従業員の行く末

 │ 労働, 上越事務所, 弁護士朝妻太郎

皆さんの会社・お勤め先に病気や怪我で仕事が出来ず、仕事を休んでいる人はいませんか。

 

恐らく多くの会社で、私傷病(会社の業務とは関係のないことが原因で発症した病気や怪我)による休職制度を設けていることと思います。

すなわち、当該労働者に対して私傷病の療養のために労務の提供ができなくなった場合に従業員としての地位を維持したまま、一定期間就労を免除するものです。
この制度は、会社の立場から見れば、経験をもった従業員をみすみす失うことを避けるという点でメリットがありますし、労働者の立場から見れば、即刻会社を辞めないで済むという点でメリットがあります。

 
では、従業員の私傷病による休職期間が長期間に及んだときにはどうでしょう。会社側としてはなかなか頭の痛い問題です。

 
その従業員自身が復職不可能で退職もやむを得ないと考えている場合には、あまり問題は表面化しないかもしれません。

 

問題となるのは、従業員側では退職を望んでいない一方で、会社が退職を望む場合、会社がその従業員を解雇しようと考えるような場合です。

 
このようなことを言うと、皆さん心配されて、ご自身の会社の就業規則を確認されるんだろうなぁと思うのですが、恐らく多くの会社では「病気や怪我などで勤務を遂行できない場合」等を解雇事由として定めていると思います。「なんだ、だったら休業期間なんか気にせずに解雇は問題ないじゃないか。」とお考えになるかもしれませんが、簡単にはいかないのが難しいところです。

 
私傷病による休職期間が満了後、会社の側が私傷病を理由として従業員を解雇した事案については多数の裁判例が存在します。

 

裁判所としては、概ね、「休職期間満了時に傷病が治癒し復帰可能な状態にあるか否か」を解雇有効・無効の重要な判断要素と見ているようです。そして「治癒」とは、原則として従前の職務を通常の程度に行える健康状態に復したこと(大建工業事件判決)と解する裁判例が多いようです。

 
もっとも、当該職種が限定されている場合(例えば、長距離トラックの運転手など)と、職種が限定されていない場合(例えば、単純な事務処理業務など)とでは要求される回復の程度が異なり、前者においては従前の職務に従事することができる程度が比較的高く求められる反面、後者においては回復の程度は比較的緩やかなもので足りるとされる傾向があって一律に決しがたいところです。
また、指導教育措置や配置転換の可能性等が判断要素とされている事例もあります。

 
従業員の側も会社に対して診断書を示すなどして自己の状況を伝えるべきですし、会社側の求めに応じて産業医の診断を受ける等する必要もでてきます。

 

いずれにせよ、会社は後の紛争回避のためにも私傷病により休職中の従業員との連絡を絶やさず客観的な状況の把握や回復の見込みをきちんと確認することが求められると言えるでしょう。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 朝妻 太郎◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2012年2月15日号(vol.96)>

【法務情報】外国人労働者を雇用する際の注意点

 │ 労働, 上越事務所, 弁護士朝妻太郎

 外国籍の方を雇用されている顧問先の方も多くいらっしゃるかと思います。
 人材交流が盛んな今日においては,ごく一般的なことと言えるかもしれません。
 他方,法律相談で雇用関係の問題を抱えて相談にお見えになる外国籍の方も相当するいらっしゃることも事実です。
 事業者として,外国人労働者を雇用する際に注意すべき点とは一体どのようなものなのでしょうか?

 
1 基本的な4つのポイント
 ごく基本的な点としては,以下の4つの点が挙げられます。

 
①在留資格があるかどうか(日本に在留することができる人かどうか。)。
 当たり前の話ですが,意外に注意を払っていない人もいるようです。
 不法就労外国人を雇用したばかりに,捜査機関から不法就労助長罪(入管法73の2)の疑いをかけられる例も見受けられます。「つい,うっかり」ではすまされないのです。

 
②労働者が入国管理法上労働する資格を有しているかどうか。
 いわゆる在留資格の確認です。「永住者」「日本人の配偶者等」などの在留資格を有している場合は,職業・業務について原則的には制限がありませんが,特定活動のための在留資格を有している場合には注意が必要です。
 数年前に問題となった「研修生」就労問題(外国人研修生に最低賃金や労働法規の保護が及ばないことを奇貨として,不当に低い水準で就労させる事業者が存在していた問題。)については,平成21年の入管法改正により「技能実習」という在留資格が新設され改善が図られています。詳しくは弁護士にお尋ね下さい。

 
③当該労働契約等がどこの国の法律に準拠しているか(準拠法は何か。)。
 多くの場合,日本の法律が準拠法になるかと思いますが,他国の法律を適用すべき場合もありますので,注意が必要です。
 また,日本法が適用される場合,労働基準法,最低賃金法などの労働者の保護を図る法律は外国人労働者にも適用されることになります。その意味では,日本人労働者同様注意が必要です。

 
④言葉の問題など,文化・習慣の差異を把握しているか。
 労働条件等を説明する際に,言語の壁により誤解が生じトラブルに発展することなどがあります。また,文化の違いからくる残業についての考え方の違いなどもトラブルの要因になることが多いようです。

 

2 雇用対策法の改正
 平成19年に雇用対策法が改正され,一部を除く外国人労働者の雇入れと離職の際,雇入れの場合には翌月10日まで,離職の場合には離職の翌日から起算して10日以内に,雇用主が労働者の氏名,在留資格,在留期間,生年月日,性別,国籍等をハローワークへ届け出ることが必要になりました。
 そのため,この届出を実践している以上,上記4ポイントのうち①②については,不可避的に注意が払われているのだろうと思います。
 しかし,③④の点については,十分に配慮されていないというのが現状のようです(特に③に関して,未だに外国人には日本人と同じような労働法の保護が及ばないと考えている事業主の方もいらっしゃるようです。)。
外国籍の方の雇用についても,日本人同様「慎重かつ確実に」を心掛けましょう。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 朝妻 太郎◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2011年9月15日号(vol.86)>

月別アーカイブ

悩むよりも、まずご相談ください

お客様のトラブルや不安を一日でも早く取り除くためのサポートをいたします。

ご相談予約専用フリーダイヤル

0120-15-4640 メールからのご予約はこちら
予約受付時間
9:00~18:00 受付時間 受付時間 受付時間 受付時間 受付時間 受付時間

土曜日のご相談予約受付時間は、9:00~17:00(1時間短縮)となります。

コモンズクラブ総会
販売書籍のご案内 メディア掲載情報一覧 介護事業所向けの案内 保険代理店向けの案内 法務情報 スタッフブログ 弁護士採用情報 事務局採用情報 さむらいプラス
お急ぎの方はこちら
PAGE TOP