法務情報

HOME > 法務情報 > カテゴリ「上越事務所」

法務情報

社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

こんな「ハラスメント」もあるらしい…(弁護士 今井 慶貴)

 │ 新潟事務所, 弁護士今井慶貴, 燕三条事務所, 長岡事務所, 新発田事務所, 上越事務所, コラム

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

一新総合法律事務所
副理事長/新潟事務所長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:早稲田大学法学部

新潟県弁護士会副会長(平成22年度)、新潟市包括外部監査人(令和2~4年度)を歴任。
主な取扱分野は、企業法務(労務、契約、会社法務、コンプライアンス、事業承継、M&A、債権回収など)、事業再生・倒産、自治体法務です。
現在、東京商工リサーチ新潟県版で「ズバッと法談」を連載中です。

 

職場におけるハラスメントといえば、セクハラに始まり、パワハラ、マタハラ、カスハラ…とすっかり日常用語になりました。

 

上に挙げたものは、メジャーなものであり、厚生労働省のサイト「職場におけるハラスメントの防止のために」をご覧いただければ、正確な理解を得ることができます。

最近では、これにとどまらず、様々なハラスメントが生まれているようです。

 

・就活ハラスメント

就活中のセクハラ・パワハラです。

自社に入ってほしいがゆえにプレッシャーをかける「オワハラ」(就活終われハラスメント)というのもこの一種です。

逆に、やめて欲しい人に嫌がらせをするのは「リストラハラスメント」というそうです。

 

・モラルハラスメント

人格や尊厳を否定するような言動であり、パワハラ6類型の中の「精神的な攻撃」や「個の侵害」に重なりますが、優越的な関係がなくても該当します。

「ロジカルハラスメント」は、むやみに論破する、「不機嫌ハラスメント」は、口調や態度で不機嫌さを醸し出すサイレント・モラハラだそうです。

「溜息ハラスメント」というのもあるそうで、ここら辺の無意識系は気をつけたいですね。

 

・アルコールハラスメント

飲み会などでお酒を無理強いするものです。

「カラオケハラスメント」も無理強い系ですが、今風でないことは確かです。

 

・エイジハラスメント

だからといって、「昭和世代」や「Z世代」だからなどと決めつけると「エイジハラスメント」になるかもしれません。

「ジェンダー(性別)ハラスメント」「ブラッド(血液型)ハラスメント」なども偏見系ファミリーと言えるでしょう。

ただ、相手に対してすぐ「ハラスメントだ!」と決めつけると、今度は「ハラスメント・ハラスメント」になるんだとか…面白いですね。

 

・スメルハラスメント

臭いによって相手に不快感を与えるものですが、自覚がない場合が多く、注意もしにくいものです。

同じ臭い系でも、「スモーク(喫煙)ハラスメント」は注意しやすいですね。

 

・リモートハラスメント

リモートワーク中にプライベート空間や私生活について干渉するようなハラスメントであり、「テレワークハラスメント」「オンラインハラスメント」の別名があるそうです。

ITが苦手な人に対する嫌がらせは「テクノロジーハラスメント」で、SNSに職場の人間関係を持ち込んでストレスを与えると「ソーシャルハラスメント」と言われてしまいます。

 

・時短ハラスメント

働き方改革の推進により、仕事が残っているのに残業をさせないようにすることを「時短ハラスメント」というようです。

無理に残業させるよりはよっぽど良いように思うのですが、どうなんでしょうか?

 

・セカンドハラスメント

これだけハラスメントがあると(?)、皆さんもハラスメント相談を受けることもあるかもしれません。

その対応を誤ると、相談してくれた人をさらに傷つけたり、追い詰めてしまいかねません。

逆に、ハラスメント加害者とされた人が、本当にそうなのかも慎重な検証が必要です。

ハラスメント対応の失敗が「セカンドハラスメント」となります。

 

そんなことにならないよう、当事務所ではハラスメント対策の社内研修を承っておりますので、是非ご活用ください。

 

【ハラスメント研修についてはこちら】※企業法務サイトにに移動します。

 


◆弁護士コラム一覧はこちら

◆相談のご予約・お問い合わせはこちら

 

【ご注意】

◆記事の内容については、執筆当時の法令及び情報に基づく一般論であり、個別具体的な事情によっては、異なる結論になる可能性もございます。ご相談や法律的な判断については、個別に相談ください。

◆当事務所は、本サイト上で提供している情報に関していかなる保証もするものではありません。本サイトの利用によって何らかの損害が発生した場合でも、当事務所は一切の責任を負いません。

◆本サイト上に記載されている情報やURLは予告なしに変更、削除することがあります。情報の変更および削除によって何らかの損害が発生したとしても、当事務所は一切責任を負いません。

 

民事調停の活用法(弁護士 細野 希)

 │ 新潟事務所, 燕三条事務所, 長岡事務所, 新発田事務所, 上越事務所, 弁護士細野希, コラム

1 民事調停とは

調停は、当事者が裁判所に来て話し合いをし、調停委員会を介して紛争を解決する方法です。

調停委員会は、裁判官1人と事件ごとに裁判所が指定した民事調停委員2人以上で組織されています。

民事調停委員は、弁護士や専門家などが指定されています。

 

訴訟の場合、最終的には裁判官が判決により結論を出しますが、調停は、紛争当事者が合意をして紛争を解決することを基本としています。

 

2 民事調停の種類

民事調停には、民事一般調停、宅地建物調停、農事調停、商事調停、鉱害調停、交通事故調停、公害等調停、特定調停があります。

 

民事調停は、家賃の未払い、貸金問題、近隣紛争、売買トラブルなど民事に関する紛争を広く対象事件として扱っています。

ただし、離婚や相続など家族の問題に関することは、家庭裁判所が管轄となる家事調停の対象になります。

 

3 管轄裁判所

民事一般調停と商事調停は、相手方の住所を管轄する簡易裁判所に申し立てをするのが原則です。

調停は、相手方との話し合いでの合意を目指すので、相手方が参加しやすいように相手方の近くの裁判所に呼び出す必要があるのです。

 

それ以外の宅地建物調停、農事調停などは、管轄についての特別な定めがあります。

例えば、宅地建物調停事件の管轄裁判所は、紛争の目的である宅地又は建物の所在地を管轄する簡易裁判所になります。

 

また、当事者同時の合意があれば、その合意で定める地方裁判所や簡易裁判所を管轄裁判所とすることもできます。

 

4 民事調停のメリット

民事調停は、非公開で、手数料が安く、訴訟より短期間で事件解決することがメリットです。

調停申立手数料は、訴訟よりも少額であり、例えば、10万円の支払いを求める場合には、申立手数料は500円になります。

 

弁護士に依頼し民事調停の申立てをする方が、争点をまとめて、スムーズに調停が進むと思いますが、例えば、相手方への請求金額が少なく、弁護士費用が高くなるような場合には、当事者本人のみで調停の申立てをすることも当然可能です。

 

裁判所のHPには、申立書の書式がダウンロード(※)できるようになっています。

 

また、調停は、話し合いと言っても、当事者が同席をして協議するわけではなく、民事調停委員を介して話を聞いてもらうので、待合室が別々であり、本人同士が顔を合わせずに調停を進めることもできます。

さらに、金銭の支払いの合意ができて調停調書が作られた場合、調停調書は、判決と同様の効果を持ちますので、債務者が滞納した場合、強制執行の申立てをすることもできます。

____________

※裁判所HP|民事調停で使う書式(申立書)

https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_minzityoutei/index.html

 

5 民事調停のデメリット

民事調停の申立てをしても、相手方が裁判所に来ないと調停で話し合えないので、調停の申立てが無駄に終わることもあります。

民事調停法第34条には、「裁判所又は調停委員会の呼出しを受けた事件の関係人が正当な事由がなく出頭しないときは、裁判所は、5万円以下の過料に処する。」という規定がありますが、実務上は、あまり適用はされていません。

相手方を強制的に裁判所に呼び出しても、結局、当事者間で合意ができず、調停が不成立になり、意味がないともいえるからです。

 

ただし、民事調停法第17条には、裁判所は、調停委員会の調停が成立する見込みがない場合において相当であると認めるときは、職権で、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、事件の解決のために必要な決定をすることができるという規定があります。

 

例えば、当事者間で調停案に概ね合意ができているのに、遠方で、調停に参加できない場合や、当事者が、調停委員会に裁判所に出頭はできないが、調停案に合意すると書面を提出した場合などに、裁判所は、相手方が欠席しても調停に代わる決定をすることがあります。

ただし、裁判所が調停に代わる決定をするためには、民事調停委員の意見を聴き、当事者双方のために衡平に考慮することが求められています。

 

6 おわりに

民事調停は、訴訟と異なり、裁判官が最終的に判決を出してくれるわけではないので、双方の主張の対立が大きい場合には、合意に至らず、調停が不成立になることもあります。

 

しかし、紛争当事者以外の調停委員会が、双方の話を聞いて、紛争を仲介してくれるので、当初、成立しないと思った調停でも、実際にやってみると合意に至る場合もあります。

また、当事者の感情的な対立から本人同士では話し合えない場合でも、第三者を介して話し合うことによって争点整理ができて問題が柔軟に解決することもあります。

調停は非公開なので、プライバシーに係わる事件や社会的に評判を落としたくない事件などにも利用できます。

 

また、相手方との合意できれば、調停調書に謝罪条項を入れたり、再発防止処置条項を入れたりすることもあります。

 

当事者間の示談交渉が決裂した場合、次のステップとして、訴訟又は調停のどちらを選択した方がいいのかは、事件の内容から検討すべきですが、訴訟より比較的簡易な民事調停という手続きもあるので、ご検討いただければと思います。

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 細野 希

細野 希
(ほその のぞみ)

一新総合法律事務所 理事/ 弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:新潟大学法科大学院修了

新潟県都市計画審議会委員(2021年~)、日本弁護士連合会国選弁護本部委員(2022年~)を務めています。主な取扱分野は、交通事故と離婚。そのほか、金銭問題、相続等の家事事件や企業法務など幅広い分野に対応しています。
数多くの企業でハラスメント研修、相続関連セミナーの外部講師を務めた実績があります。


◆弁護士コラム一覧はこちら

◆相談のご予約・お問い合わせはこちら

 

【ご注意】

◆記事の内容については、執筆当時の法令及び情報に基づく一般論であり、個別具体的な事情によっては、異なる結論になる可能性もございます。ご相談や法律的な判断については、個別に相談ください。

◆当事務所は、本サイト上で提供している情報に関していかなる保証もするものではありません。本サイトの利用によって何らかの損害が発生した場合でも、当事務所は一切の責任を負いません。

◆本サイト上に記載されている情報やURLは予告なしに変更、削除することがあります。情報の変更および削除によって何らかの損害が発生したとしても、当事務所は一切責任を負いません。

4月から相続登記が義務化されます!(弁護士 長谷川伸樹)

 │ 新潟事務所, 遺言・相続, 燕三条事務所, 長岡事務所, 新発田事務所, 上越事務所, 弁護士長谷川伸樹

1 相続登記の義務化

 

令和6年4月1日から、相続登記義務化制度が施行されます。

昨今問題となっている、所有者不明不動産に対応するため、不動産に関する権利関係を明確にする目的で開始される制度です。

違反した場合には、10万円以下の過料が科される可能性があり、なんとかして不動産問題に対応しようとする国の姿勢が窺われます。

 

2 義務化の背景

ご親族の方が亡くなり不動産を相続した場合、その不動産の所有者が先代から変更されたことを不動産登記簿に反映させる必要があります。

登記を確認すれば、その不動産の権利関係を把握できるようにすることで、不動産取引が安全・円滑に行われたり、その不動産の管理者を特定ができたりとメリットは多いです。

 

その反面、不動産登記簿を見ても正確な情報が得られなければ、不動産取引や管理者の特定に支障が生じます。

事実、相続登記が放置されることで、土地を購入したいけど登記を見ても所有者がわからないという場合や、近所の空き家の管理をお願いしたいのに誰が所有者かわからず途方に暮れているという問題も多数生じています。

 

そのような状況に対応するために本制度が施行されることになりました。

 

3 義務化の主な3つのルール

主なルールは以下の3つです。

 

①相続により不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならない。

②遺産分割によって不動産を取得した場合は、遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記をしなければならない。

③正当な理由なく、①・②に違反した場合には、10万円以下の過料が科される。

 

※令和6年4月1日より以前に相続が開始している場合も義務化の対象となりますが、相続登記義務化施行日(令和6年4月1日)から3年間は履行期間とされ、一応の時間的な猶予はあります。

 

4 すぐに相続登記ができない場合の対処

早期の相続登記をすることが困難な場合の相続登記申告制度の利用も考えられます。

相続登記遅延の「正当な理由」(上記③参照)については相続人が極めて多数に上る場合や、遺言の効力に争いがある場合など、ある程度限定的に解釈されるようなので、すぐに登記手続ができない場合は専門家に相談して対応を検討するのがよいでしょう。

 

【関連の相続コラム】相続登記をしないとどうなる?手続きをしない場合のリスクについて
※一新総合法律事務所 相続特化サイトに移動します。

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 長谷川 伸樹

長谷川 伸樹
(はせがわ のぶき)

一新総合法律事務所 弁護士

出身地:新潟県村上市
出身大学:神戸大学法科大学院修了

新潟県弁護士会裁判官選考検討委員会委員長などを務める。

主な取扱分野は、交通事故、債務整理、労働問題。そのほか相続、離婚など幅広い分野に対応しています。
事務所全体で300社以上の企業との顧問契約があり、複数の企業で各種ハラスメント研修の講師を務めた実績があります。


◆弁護士コラム一覧はこちら

◆相談のご予約・お問い合わせはこちら

 

【ご注意】

◆記事の内容については、執筆当時の法令及び情報に基づく一般論であり、個別具体的な事情によっては、異なる結論になる可能性もございます。ご相談や法律的な判断については、個別に相談ください。

◆当事務所は、本サイト上で提供している情報に関していかなる保証もするものではありません。本サイトの利用によって何らかの損害が発生した場合でも、当事務所は一切の責任を負いません。

◆本サイト上に記載されている情報やURLは予告なしに変更、削除することがあります。情報の変更および削除によって何らかの損害が発生したとしても、当事務所は一切責任を負いません。

頭をポンポンと触るのはセクハラなの?(弁護士 今井 慶貴)

 │ 新潟事務所, 弁護士今井慶貴, 燕三条事務所, 長岡事務所, 上越事務所, コラム

99のセクハラ行為で町長を辞職

最近のニュースで、岐阜県岐南町の町長(74歳・男性)が、第三者委員会から「少なくとも99のセクハラ行為」を指摘され、町長を辞職したというものがありました。

微妙にキリがよいのか、よくないのかという数字ですが、とにかくすごい数ですね。

報道されているセクハラの内容としては、

・会うたびに頭をポンポンと触られた。

・「赤ちゃんみたいな手してるね」などと手の甲を30秒くらいにわたりさすった。

・スカートをはいている女性職員に「その下は何かはいとるんか」と聞いた。

などがあったということです。

 

頭をポンポンと触るのはセクハラなの?

 

 

3番目のせりふは論外として、「頭ポンポン」というのはどうなのでしょうか?

 

これについて、町長は「今はセクハラだと思っている」としつつ、「私どもの時代は頑張った子、よくできた子は頭をなでてもらった。そういうつもりでやった」と述べていたそうです。

そもそも、町の職員は「子」なのか?というツッコミはさておいて、おそらく町長本人としては「性的な意図」は持っていなかったのではないかと思われます。

 

この点、町の第三者委員会は「親愛や感謝、仕事に対するねぎらいを示すために身体に接触する必要はなく、不必要な身体接触行為で、性的な行動であったと認められる」と指摘したとのことです。

 

実際に、頭を触られた女性は不快に感じ、町長を避ける行動をしていた人もいたそうなので、現在の価値基準においてはセクハラ認定されてもやむを得ないところでしょう。

いずれにせよ、職場での不用意な身体接触をすることで、相手に不快の念を与えないように注意が必要です。

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

一新総合法律事務所
副理事長/新潟事務所長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:早稲田大学法学部

新潟県弁護士会副会長(平成22年度)、新潟市包括外部監査人(令和2~4年度)を歴任。
主な取扱分野は、企業法務(労務、契約、会社法務、コンプライアンス、事業承継、M&A、債権回収など)、事業再生・倒産、自治体法務です。
現在、東京商工リサーチ新潟県版で「ズバッと法談」を連載中です。


◆弁護士コラム一覧はこちら

◆相談のご予約・お問い合わせはこちら

 

【ご注意】

◆記事の内容については、執筆当時の法令及び情報に基づく一般論であり、個別具体的な事情によっては、異なる結論になる可能性もございます。ご相談や法律的な判断については、個別に相談ください。

◆当事務所は、本サイト上で提供している情報に関していかなる保証もするものではありません。本サイトの利用によって何らかの損害が発生した場合でも、当事務所は一切の責任を負いません。

◆本サイト上に記載されている情報やURLは予告なしに変更、削除することがあります。情報の変更および削除によって何らかの損害が発生したとしても、当事務所は一切責任を負いません。

「オヤカク」って何のこと?〜子どもの意思と親の意思(弁護士:和田 光弘)

 │ 新潟事務所, 弁護士和田光弘, 燕三条事務所, 長岡事務所, 新発田事務所, 上越事務所, その他, コラム

導入する企業が増加している「オヤカク」とは?

 

「オヤカク」という言葉は、企業の人事採用において、応募者本人の同意以外に親から内定同意などについての再確認をとること、つまり「親の確認」の略語ということだ。

初めて聞いた略語だが、最近ではそんなことがあってもおかしくないかもしれないという気も何となくする。

 

私の顧問先の食品製造業の社長から、数年前に「先生、なぜ企業が外国人研修生を活用するのか、わかりますか?」と聞かれたことがある。

私は「実質的に支払う費用が安いせいでしょう」と言ったが、社長は「それもあるが」と前置きして、「日本人の若者は親が難しいんですよ」と言った。

「どうしてですか」と聞くと、夜間の勤務となると必ず親から「うちの子の帰りが遅い」というクレームが入るのだという。

 

そういうクレームに対応しているだけで、担当者は疲弊するのだという。

そのときは、時間外労働の法規制遵守が問題なのではないかと内心思ってはいて、親がいつも介入するわけもなかろうと考えていた。

 

実際の相談場面でも

労働問題の相談を受ける際に、まれに親が相談面談の場に同席することがある。

「子ども本人にパワハラ的な対応をして、職場に居られなくなるようにしたのは上司の責任だ」と訴える親とは別に、本人に話を聞くと本人は親の言う通りだとして、具体的な事実について親ほど雄弁に語れない。

 

最後に交渉方針の共有をするために、私が本人である子どもに「職場に戻る方向での交渉で良いのか」と聞くと何となく煮え切らない。

逆に親の方から「先生、ぜひそうしてください」と言われてしまう。

 

親が過度に子どもの労働のあり方に関わることは、子どもと親との関係性が問題なのだろうと思っていたし、なべて日本社会において一般化できる話ではないとも考えていた。

 

「親の思い」は採用時に無視できないものに

 

しかし、採用企業側が「オヤカク」をする理由を見れば、若者本人の内定辞退防止による人事採用コストの低減や採用後の親とのトラブル防止というのだから、けっこうそれなりの現実に迫られているのかもしれないとも思う。

 

ヨーロッパやアメリカの文化では考えられないというのは簡単だが、各企業も日本の現実に対する対策を考えないわけにもいかないだろう。

 

労働契約が採用する側と採用される側の意思の一致が成立の要件だ、というのも法律上の理屈の話でしかない。

 

ただ法律上の理屈の話はそれなりに原則として重要だろう。

 

せめて、それを意識・認識した上で、採用される若者本人に対して、企業としては、親にはどのような情報を提供して欲しいのか必要であればいつでも言って欲しいとか、それなりに親にも理解してもらえる情報としてこのようなサイトがあるなどは必要になるのではないだろうか。

 

法律家ではなく、一人の親として

そういう弁護士である自分自身も、一人の親であって、子どもの就職に無関心でいられたわけではない。

私事で恐縮だが、4人の子どもの親としてはとにかくそれぞれ心配はした。

 

一人の子が就職のための進路に迷えばアドバイスもしたし、就職後に過酷な職場環境と思われればそれなりに心配もした。

ある子どもに対しては、事後報告になっても、何が魅力でどうしてそこに就職したいのかは、しつこく聞いたりもした。

別の子が仕事の関係でテレビに出ることになったと聞けば、一所懸命録画したりもした。

要は、やはり親バカなのだろう。

 

問題は、一個の人間として、親子の距離感の問題ではないか、とも思っている。

もし、自分に「オヤカク」が来たとすれば、その子に何て言うのだろうか。

「うちの親は自分に任せると言っていました、と言ってくれ」かもしれない。

もしかしたら、啖呵を切って「お前を信用しないなら、早いとこ見切りをつけたほうがいい」と言うのかもしれない。

だが、それほど威勢良くも言えず、「ああ、わかった、それで良ければ何でも書く」ということに急になるかもしれない。

 

とにかく、その場にならないと、子どもの顔でも見ないと、あまり格好いいことは言えないのが、親なのかもしれない。

 

意外にも、自分と子どもの関係は傍目に見る以上にウエットなのだと、今さら気づき始めた。

 

それこそ、「ここの会社はどうなっている!」と、最後は親クレームをバンバン言いそうな気もしてきた。

いやいや、どうも法律家らしからぬ自分というものがありそうだ。

偉そうなことは言えない。

 

この記事を執筆した弁護士
弁護士 和田 光弘

和田 光弘
(わだ みつひろ)

一新総合法律事務所
理事長/弁護士

出身地:新潟県燕市
出身大学:早稲田大学法学部(国際公法専攻)

日本弁護士連合会副会長(平成29年度)​をはじめ、新潟県弁護士会会長などを歴任。

主な取扱い分野は、企業法務全般(労務・労働事件(企業側)、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など)。そのほか、不動産問題、相続など幅広い分野に精通しています。
事務所全体で300社以上の企業との顧問契約があり、企業のリスク管理の一環として数多くの企業でハラスメント研修の講師を務めた実績があります。​


◆弁護士コラム一覧はこちら

◆相談のご予約・お問い合わせはこちら

 

【ご注意】

◆記事の内容については、執筆当時の法令及び情報に基づく一般論であり、個別具体的な事情によっては、異なる結論になる可能性もございます。ご相談や法律的な判断については、個別に相談ください。

◆当事務所は、本サイト上で提供している情報に関していかなる保証もするものではありません。本サイトの利用によって何らかの損害が発生した場合でも、当事務所は一切の責任を負いません。

◆本サイト上に記載されている情報やURLは予告なしに変更、削除することがあります。情報の変更および削除によって何らかの損害が発生したとしても、当事務所は一切責任を負いません。

 

 

月別アーカイブ

悩むよりも、まずご相談ください

お客様のトラブルや不安を一日でも早く取り除くためのサポートをいたします。

ご相談予約専用フリーダイヤル

0120-15-4640 メールからのご予約はこちら
予約受付時間
9:00~18:00 受付時間 受付時間 受付時間 受付時間 受付時間 受付時間

土曜日のご相談予約受付時間は、9:00~17:00(1時間短縮)となります。

販売書籍のご案内 メディア掲載情報一覧 介護事業所向けの案内 保険代理店向けの案内 法務情報 スタッフブログ 弁護士採用情報 事務局採用情報 さむらいプラス
お急ぎの方はこちら
PAGE TOP