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離婚後の共同親権とは(弁護士:古島 実)

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この記事を執筆した弁護士
弁護士 古島 実

古島 実
(こじま みのる)

一新総合法律事務所
理事/燕三条事務所長/弁護士

出身地:新潟県燕市
出身大学:一橋大学法学部卒業(憲法専攻)

新潟県弁護士会副会長(平成19年度)などを務める。主な取扱分野は交通事故、相続、企業法務問題(労務・労働事件(企業側)、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など)。
保険代理店向け交通事故対応セミナーや、三条商工会議所主催の弁護士セミナー等で講師を務めた実績があります。

 

法務省が法制審議会(法相の諮問機関)の部会に、家族法制見直しの中間試案のたたき台を示し、離婚した父母双方を親権者にできる「離婚後の共同親権」の導入を提案したとの報道もあり、離婚後の共同親権についての議論がされるようになりました。

そこで、離婚後の共同親権について説明します。

 

1 親権とは何か

現行法では、夫婦に未成年の子がいる場合、親権は父母が共同で行使します。

そして、離婚する場合、親権者を父母どちらか一方に定め、単独で親権を行使します。

 

ところで、親権とは、未成年の子どもに対する親の権利義務の総称をいい、親権の内容を大きく二つに分けると身上監護権と財産管理権があります。

 

身上監護権は、子どもの教育や身のまわりの世話を行う権利義務のことをいいます。

これには、居所指定権(子どもの住む場所を指定することができる権利)、懲戒権(子どもに対して必要なしつけを行う権利)、職業許可権(子どもが職業を営むことについて許可を与える権利)、身分上の行為の代理権(認知の訴えや相続の承認・放棄等、特別な身分行為を子どもに代理して行う権利)があります。

 

財産管理権は、子ども名義の財産を管理し、子どもの代理人となる権利義務のことをいいます。

民法第820条に「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」と定められているように、親権は、親権者が子どもの利益のために行う権限と義務であり、物に対する所有権のように権利者が自らの利益のために自由に行使する権利とは全く異なります。

 

2 現行法では離婚後は単独親権

多くの場合では、子どもは親権者となった親の元で暮らし、親権者とならなかった親は、子どもと定期的に面会交流を行い、親権者になった親に養育費を支払います。

 

離婚後に親権者にならなかった親も、親であることに変わりがなく、離婚前と同様に、子どもの成長に関わりたいと思うはずです。

そして、離婚後も両親が子どもの成長にかかわった方が子どもにとってもプラスになると思います。

 

しかし、離婚後は、親権者とならなかった親と子どもは疎遠になり、だんだん、面会交流も行われなくなり、養育費の支払いも滞ったりする場合も多いです。

 

特に、離婚の際に、親の一方が他方の親に不信感を持つような事情があり、離婚後に信頼関係が形成されない場合は疎遠になってしまうことも多いと思います。

 

 

3 離婚後の共同親権

そこで、親権を婚姻中と同様に、離婚後も両親に共同で親権を行わせようというのが共同親権です。

共同親権とすることによって、離婚後も、国の制度上、両親が子どもの成長にかかわることになり、子どもの成長にとってプラスになり、面会交流が積極に行われ、養育費の支払いが維持されるなどの効果も期待されます。

ただ、離婚に至った事情にDVや虐待のなどがある場合は、そもそも共同親権が期待できない場合もあると思われます。

 

4 共同親権を実施ための環境の整備の必要

未だ、導入の可否も、具体的な内容も決まっていませんが、導入に際しては実施のための環境の整備が必要になると思います。

まず、離婚に際して、共同で行使する親権の内容を適切に定めるのが大切になってきます。

親権を行使する場面を具体的に考えると、共同で行使すべき重要な事項や養育する親権者が単独で決めるのが妥当である事項も考えられ、個別具体的な事情を考慮する必要があります。

また、離婚に際して、共同親権の内容に両親の合意が得られないことも考えられます。

そして、離婚後は、父母は同居していないので、婚姻中と同じく親権の行使をすることは難しく、例えば、共同親権となっている事項について両親の意見が一致しない、そもそも父母が協議できない場合があることが考えられ、制度的な配慮が必要になってきます。

 

このような場合は、最終的に、家庭裁判所が、個別具体的な事情を検討して決めることになり、家族の在り方に国家機関である裁判所が大きな役割を果たすことになります。

 

また、弁護士も、これまでは、離婚に際しては、親権者の決定にのみに関与し、離婚後の親権の行使にはあまり関与しませんでした。

しかし、共同親権が導入されると、離婚に際しては共同親権の内容の協議に弁護士が代理人として関与し、また、離婚後も共同親権の行使について弁護士が代理人として関与することが考えられます。

弁護士も共同親権が導入される場合は適切に役割を果たせるように、十分に準備しておくことが必要になってきます。

 


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学校の先生方の残業(弁護士:古島 実)

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この記事を執筆した弁護士
弁護士 古島 実

古島 実
(こじま みのる)

一新総合法律事務所
理事/燕三条事務所長/弁護士

出身地:新潟県燕市
出身大学:一橋大学法学部卒業(憲法専攻)

新潟県弁護士会副会長(平成19年度)などを務める。主な取扱分野は交通事故、相続、企業法務問題(労務・労働事件(企業側)、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など)。
保険代理店向け交通事故対応セミナーや、三条商工会議所主催の弁護士セミナー等で講師を務めた実績があります。

忙しい学校の先生の毎日

学校の先生方は、お昼休みは子供たちの対応に追われ、十分に休憩が取れなかったり、採点や授業の準備などを放課後学校に残ってすることもできずに自宅に持ち帰らざるをえなくなったりと、勤務時間内に終わらないほどの仕事を抱えています。

また、放課後は、部活の顧問として指導をして、大会などがあれば休日返上で、子供たちを引率しています。

保護者も、子供たちの指導や活発な部活動について大きな期待を持っています。

 

先生方も保護者の期待にこたえようと努力され、長時間にわたって働いています。

そのようななかで、体や心の限界を超えてしまい、長期に休職されている先生方もおられます。

また、教職員の勤務の実情を知って教職員になるのを躊躇する若者もいるようです。

 

先生方も学校長などの上司に指揮監督されながら労務を提供して給与をもらう労働者という意味では、会社員として働く皆さんと同じです。

また、教職員という職業から離れた立場で、家族や自分と向き合う時間や生活が大切であるという点でも皆さんと同じです。

 

それでは、法律では教職員の勤務体系はどうなっているか、公立学校の教職員と一般企業の会社員と比較してみましょう。

 

教職員と会社員の勤務体系の違い

教職員の勤務時間には、「正規の勤務時間」「超過勤務命令などによる勤務時間」があります。

「正規の勤務時間」は、会社員でいえば所定の勤務時間(例えば、始業8時30分、終業5時30分、休憩12時から1時)にあたります。

教職員も労働基準法により、1週間40時間、 1日8時間の制約があります。

これは会社員と同じです。

 

「超過勤務命令などによる勤務時間」は、会社員の残業に当たります。

会社員の残業は、原則、月45時間、年360時間という法律の制限の範囲内で認められます。

会社では残業時間と残業手当は厳格に管理されていると思います。

 

教職員の場合は、一定の時間が認められているのではなく、校外実習、修学旅行、職員会議、非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合など臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限られています。

そのため、教職員の残業は臨時的なものになります。

勤務時間外の残業、持ち帰りの仕事、勤務時間外の部活動の指導は、「正規の勤務時間」でも「超過勤務命令などによる勤務時間」でもない本来あるはずのない業務になります。

 

どうして教職員の残業は増えるのか?

 

会社員には残業に対して、割増(最低で25%)された残業手当が残業時間に応じて支払われます。

教職員には、「教職調整額」として、正規の勤務時間以外に働いた時間にかかわりなく、毎月の給料に4パーセントが上乗せされます。

仮に、月間の所定の勤務時間が21日✕8時間=168時間であるとすると4%は月間6.72時間分に当たります。

たとえ、昼休みを生徒の指導に使っても、採点や授業の準備などの業務が多くて正規の勤務時間中に終わらず、学校に残って作業を行っても、やむなく家に持ち帰って作業をしても、教職調整額以外の手当はもらえないということになります。

 

そして、部活動の指導についても、特別な手当は支払われません。

部活動の指導は、先生方は仕事とは関係のない趣味として行っているのではなく、学校の仕事として行っています。

また、保護者も学校の部活動としてみていると思います。

 

このようなことから、会社員では法律で明確にされている残業の制限やそれに対する手当が教職員では不明確で、教職員に対する社会の期待に応じて無制限に教職員の仕事が増えているように見えます。

教職員は次の社会の担い手を育てる尊い職業です。

このままでは、教職員の成り手も減ってしましますし、せっかく教職員になっても、体調を崩したり、家庭と両立できずに教職員を続けられない方も増えてくると思います。

 

実情にあわせた法整備を…

現在働き方改革が叫ばれています。

学校の教職員の働き方も、一般の会社員と同様に、実情に合わせて残業の制限と残業手当について法整備をする必要があると思います。

また、保護者も教職員がこのような実情にあることを理解したうえで教職員に接する必要があると思います。

【交通事故】従業員が社有車を私用で運転中に事故

 │ ビジネス, 燕三条事務所, 弁護士古島実, 交通事故

 従業員が社有車を私用で運転していた時に事故を起こし,被害者に怪我をさせた場合,運転していた従業員は被害者に対して損害賠償責任を負いますが,会社も被害者に対して損害賠償責任を負う場合があります。
 
 法第715条は使用者責任を定め,被用者が使用者の「事業の執行に際して」第三者に損害賠償責任を負う場合は,使用者も被害者に対して損害賠償責任を負うとしています。
 

 「事業の執行に際して」は,運転者の行為が外形的にその職務の範疇にあるかで判断します。会社名の入った業務用の自動車であれば該当する可能性が高いと思います。
 

 また,自賠法3条は運行供用者責任を定め,人身事故を起こした自動車の運行を支配し運行の利益を有する者は人身事故について責任を負うとします。運転をしていた従業員と雇用関係があることや従業員に使用を許可していたことを根拠に使用者の運行供用者責任が認められる場合があります。たとえ,無断使用であっても,これらの議論があてはまります。
   

 従業員による社有車の業務外使用には十分に気を付ける必要があります。

 

★当事務所ホームページ内の交通事故に関するページはこちらです★
  

 ◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実
(当事務所「事故賠償」チーム責任者)◆

<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2013年8月12日号(vol.132)>

【労災事故】労働災害への備えは労災保険だけで大丈夫?

 │ 燕三条事務所, 弁護士古島実, 労災事故

 職場で労災事故が発生し,労働者が怪我をして,入通院治療をしたり,後遺症が残ったりした場合,公的な労災保険から労働者に対して給付金が支給されます。それだけで,使用者は責任を免れるでしょうか?

  

 労働契約法第5条は「使用者は労働契約に伴い,労働者がその生命,身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をするものとする」と規定し,使用者に安全配慮義務を課しています。使用者は,職場に存在する生命や身体等に対する危険を予見して,危険の現実化を防止するために人的物的な処置を講ずる義務を負います。

  

 そして,使用者が同義務に違反して,労災事故が起きた場合は,使用者は,労働者に対して,治療費,入通院や後遺症に対する慰謝料,後遺症のために十分に働けなくなったことに対する損害賠償責任を負い,その額が,労災保険の給付金を超える場合は,その差額について,支払わなければなりません。死亡や重い後遺障害が残った時は,経営を揺るがす金額にもなりかねません。また,使用者が支払えないと,労災事故に遭った従業員やその家族も生活に困窮してしまいます。そこで,災害防止が一番大切ですが,万一に備えて事前に労災保険ばかりでなく労災事故に備えた損害賠償保険に加入する必要があると思います。また,それが,従業員やその家族の生活の立て直しにつながります。

 

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実
(当事務所「事故賠償」チーム責任者)◆

<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2013年8月1日号(vol.131)>

 

【交通事故】事故に遭った時に加害者に請求できる項目

 │ 燕三条事務所, 弁護士古島実, 交通事故

 交通事故に限らず,事故に遭って被害を受けた時は,被害者は加害者に対して損害の賠償請求ができます。そして,被害者が加害者に対して請求できる項目を大きく分けると,物的損害(物損)と人的損害(人損)があります。

  

 物的損害は事故によって物が壊れた場合に請求できる項目です。交通事故であれば,自動車の修理代,自動車が店に突っ込んだ場合の改修費,営業損害などです。

 

 人的損害は事故によって人身が傷害された場合に請求できる項目です。人的損害は大きく分けると三つに分かれます。治療中に関するものと,治療しても治らなかった障害すなわち後遺障害に関するもの,死亡に関するものです。

 

 治療に関するものとして,治療費,治療のために仕事を休んだことによる休業損害,入通院の精神的苦痛に対する慰謝料などがあります。
 

 後遺障害に関するものとして,後遺障害の精神的苦痛に対する後遺障害慰謝料,事故前よりも十分に働けなくなったことによる逸失利益に対する賠償などがあります。

 

 死亡に関するものとしては,精神的苦痛に対する償いである死亡慰謝料,死亡したことによって失った収入に対する賠償である死亡逸失利益などがあります。

 
 ★当事務所ホームページの交通事故に関するページはこちら★

 

 


◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実
(当事務所「事故賠償」チーム責任者)◆

<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2013年5月15日号(vol.126)>

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