法務情報

HOME > 法務情報 > カテゴリ「弁護士大橋良二」

法務情報

社会で実際に起こった、事例や改正された法律をふまえ、法律に関する情報をご紹介します。

【法務情報】更新料・敷引特約についての最高裁判例解説

 │ 弁護士大橋良二, 新発田事務所, 消費者

1 既に新聞報道などでご存じの方も多いかと思いますが,先月(※2011.7)に入ってから,建物の賃貸借契約に関して,重要な2つの最高裁判決が登場しました。

 
 一つは,「賃貸借契約の更新料特約」に関するもので,もう一つは,「賃貸借契約の敷引き特約」に関するものです。どちらも我々の生活に直接影響を及ぼしうる重要判例ですので,以下,本当に大まかな内容ですが解説します。

 
2 まず,「賃貸借契約の更新料特約」が何かというと,関西地方でよく見られる特約で,たとえば,1年間の賃貸借契約を締結すると,1年後の契約更新の際に,借主が貸主に対し,賃料の2か月分を「更新料」という名目で支払うなどというものです。

 
  現に,私も大学時代に京都で借りていた物件にもこの特約があり,1年ごとに(記憶が曖昧ですが)家賃の2.5か月分を支払ったという記憶があります。現実には,1年ごとの更新月に,家賃+更新料(家賃の数か月分)を負担するので,なかなか大きな金額を負担することになります。

 
 この特約の問題点は様々指摘されてきたところですが,消費者にとってわかりにくく不利な契約であり,消費者契約法に反するといって無効であるなどと主張されていました。

 
 これに対し,最高裁判決は,「賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り」有効と判断しました。(7月15日最高裁判所第二小法廷)。

 
 要は(誤解を恐れずにごく簡単にいうと),更新料の取り決めが契約書上はっきり記載されていて,契約するときに更新料がどのような金額であるか(たとえば,何年ごとに何万円必要なのか)が契約を読んで理解できるようなものであれば,特別な事情がない限り有効という意味です。

 
 ですので,今後は,特別な事情がない限りは,「1年ごとに家賃1か月分の更新料がかかります」といった特約は有効と判断されると考えることができるでしょう。

 
3 次に,「賃貸借契約の敷引き特約」というのは,新潟県内でもよく見られる契約で,借主が賃貸借契約が終了して明け渡す際に,建物のクリーニング費用等々という名目で,一定額を敷金から差し引くというもの(など)です。

 
 この点もまた,私が学生のころ借りていた物件でも,居住年数掛ける1万円が敷金から差し引かれるという特約があり,明渡し時にその物件を借りていた期間分(4年間×1万円=4万円)を,敷金から差し引かれたという記憶があります。

 
 この事件では,高等裁判所は,契約時の貸主借主の情報格差や借主にとって大きな負担であること等を理由に無効と判断したのですが,最高裁判所は逆転して有効と判断しました。

 
 その理由としては,本件契約書に,本件敷引金が返還されないことが明確に読み取れる条項が置かれていたのであるから,借主は,本件契約によって自らが負うこととなる金銭的な負担を明確に認識した上で本件契約の締結に及んだものであると指摘されています。(7月12日最高裁判所第三小法廷)


 この判例の登場により,今後は,たとえば,建物明渡し時に3万円のハウスクリーニング費用を頂きますといった契約については,その内容が具体的かつ明確なので,不当に高額である等の事情がなければ,有効と判断される可能性が高いでしょう。

 
4 以上の2つの最高裁判決から読み取りうる内容としては「具体的な条項が記載された契約書に署名押印したのであれば,後で不平不当を主張してもなかなか受け入れられない」ということです。

 
 すなわち,更新料特約については,契約の際に契約書を見れば毎年その金額を支払わなければならなくなることが理解できる内容の契約書に署名押印した以上は,また,敷引き特約についても,明渡し時にいくら差し引かれるのかが明確に読み取れる条項がある契約書に署名押印したのであれば,後から「その契約は不当だ」と主張しても裁判所は簡単には主張を認めてはくれないということです。

 
 というわけで,契約書に署名押印したら後から契約内容に不服を述べても容易には覆りません。

 
 上記の判例は消費者対事業者に関するものですが,事業者対事業者であればなおさらです。その意味で,契約書は署名押印する前に事前のチェックが重要なのです。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 大橋 良二◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2011年8月15日号(vol.84)>

【法務情報】電子メールによる広告の注意点について

 │ ビジネス, 弁護士大橋良二, 新発田事務所

 最近では、電子メールによる広告を目にする機会が多くなりました。

 

 チラシや新聞広告などの「紙媒体」による広告に比べて、電子メールによる広告はコストの面で優れているといわれ、多くの企業が電子メールを利用した広告活動を行っています。みなさんも携帯電話やパソコンなどで電子メールの広告を目にすることも多いのではないでしょうか。

 

 このような電子メール広告ですが、実際に電子メールで広告宣伝を行う場合には、実は多くの法規制があり、コンプライアンス(法令遵守)の観点からは決して容易なことではありません。

 

 その中でも重要な規制のひとつとして「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」(特定電子メール法)による規制があります。同法は、広告宣伝を行うメールに対する規制を定めるもので、平成14年に施行されたのち改正を繰り返し、平成20年12月に再度、比較的大きな改正が行われました。

 
 その改正により、広告メールの送信は、従来のオプトアウト方式にかえて、原則としてオプトイン方式によらなければならないことになりました

 
 オプトイン方式とは、簡単にいえば「事前に承諾のある人に対してしか広告メールを送ることはできない」ということであり、言い換えれば「広告メールを送るためには事前に承諾を得なければならない」ということです。

 
 ですから、同法の改正により、たとえば、「新商品ができたからこれまで商品を買ってくれたお客さんにメールで広告してみよう」と思っても、事前に承諾をとっていなければ送信することができないことになりました。(なお、一部例外規定あり)

 
 また、同法には、さらに細かい規制を定めており、広告宣伝メールを送信する場合は、送信者の氏名・名称や、受信を拒否する場合の通知先など、一定の事項を表示する義務(表示義務)を負うこととし、その他にも、電子メールを受信することの承諾があった旨の証拠を保存するために、請求・承諾があったことを示す記録を保管しなければならならない義務を定め(保管義務)、さらには、請求・承諾をする者が自己の意に反して請求・承諾の意思表示をすることのないように分かり易い表示をする義務を負うといった旨の規制も定めています。

 
 有用な広告メールがある一方で、迷惑メールなどを送信する違法な業者も後を絶たないことから、法律の実効性確保のために罰則も引きあげられました。

 
 同法に違反した場合には、行政上の「措置命令」に加え、刑事罰もあり平成20年12月の改正によって、送信者情報を偽ったり、総務大臣による命令に従わないなど悪質な者に対しては、「3000万円以下の罰金」(対法人)という相当に高額な罰金刑が規定されているのです。

 
 以上の説明は特定電子メール法による規制に関するものですが、電子メールで広告宣伝活動を行う場合には、ほかにも特定商取引法による規制や、広告メールを送るに際して個人が識別できるような情報を取得することになれば、個人情報保護法の問題も別途発生してきます。

 
 このように、現在では「ちょっとメールで宣伝してみよう」という善意による宣伝活動でも、様々な法律的な規制があり、コンプライアンス(法令遵守)の観点からはなかなか困難な問題を含むようです。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 大橋 良二◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2009年4月号(vol.37)>


【法務情報】死後のシミュレーションの重要性

 │ 遺言・相続, 弁護士大橋良二, 新発田事務所

1 昔よりも親族関係が希薄になったためか、権利意識が高まったためかはわかりませんが、近年、遺産分割事件が少しずつ増えているようです。

 
 弁護士は、遺産分割が紛争に至ってから関与することがまだ多いのですが、分割協議の際には、相続人の方から「遺言を残しておいてくれたらこんなことにはならなかったのに」という言葉を聞くことが多々あります。

 
2 このように、遺言について漠然としたイメージを有している方は多いとは思いますが、そうはいっても、実際に生前に遺言を残している方は、まだまだ少ないというのが実情です。

 
 一口に遺言といっても、実際に遺言を作る際には、何をどう考えて、何を遺言に書けばよいのかわからない方が多いのではないかと思います。

 
 最近では、遺言の作り方の本なども手に入りますが、それでも実際に遺言を作る方が少ないのは、何のために「遺言」を書かなければならないのか、わざわざ遺言を書く必要があるのかどうか、といった点についてイメージが持てないからかもしれません。

 
3 では、具体的に何のために遺言を作る必要があるか、自分の場合に遺言を作る必要があるかどうかについて、どのようにしたらイメージを持つことができるでしょうか。

 
 それは、実際にあなたの死後にどのような問題が生じうるかという「あなたの死後」をシミュレーションしてみるとわかります。

 
 すなわち、仮にたった今、あなたが亡くなったとしたら、
  ・あなたの財産を誰がどのような割合で相続することになるのか
  ・あなたの財産にはどのようなものがあり、どのような価値があるのか
  ・誰がどのような割合で財産を相続するのか
  ・相続人の誰かが納得しなかった場合には、どのように分配されることになるのか
    (=法律上の規定に基づくとどのように分配される可能性があるのか)

 
といった基本的な内容を確認して、シミュレーションしてみるのです。具体的なシミュレーションまでしてみると、問題点が把握でき、遺言を作成したいという気持ちになってくるのだと思います。

 
4 余り知られていないかもしれませんが、このようなシミュレーションは、遺言作成のための調査を弁護士に依頼することで行うことができます。

 
 もし、今あなたに万が一のことがあった場合に、「誰が相続人で」、「どのような財産があって」、「その財産がどのくらいの価値で」、「法律に従うと、誰がどのくらいの遺産を分割して受け取ることになるか」ということは、法律の専門家であり、相続案件を多く扱う弁護士でなければ、調査や判断が難しいように思います。

 
 ですから、少しでも自分の死後について思いを巡らせることがあるのであれば、弁護士に調査を依頼し、その後実際に、あなたの死後について具体的なシミュレーションをしてみるとよいのかもしれません。

 
 そして、そのシミュレーションの結果、遺言を残さなければならないほどの必要性があると感じたのであれば、遺言作成をすればよいのです。
5 ちなみに、弁護士に相談や調査を依頼する必要性がある方というのは、どのような方でしょうか。

 
 全く漠然としたイメージですが、たとえば、「子どもが2人いて、自宅がある」といった場合には、相談や調査する意味があると(個人的には)思います。複数の土地建物がある場合や、疎遠な親族が相続人となり得るという場合、さらに、事業をされている方の場合には、事業承継(=誰にどう引き継がせるか)という問題も生じてくるので、より相談する必要性が大きいと思われます。

 

6 最近では、病気に関して早期治療のための定期検診は常識となりつつありますが、自分の健康を守るために定期検診に行くように、自分の死後の憂いをなくすためにも、(あるいは、ちょっとした興味本位でも)、一度は、弁護士に遺言作成の調査を依頼することが、これから一般的になっていくのかも知れません。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 大橋 良二◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2010年3月1日号(vol.49)>

【法務情報】事業者に近づく振り込め詐欺

 │ 弁護士大橋良二, 新発田事務所, 消費者

 「振り込め詐欺」という言葉が浸透してからしばらく経ちますが、最近でも振り込め詐欺が多発しています。

 
 「振り込め詐欺」というと、たとえば、息子から交通事故で他人に怪我をさせてしまったとの電話があり、示談金名目で現金の振り込みを請求される事案(典型的な「振り込め詐欺」)や、インターネットの利用者に対して、有料サイトを閲覧した料金の請求といった名目で架空の請求をし、特定の口座へ現金の振り込みを請求されるという事案(いわゆる「架空請求」といわれるもの)がすぐに思いつくかもしれません。

 
 しかし、金融庁などで類型化されている振り込め詐欺の手口にはこの2つの他にもさらに2種類あります。

 
 一つは、「融資保証金詐欺」と呼ばれるものです。

 
 これは、ある日突然、事業者のところへ、「融資する」という内容のダイレクトメールやFAXなどが送られてきます。経営が苦しい事業者が融資を申し込むと、融資する際に保証金を預けることが必要であるといわれ、保証金名目で数万円単位のお金を預けることを要求されます。

 
 事業者がこの保証金を振り込むと、さらに別の保証金の名目でさらに高額の振込みを要求され、事業者が振り込むとさらに高額な保証金を要求される・・・といったものです。

 
 もう一つは、「還付金詐欺」と呼ばれるものです。

 
 これは、ある日突然、事業者のところへ税務署、自治体職員、社会保険庁などといったもっともらしい機関を名乗る者から連絡が来ます。その内容は、これから税金や医療費、保険料等の還付を行うからATMに行ってからこの電話番号に再度電話をしてほしいというものです。

 
 事業者が、ATMへ行って電話をかけると、これから指示通りに操作をして下さいといわれ、「いまエラーが出ているので、一度こちらに○○万円を送金して下さい。そうしたら、還付金と併せて返金することができますので」などといわれ、その指示通りに操作をして相手の口座に送金してしまうというものです。

 
 どちらの手法も第三者から冷静にみれば詐欺としか思えない内容なのですが、実際には状況によっては信用してしまうこともあるようで、被害にあった人は口を揃えて「報道などで詐欺の存在については知っていたが、まさか自分が・・・」というそうです。

 
 このような多種多様な振り込め詐欺を予防するには、「すぐに振り込まない」「一人で振りこまない」を徹底することであると言われています。自分一人では詐欺とは思えない状況でも、家族や第三者からみると容易に詐欺だと分かるというわけです。

 
 それでは、もしも、もうすでにこのような手口で騙され、振り込んでしまったという場合にはどのような対処方法があるのでしょうか。

 
 この点について、従来は、通常通りの法的手続きによることしかできませんでした。

 
 民事訴訟等であれば時間も費用もそれなりにかかるものですし、もちろん必ず全額回収できるというわけではないので、訴訟費用のリスクを考えて泣き寝入りせざるをえないケースも多々ありました。

 
 ところが、このような状況を打開するために、平成20年6月になって振り込め詐欺救済法(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)が施行されました。

 
 この法律により、規定された要件を満たせば、民事訴訟等の続きによらなくともより簡易な手続きにより「被害回復分配金」という名目で、一定の金銭の返還を求めることができるようになりました。(ただし、期間制限など一定の条件があります)

 
 とはいえ、このような手続きを利用できたとしても、被害額を全額回収できる保証があるわけではありません。

 
 ですから、このような振り込め詐欺にあわないよう、日頃から些細なことでも家族や第三者に相談できるという環境を確保しておくことが重要なのです。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 大橋 良二◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2008年8月号(vol.30)>

【法務情報】本・ネット情報VS弁護士

 │ 弁護士大橋良二, 新発田事務所, その他

 最近では、弁護士のような法律家向けのものではなく、一般の人に向けた法律書の類が多く書店に並んでいるのを見かけます。「だれでもわかる○○」「やさしい○○」といったタイトルで、書店に並んでいる類のものです。

 
 また、インターネットで検索すれば、よくある事例などであれば、たいていはそれ相応の情報やアドバイスを見つけることができます。

 
 このように、多くの法律に関する情報が書籍やインターネットで手に入れることができるのに、それでも弁護士に相談するのにはどのような意味があるのでしょうか。

 
 いくつか理由はあると思うのですが、その中でひとつ紹介すると、弁護士に相談した場合に得られる情報と、本やインターネットから得られる情報の質的な差があるため、と解答することが考えられます。すなわち、本やインターネットから得られる情報が一般的なものであるのに対して、弁護士に相談した場合に得られる情報は一般的なもののみでなく、個々の相談者に応じた具体的な対策が提示されるという点で違いがあるということです。

 
 より具体的にいうと、本やインターネット上にある情報は、基本的にはよくある典型的なケースであるとか、一般論であるとか、情報を提供している人自身の体験談であり、そこで提示されている解決策も、あくまで他人のケースに関するものであって、相談者自身のケースに対するものではありません。たとえば、遺言を残したいという場合であっても、まずは「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」という3つの方法があり、それぞれの方法のメリット・デメリットがあるということまでは調べればすぐにわかります。しかし、そのメリット・デメリットがどの程度のもので、どの手段を選択することが自分にとって最も有益であるか、費用対効果の点を含めて自分で検討しなければなりません。

 
 これに対して、弁護士に相談した場合には、それぞれの方法についてのメリット・デメリットについての情報が提供されるのはもちろんのこと、相談者の目的や予算に応じて、どの方法がおすすめの方法なのか、その方法をとった場合、あなたの場合には何が問題となってくるのかといったさらに踏み込んだ、ひとりひとりに合わせた個別の情報を入手することができるわけです。

 
 このように、弁護士に相談した場合には、相談者ひとりひとりにあわせた具体的な情報を提供できるという点で、本やインターネットとは異なった特徴があり、あえて弁護士に相談するという意味があるということができるのではないでしょうか。

 
 もちろん、相談前にあらかじめ自分で勉強し、一定の予備知識を持って相談に望むことは、相談をより有意義なものとするために有効であることはもちろんですが。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 大橋 良二◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2007年最終号(vol.24)>

月別アーカイブ

悩むよりも、まずご相談ください

お客様のトラブルや不安を一日でも早く取り除くためのサポートをいたします。

ご相談予約専用フリーダイヤル

0120-15-4640 メールからのご予約はこちら
予約受付時間
9:00~18:00 受付時間 受付時間 受付時間 受付時間 受付時間 受付時間

土曜日のご相談予約受付時間は、9:00~17:00(1時間短縮)となります。

コモンズクラブ総会
販売書籍のご案内 メディア掲載情報一覧 介護事業所向けの案内 保険代理店向けの案内 法務情報 スタッフブログ 弁護士採用情報 事務局採用情報 さむらいプラス
お急ぎの方はこちら
PAGE TOP