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法務情報

2025/08/25

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ポケモンのハッピーセット、転売目的の購入は違法?(弁護士:中澤 亮一)

コラムタイトル「転売目的の購入は違法?」

ポケモンのハッピーセットで起きた問題

日本マクドナルドから8月8日に発売されたハッピーセットが話題となっています。

それは、9日より同セットに「ポケモンカード」が付属するようになり、一部の人がそのカードを転売する目的で大量に購入し(いわゆる「転売ヤ―」)、中には食品を道端などに捨てて、カードだけを持ち帰るということが起きたからです。

このような事態となったことで、SNS上ではマクドナルドの対応等に批判が集中し、11日にはマクドナルドが公式に謝罪を表明しましたが、その後も「炎上」状態は続いています(マクドナルドでは以前も同様の問題が起きており、そのことも非難の理由となっているようです)。

転売は違法なのか?

付録だけが目的で食べ物を口にせずに捨てることは論外ですが、そもそもこのような「転売」は違法ではないのかと、気になる方も多いのではないでしょうか?


実は、転売行為自体は原則として違法ではありません。

転売とは「自分が購入した物を再度他者に売却すること」であると考えられますが、自分が購入して所有権を有する物を処分することは基本的に自由であって、正当な行為なのです。

もし、それが全て違法であるとすると、たとえばフリマサイトでの個人間売買や、リサイクルショップへの売却、家電や自動車購入の際の下取りなども違法となってしまいます。

転売が違法となるケース

但し、転売が違法となるケースもあります。

まず、転売する品物が個別の法律で規制されている場合です。

・ライブチケットなどを高額転売する行為(チケット不正転売禁止法)
・未承認薬の輸入販売等(薬機法)
・酒の継続的な販売(酒税法)
・ブランド品の偽物の販売(商標法)


また、これらの品物に該当しなくとも、「反復継続的に営利を目的として転売を行っている場合」は「古物商」に該当するため、古物営業法上の許可を受けない限り転売は違法となります。

さらに、その品物の販売条件として「転売禁止」とか「転売はお断りします」といった条件が付いていて、本当は転売目的なのに「転売目的はない」「自分で使う」と偽って(嘘をついて)購入する行為は、詐欺罪に該当する可能性があります。

ただしこのケースは、転売者の内心(本当の目的)を立証することは困難と思われ、簡単に摘発するということはできないでしょう。

ハッピーセットの場合はどうか

今回のハッピーセットでは、上記の古物商に該当するような場合でなければ、転売目的の購入であっても違法ということは難しそうです。

ただ、ハッピーセットというのはそもそも子ども向けの商品であり、「転売ヤー」の買い占めによって、ポケモンカードを楽しみにしていた子どもたちまで購入できなかったとすれば、残念としか言いようがありません。

法律上は違法でなくとも、常識や道義的な観点から許されない行為というものはあるのではないかと、個人的には思います。

今後の課題と企業の対応

対策としては、結局のところ販売する企業側の努力にかかっているとしか言えないのが現状ですが、対策に要するコストや従業員の負担などを考えると、企業の対策と言ってもなかなか難しいのも事実であり、今回のマクドナルドも対策が不十分だった点がとくに批判されているようです。

人気商品を考えるのと同時に、転売対策もまた考えなければならないとすると、なんとも世知辛い世の中になったということかもしれません。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 中澤 亮一

中澤 亮一
(なかざわ りょういち)

一新総合法律事務所 
理事/上越事務所長/弁護士

出身地:新潟県南魚沼郡湯沢町 
出身大学:早稲田大学法科大学院修了

国立大学法人における研究倫理委員会委員、新潟県弁護士会学校へ行こう委員会副委員長などを務めている。主な取扱分野は、離婚、金銭問題、相続。また、企業法務(労務・労働事件(企業側)、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など)などにも精通しています。
複数の企業でハラスメント研修、相続関連セミナーの外部講師を務めた実績があります。

 

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