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法務情報

2025/09/19

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企業が知っておくべきインフルエンサー契約とは?(弁護士:後藤 晋太郎)

コラム弁護士 後藤晋太郎新潟事務所長岡事務所上越事務所燕三条事務所新発田事務所長野事務所松本事務所高崎事務所

1 はじめに

SNSの普及により、企業が商品やサービスをプロモーションする手段として「インフルエンサーマーケティング」が広く活用されるようになりました。

これは、YouTubeやInstagram、X(旧Twitter)などで強い影響力や拡散力を持つインフルエンサーを起用し、企業の商品やサービスを宣伝する広告手法です。


これに伴い、インフルエンサーと企業との間で締結される広告業務委託契約(いわゆる「インフルエンサー契約」といいます。)も増加傾向にあるようです。

本稿では、こうした契約において注意すべき法的なポイントについて解説します。

2 契約書の作成の重要性

インフルエンサー契約は、報酬の支払いと引き換えに宣伝行為を委託する「業務委託契約」の一種です。

口頭や簡易なメール、DMなどで簡易に契約内容を取り決めるケースもあるそうですが、認識の齟齬によるトラブルを防ぐためにも書面による契約書の作成を勧めます。


契約書には、業務内容、報酬額、競業避止義務、禁止行為やコンプライアンスの規定、秘密保持義務、契約期間と解除条件などを明記することが一般的です。

3 投稿内容の明確化とチェック体制

インフルエンサーの創造性を尊重しつつも、企業の意向に沿った内容で投稿してもらう必要があります。

そのため、発信内容は事前に確認するプロセスを契約書に盛り込むことは有効になります。


また、薬機法[1] や景品表示法[2] に抵触する恐れがある表現(例えば、「絶対に痩せる」、「100%効果あり」などの断定的な効能効果表現)は法令に違反するおそれがあります。

投稿内容については、法務部門のチェック体制を整えることも重要です。

________________

 [1]医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

 [2]不当景品類及び不当表示防止法

4 ステルスマーケティング規制への対応

令和5年10月に施行された改正景品表示法により、ステルスマーケティング(ステマ)規制が導入されました。

これは、広告であることを隠して行う宣伝行為に対し、不当表示として行政処分が下される可能性があるというものです。

景品表示法で規制される広告には、企業がインフルエンサーなどの第三者に依頼・指示して行う投稿も含まれるとされています。


インフルエンサー契約においては、投稿に「#PR」「広告」「タイアップ」等の適切な表示を行うことを契約書で義務付けトラブルを防止しておく必要があります。

5 契約違反・炎上リスクへの備え

インフルエンサーが契約に違反したり、不適切な発言や行動で炎上したりすることで、企業の信用やブランドイメージが毀損されるリスクがあります。

このような事態に備え、契約書には損害賠償条項、契約解除条項、再発防止策(たとえばSNS運用に関するガイドラインの遵守義務)などを盛り込むことが推奨されます。

6 おわりに

インフルエンサーとの協業は、ターゲット層への高い訴求力を持つ効果的なマーケティング手法です。

しかし、契約内容が曖昧なまま進めると、企業・インフルエンサー双方にとってリスクが大きくなります。

トラブルを未然に防ぐためにも、契約の段階で適切な法的対応を行うことが重要です。


【参考】
・「医薬品など適正広告基準の解説及び留意事項等について」(平成29年9月29日 薬生監麻発 0929 第 5 号 厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長通知)
・「「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準」(令和5年3月28日 消費者庁長官決定)

この記事を執筆した弁護士
弁護士 後藤 晋太郎

後藤 晋太郎
(ごとう しんたろう)

一新総合法律事務所  弁護士

出身地:新潟県新発田市
出身大学:明治大学法科大学院修了
主な取り扱い分野は、企業法務(労務・労働事件、契約書関連、クレーム対応、業法対応、債権回収など)、事業再生・倒産分野、行政関連分野です。企業法務をはじめ、交通事故、債務整理、家事事件など幅広い分野に対応しています。
地方公務員勤務を経て、弁護士資格を取得。前職でも行政書士を対象としたセミナー講師を務めた実績があります。

 

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