2026/04/21
法務情報
自転車の交通反則通告制度 青切符について

※2026年10月8日更新
1 はじめに
「自転車の取締りが厳しくなる」というニュースを聞いて、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
令和8年4月1日、道路交通法の一部を改正する法律(令和6年法律第34号)のうち、16歳以上の自転車運転者を交通反則通告制度の対象とする規定が施行されました。
これにより、自転車の一定の交通違反について、いわゆる「青切符」による処理が行われるようになりました。
本稿では、自転車に対する交通反則通告制度の概要と、違反をした場合の取扱いについて解説します。
2 自転車の交通反則通告制度とは
交通反則通告制度とは、比較的軽微で、現認が容易かつ定型的な交通違反について、通常の刑事手続によらず、簡易かつ迅速に処理するための制度です。
取締りを受けた人が一定期間内に反則金を納付すると、その反則行為について公訴を提起されず、少年の場合には家庭裁判所の審判にも付されません。
そのため、有罪判決を受けて、いわゆる「前科」がつくこともありません。
取締りの際には、警察官から、反則行為となる事実の要旨や仮納付の期限などが記載された書面と納付書が交付されます。
この書面を含む交通反則切符が、一般に「青切符」と呼ばれています。
なお、法令上、取締りの現場で交付される書面は「告知書」とされており、仮納付をしなかった場合の後続手続で交付又は送付される「通告書」とは区別されています。
これまで、自転車の交通違反については、いわゆる「赤切符」等による刑事手続で処理されるか、現場での指導警告にとどまることが一般的でした。
青切符制度は、その間を埋める制度と考えることができます。
3 自転車への青切符導入の背景
警察庁によると、自転車関連事故は年間7万件前後で横ばいに推移していますが、交通事故全体に占める自転車関連事故の割合や、自転車と歩行者との事故件数は増加傾向にあります。
また、自転車乗用中の死亡・重傷事故のうち、約4分の3には自転車側にも法令違反が認められています。
このような状況を踏まえ、悪質・危険な違反について、違反者と警察双方の時間的・手続的な負担を軽減しつつ、実効性のある責任追及を可能にし、自転車事故を抑止するために青切符制度が導入されました。
もっとも、青切符制度の導入によって、すべての軽微な違反が直ちに検挙されるわけではありません。
警察は、自転車の交通違反を認知した場合、基本的には現場で指導警告を行い、交通事故の原因となるような、歩行者や他の車両にとって危険性・迷惑性が高い悪質・危険な違反を検挙するという方針を示しています。
この基本的な考え方は、青切符導入後も変わりません。
4 自転車の違反行為について
自転車の違反行為は、その内容や危険性、違反によって生じた結果、違反の行われ方などに応じて、処理の方法が異なります。
⑴ 違反自体が悪質・危険な場合
違反自体の悪質性・危険性が高い場合には、検挙の対象となります。
その中でも、特に重大な違反は、青切符の対象とはならず、赤切符等による刑事手続で処理されます。
例えば、酒酔い運転や酒気帯び運転、妨害運転、携帯電話の使用によって実際に道路交通上の危険を生じさせた場合などがこれに当たります。
これらは、重大な事故につながる危険性が特に高い行為として扱われます。
一方、違反自体の悪質性・危険性は高いものの、法令上「反則行為」とされている違反については、青切符で処理されます。
例えば、遮断機が閉じているなどの状況で踏切に立ち入る行為、ブレーキなどの制動装置が不良の自転車を運転する行為、スマートフォンを手に持って通話したり、手に持った画面を注視しながら運転する行為などがこれに当たります。
⑵ 違反の結果や行われ方が悪質・危険な場合
違反が招いた結果や、違反の行われ方が悪質・危険と評価される場合にも、検挙の対象となります。
この場合も、実際の状況に応じて、刑事手続又は青切符で処理されます。
例えば、違反を原因として実際に交通事故を起こした場合には、刑事手続で処理されます。
手放し運転の結果、歩行者と衝突した場合などがこれに当たります。
これに対し、事故には至らなかったものの、違反によって具体的な交通上の危険が生じた場合には、青切符で処理されます。
例えば、歩行者が驚いて立ち止まった場合や、他の車両が急ブレーキ又は急な進路変更を余儀なくされた場合などです。
また、複数の違反を同時に行い、事故の危険性が高まっている場合も、青切符による処理の対象となります。
例えば、2人乗りをしながら赤信号を無視した場合や、傘を差しながら一時停止をしなかった場合などです。
さらに、警察官による指導警告に従わず違反行為を続けた場合や、警察官が指導取締りを行っていることを認識しながら、それを意に介さず違反行為を行った場合も、違反の行われ方が悪質であるとして、青切符による処理の対象となります。
5 青切符を受け取った後の手続
青切符の交付を受け、違反をしたことを認めて反則金を納付する場合には、告知を受けた日の翌日から起算して原則7日以内に、反則金に相当する金額を仮納付することができます。
仮納付は法律上の義務ではなく、違反の成立を争う場合には納付しないこともできます。
仮納付をした後、警察本部長による通告がなされると、反則金を正式に納付したものとみなされます。
その場合、当該反則行為について公訴を提起されず、少年については家庭裁判所の審判にも付されません。
そのため、有罪となって、いわゆる「前科」がつくこともありません。
仮納付をしなかった場合には、原則として、青切符に記載された指定の期日に交通反則通告センターへ出頭し、通告書と納付書の交付を受けます。
遠隔地に住んでいるなどの理由で出頭できないときには、通告書と納付書が郵送されることがあります。
この場合、送付に要する費用が反則金に加算されます。
通告を受けた日の翌日から起算して10日以内に反則金を納付すれば、仮納付をした場合と同様に、刑事手続には移行しません。
他方、この期間内にも反則金を納付しなかった場合には、刑事手続に移行し、少年の場合には家庭裁判所の審判の対象となる可能性があります。
その結果、罰金刑などが科されることもあります。
なお、反則行為をしていないなどとして違反の成立を争う場合には、反則金を納付せず、刑事手続等の中で争うことになります。
反則金を納付すると、その時点で手続は終了し、後から違反の成否を争うことはできません。
6 運転免許の点数と停止処分
自転車の交通違反について、自動車の運転免許の点数が付されることはありません。
したがって、青切符を受けたことによって、直ちに運転免許の点数が加算されるわけではありません。
ただし、自動車等の運転免許を持っている人が、自転車によるひき逃げや死亡事故などの重大な交通事故を起こした場合、又は酒酔い運転・酒気帯び運転をはじめとする特に悪質・危険な違反をした場合には、公安委員会が「自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがある」と認めるときに、6か月を超えない範囲で運転免許の停止処分が行われることがあります。
7 おわりに
自転車は手軽で便利な移動手段ですが、道路交通法上は「軽車両」に当たり、運転する人には交通ルールを守る責任があります。
青切符制度が導入されても、軽微な違反がすべて直ちに検挙されるわけではありません。
しかし、事故につながる危険性・迷惑性の高い違反や、指導警告を無視して行われる違反などは、青切符又は刑事手続の対象となります。
今回の制度改正をきっかけに、日頃の自転車の運転方法を改めて確認しておきましょう。
[参考]
・警察庁交通局『自転車を安全・安心に利用するために 自転車への交通反則通告制度 青切符の導入 自転車ルールブック』令和7年9月
・警察庁 自転車ポータルサイト『自転車の新しい制度』
・警察庁 自転車ポータルサイト『取締りについて』
・e-Gov法令検索『道路交通法』
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