2026/06/08
法務情報
声優がTikTokを提訴!AIで声を真似たら誰が責任を取るのか?(弁護士:今井 慶貴)

本年(2026年)5/23の日経新聞が、昨年(2025年)11月、声優の津田健次郎さんが、TikTokの運営会社に対し、生成AIによって自分の声を無断で模倣した動画が公開されているとして動画の削除を求めて東京地裁に提訴していたと報じました。
津田さんは「艶のある低音ボイス」や「低く渋みのある声」(うらやましい!)が特徴ということで、人気アニメなどで活躍されています。
訴状によると、動画を投稿したのは氏名不詳者のアカウントで、津田さんの声質を模したナレーションを付けた動画を多数投稿し、多数のフォロワーを有し、それにより相当な収益を上げたということです。
生成AIにより、容易に著名人の声を生成できるようになっていますが、「声」の保護については、現行法において直接的に保護する規定は存在しません。
この点は、 内閣府知的財産戦略推進事務局設置の「AI 時代の知的財産権検討会 」が2024年5月に公表した『AI 時代の知的財産権検討会 中間とりまとめ』でも検討されています。
そこでは、著作隣接権は「実演」を保護するものであり「声」そのものは対象外、また、商標権や不正競争防止法も間接的な保護にとどまることから、パブリシティ権が最も有力な保護手段となり得ることが示唆されています。
「パブリシティ権」とは、判例(ピンク・レディー事件・最高裁平成24年判決)が、氏名・肖像等が有する顧客吸引力を排他的に利用する権利として認めたものであり、同判決の調査官解説では、パブリシティ権の客体である「肖像等」には「声」が含まれると明示されています。
したがって、同判例が示したパブリシティ権侵害の例示——①声自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合、②商品等の差別化のために声を商品等に付す場合、③声を商品等の広告として使用する場合——に該当する場面では、「声」についてパブリシティ権に基づく保護が認められ、これら以外にも、「専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合」であれば、より広くパブリシティ権による保護が及ぶことになります。
今回の訴訟でも、津田さん側は、投稿者が津田さんの声を模したナレーションを使い閲覧者を誘引していることから、著名人らが財産的価値を独占できるパブリシティー権を違法に侵害されたと主張しているとのことです。
一方、津田さん側の代理人によると、被告側はナレーションについて「普遍的な男性の声」だとし、話し方も特徴的ではないため、津田さんの声と類似していない、投稿者は友人の声をAIに学習させて作ったと外部サイトで説明しており、違法性はないと主張しているとのことです。
生成AIによる声の無断利用を巡る日本での訴訟は初めてとみられ、この裁判の結論が重要なリーディング・ケースになるかもしれません。今後も注視していきたいところです。
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