2014/02/25
法務情報
【法律相談】外国人留学生のアルバイト雇用
私の会社で短期のアルバイトを募集したところ,N第一大学に通っている,外国人留学生のAさんが応募してきました。面接したら真面目そうな人柄だったので,採用しようと思っています。
ただ,私の会社で外国人のアルバイトを雇用するのは初めてです。何か気をつけるべき点などはあるでしょうか。
1.在留資格及び在留期間の確認
外国人留学生の方をアルバイトとして雇用する場合,まずは,最も基本的な事項として,在留資格を正しく有しているかどうか,及び在留期間がいつまでかを確認するべきです。
在留資格と在留期間は,パスポートの中に貼られた「証印」というシール状のものに記載されています。また,市町村等が発行して外国人に交付する「在留カード」にも記載されています。
確認する際は,念の為にパスポートと在留カードの両方を確認した上で,確認した証明としてコピーを取っておくことをお勧めします。
なお,在留資格については,留学生であれば,「留学」という在留資格が記載されているはずです。
2.資格外活動許可があるかの確認
「留学」という在留資格は,その人が日本において教育を受けるために与えられた資格であり,就労をするために与えられた資格ではありません。そのため,「留学」の在留資格で日本に来ている外国人は,原則として,「収入を伴う事業を運営する活動」及び「報酬を得る活動」を行うことはできません(出入国管理法19条1項2号)。外国人留学生のアルバイト行為は,この「報酬を得る活動」に該当します。
そこで,外国人留学生がアルバイトを行うためには,入国管理局から,「資格外活動許可」を得る必要があります。この資格外活動許可は,外国人留学生が自分でまたは在籍する教育機関の申請取次制度を利用するなどして,管轄の入国管理局(例えば,新潟県在住の場合は東京入国管理局新潟出張所など。)に申請を行って取得します。
資格外活動許可を得た人には,「資格外活動許可書」が発行されます。そこで,外国人留学生をアルバイトとして雇う場合は,この許可書を提示させて許可の存在を確認すべきです。なお,この許可書についても,確認した証明としてコピーを取っておくことをお勧めします。
3.活動許可がないとどうなるか
万が一,外国人留学生が資格外活動許可を得ずにアルバイトを行った場合,または同許可の有効期限を過ぎてアルバイトを行った場合は,不法就労となり,日本からの退去を強制される可能性があります(同法24条4号イ)。また,懲役,禁錮若しくは罰金(または懲役・禁錮と罰金との併科)という刑事罰を科せられる可能性もあります(同法70条1項4号,同法73条)。
さらに,留学生自身だけではなく雇用主についても,資格外活動許可のない外国人留学生に就労をさせた雇用主は,同許可の不存在を知らなかったことにつき過失のない場合を除いて,懲役若しくは罰金(またはこれらの併科)という刑事罰を科せられる可能性があります(同法73条の2第1項1号,同条2項2号)。そのため,外国人留学生を雇用する場合に,資格外活動許可の存在を確認しておくことは非常に重要です。
4.労働時間の制限
外国人留学生の資格外活動としての就労については,在留の真の目的である教育活動が疎かにならないようにという趣旨で,日本人の場合よりも労働時間が制限されています。
具体的には,「1週について28時間以内」という制限がなされています。ただし,在籍する教育機関の長期休業期間においては,「1日について8時間以内」に緩和されます(同法施行規則19条5項1号。もっとも,後者についても,日本人と同様に1週間40時間以内といった労基法上の制限が適用されます)。
そのため,外国人留学生をアルバイトとして雇用する場合には,上記の労働時間の制限を越えてしまわないように注意が必要です。
5.職種の制限
なお,前記の資格外活動許可を得ている外国人でも,職種の制限として,風俗営業等に従事することはできません(正確には,「風俗営業若しくは店舗型性風俗特殊営業が営まれている営業所において行うもの又は無店舗型性風俗特殊営業,映像送信型性風俗特殊営業,店舗型電話異性紹介営業若しくは無店舗型電話異性紹介営業」に従事できません。出入国管理法施行規則19条5項1号)。
6.おわりに
外国人留学生をアルバイトとして雇用する場合について,注意すべき点は概ね以上のとおりです。
なお,本稿に関連する記事として,こもんず通心67号において角家弁護士が,「外国人雇い入れ時の注意点について」という記事,同86号において朝妻弁護士が,「外国人を雇い入れるということ~外国人労働者を雇用する際の注意点~」という記事を,それぞれ執筆しております。それらの記事もあわせてご参照いただければ,外国人雇用に関してより深くご理解いただけると存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 海津 諭◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2013年11月15号(vol.138)>
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