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契約の錯誤無効について~反社会的勢力への対策~

 │ 企業・団体, 弁護士上野祐, 東京事務所, 上越事務所, 新発田事務所, ビジネス, 燕三条事務所, 長岡事務所, 新潟事務所

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今回は、反社会的勢力と契約の有効性について取り上げたいと思います。

 

暴力団が典型ですので、暴力団を中心に説明したいと思います。

 

暴力団対策法(正式には「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」)は、暴力団を構成員が犯罪に当たる暴力的違法行為を集団的・常習的に行うことを助長するおそれがある団体と定義し、各都道府県の公安委員会は同法に基づき、様々な取り締まりを行っています。

 

もし、暴力団から、暴力的な犯罪行為の被害に遭ったり、遭いそうになったりした場合には、警察、暴力団追放センター、弁護士・弁護士会に相談をし、被害の回復や被害の防止を図っていくことになります。

 

その一方で、暴力団は、その資金源を得たり、活動拠点を確保するために、日常生活や取引社会における様々な場面に現れ、一般人や一般事業者と接点を持とうとしてくるため、知らないうちに暴力団と接点を有してしまうことがあります。

 

例えば、外見からは暴力団員が運営しているとは分からないような会社を立ち上げ、金融機関から融資を受けたり、事業所を借りたりする場合があります。

 

そして、事業者にとって、取引相手が暴力団関係者と判明した場合には、直ちに関係を絶つことが求められています。

 

新潟県暴力団排除条例は、暴力団の排除を基本理念に掲げ、事業者に対し、相手が暴力団であることを知りながら、その活動を助長したり、運営に資することになる利益の供与(取引)を禁止しています(第11条第1項⑵)。

 

他方で、同条例は、相手が暴力団であることを知らないでした契約上の義務を履行することは禁止していません。

 

これは、暴力団であるとの事情は、当然には契約を無効にするわけではないという法解釈に基づいています。

 

つまり、“取引相手が暴力団であることを予め知っていれば契約を交わすことはなかったから契約はなかったことにしてほしい”との主張は、法制度に当てはめると「錯誤」(民法95条)の主張となります。

 

確かに、「錯誤」が認められれば契約は無効となりますが、前記のような契約締結の“動機”内容に錯誤がある場合については、無制限に契約を無効とすれば取引が極めて不安定になります。

 

それゆえ、裁判所は、「動機が表示されて契約の内容となった」と認められる必要があるとの法解釈を採っています。

 

最高裁は、近年、金融機関が暴力団に対し貸し付けた貸付金を保証する旨の信用保証協会の保証契約の有効性について、貸付者が反社会的勢力であるとの事実が事後的に判明した場合の対応や取扱いに関する規定が契約書にないことを理由に、契約は有効であると判断しました(平成28年1月12日判決)。

 

その賛否はともかく、契約書に明示的に定めていない限り、“取引相手が暴力団であることを予め知っていれば契約を交わすことはなかったから契約はなかったことにしてほしい”との主張は、法的には認められないことになるのです。

 

以上を踏まえると、取引相手が暴力団であるとの事情が事後的に判明した場合への事前の対応策は、詰まるところ契約書に必要な条項を挿入すべきことになります。

 

新潟県暴力団排除条例は、事業者に対し、書面で契約を締結する場合には、契約の相手方が暴力団員であることが判明したときには催告することなく契約を解除することができる旨を定めることの努力義務を課しています(第12条第2項)。

 

法的義務ではなく努力義務ではありますが、暴力団排除という社会的使命を果たすためにも、必要な措置として励行すべきと思われます。

 

もう一つ、大切な対策として、事前の確認義務の問題があります。

 

先に触れた事例も、保証人側は、金融機関が、借主が反社会的勢力に属することの調査を怠ったと主張し、最高裁判所も、契約時に一般的に行われている調査方法に照らして相当と認められる調査を怠った場合には、金融機関と保証人との間の保証契約違反に当たり得ると判断しています。

 

この事例について、最高裁判所の判断を受けた高等裁判所は、金融機関ですから、グループ会社で得た情報や外部団体(暴力団追放センター等)からの情報を基にデータベースを構築し、そこで確認をしていることをもって、相当と認められる調査がされたと判断し、保証契約を有効としました。

 

実際に、どの程度の調査を行うべきかは、取引の内容や事業者の規模にもよるかと思いますが、新潟県暴力団排除条例では、契約時に、取引相手に暴力団員でないことを書面で誓約させることを求めていますから(第12条第1項)、最低限、その程度の確認作業が必要と思われます。

 

また、警察や暴力団追放センターは、場合によっては情報提供をしてくれますので、適宜照会を行うことも有効かと思います。

 

最後に、事業者にとっては、たとえ事前に知らなかったとしても、暴力団とつながりを持ってしまったこと自体が企業イメージを大きく損ねる結果となりますし、事後的に判明した場合の対応を誤ると、大きな損失を被るおそれもあります。

 

ですから、先の説明を参考に、適正な対処につなげられるような事前の対策を意識することが重要になります。

 

まだ特段の対策を行っていない事業者におかれましては、当事務所にも適宜ご相談いただければと思います。

 

 

Point


 

契約後に相手方が反社会的勢力と判明した場合、

その契約を無効と主張するためのポイントとして……


 

・反社会的勢力であるとの事実が、事後的に判明した場合の対応や取扱いに関する規定を契約書に明示する。

ex.「契約の相手方が暴力団員であることが判明したときには、催告することなく契約を解除します。」

・契約時に、取引相手に暴力団員でないことを書面で誓約させる等、確認作業を行う。


 

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 上野 祐

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2016年12月5日号(vol.203)>

※掲載時の法令に基づいており,現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

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