【法務情報】改正パートタイム労働法(※平成20年4月1日施行)
従来,パートタイム労働者は,賃金等に関して正社員と差別的に扱われる傾向にあることが問題とされてきましたが,今回の改正法は,パートタイム労働者の待遇を正社員と均衡のとれた待遇とするための措置や正社員への転換措置推進を講ずることを事業主に求めるものです。
そこで,事業主は,パートタイム労働者を雇う場合に注意しなければならないことが増えています。
事業主が意識しておかなければならない重要なポイントは以下のとおりです。
ポイント① - 労働条件の文書化 -
事業主は,パートタイム労働者を雇用した際,速やかに「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」について,文書の交付により明示しなければなりません。
さらに,労働基準法により,全労働者に対して,「契約期間」「仕事をする場所と仕事の内容」「始業・終業の時刻や所定時間外労働の有無,休日・休暇」「賃金」「退職に関する事項」を文書で明示化することが義務づけられていることを忘れてはいけません。
かかる義務に違反すれば罰金の制裁があります。
ポイント② - 待遇についての説明義務 -
パートタイム労働者が求めた場合には,事業主はそのパートタイム労働者の待遇を決定するに当たって考慮した事項を説明することが義務化されました。
ただし,最終的にパートタイム労働者が納得するまでの説明を求めるものではありませんので,事業主が合理的な説明をしたにもかかわらず,パートタイム労働者が納得しない場合には,事業所内の苦情処理手続や都道府県労働局長の助言・指導などを求めるなどの方法をとられるとよいでしょう。
ポイント③ - 均衡のとれた待遇の確保の推進 -
「職務の内容」「人材活用の仕組や運用」が全雇用期間を通じて同じであり,「契約期間が実質的に無期契約」となっているパートタイム労働者は,通常の労働者と就業の実体が同じと判断され,賃金,教育訓練,福利厚生などのすべての待遇を差別的に取り扱うことが禁止されています。
なお,「契約期間が実質的に無期契約」とは,期間を定めていても反復更新によって実質的に期間の定めのない労働契約と変わらない場合を含みますので注意して下さい。
また,上記要件を充たさないパートタイム労働者に対しても,教育訓練や福利厚生施設の利用に関しては利用の機会を与えるように実施,配慮しなければならない義務(努力義務と異なり実際に運用する義務)が定められています。
さらに,賃金については,上記要件を充たさないパートタイム労働者に対しても,同一の方法で決定したり,職務の内容,成果,意欲,能力,経験などを勘案する努力義務が定められています。
ポイント④ - 通常の労働者への転換の推進 -
事業主は,通常の労働者を募集する場合,既に雇っているパートタイム労働者に周知させたり,パートタイム労働者が通常の労働者へ転換するための試験制度の設けるなどの措置を講じなければなりません。
その他
パートタイム労働者にも,最低賃金法,男女雇用機会均等法等の適用があることを忘れてはいけません。また解雇の制限についても,労働基準法がパートタイム労働者にも適用されるので,雇止めを含めて自由な解雇が認められるわけではありません。事業主には,コンプライアンスがいっそう求められる社会になっていますので,お気をつけ下さい。
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2008年6月号(vol.28)>