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【法律相談】「遺言」と「任意後見」

 │ 新潟事務所, 遺言・相続, 弁護士古島実

Q 私は、小さな株式会社のオーナー社長で、株式の8割を所有しています。また、アパートや上場株も所有しており、その他預貯金もあります。
 子どもは長男と長女がおり、長男は会社の専務取締役として働いており、会社を継ぐ意思を有しています。長女は県外に嫁ぎ、会社には興味がありません。
 実は昨年、私の父が認知症を何年か患った後、死亡しました。
 私も父のように認知症によって、判断能力がなくなり、長男への会社の承継や生活費・療養費を確保する為のアパートその他の財産の管理処分を行えなくなってしまうのがとても心配です。
 妻は財産の管理が苦手なので、妻に任せることもできません。死後のことは遺言書を作成してありますが、いったいどうしたらよいでしょうか。

 
A 病気や事故によって判断能力がなくなると法律行為(例えば、株式の譲渡、株式譲渡承認の取締役会決議に関する事務、アパートや上場株の処分、預金の解約などの財産管理処分行為)を行うことができなくなります。

 
 民法には成年後見人の制度が設けられており、判断能力がなくなったときは家族などが裁判所に成年後見人の選任を申請すれば、裁判所が選任した成年後見人が裁判所の監督の下、あなたの代わりに財産管理処分行為などの法律行為を行います。

 
 しかし、あなたの信頼する人が成年後見人に選ばれるとも限りませんし、また、あなたの現在の思いを成年後見人が実現するとも限りません。もちろん、判断能力がなくなってからではあなたの希望を伝えることもできません。

 
 あなたが亡くなった場合は遺言であなたの希望をはっきりさせることができますし、あなたの信頼する人を遺言執行者に選んでおけばその人が遺言書に示されたあなたの希望を実現してくれるでしょう。

 
 それでは、判断能力がなくなった場合は自分の希望どおりにならないのでしょうか。

 
 そこで、任意後見制度が平成12年に導入されました。

 
 これは、あなたが判断能力のあるうちに、判断能力がなくなったときにあなたの代理人として活動する人(任意後見人)を予め選んでおく制度です。

 
 あなたが判断能力のあるうちに任意後見人の候補者と契約を締結し、契約の中で、委任事項も定めることができるので、「判断能力を失ったときにこのようにして欲しい。」という希望も実現することができます。任意後見人は裁判所の監督の下、活動することになりますので安心です。

 
 あなたの場合は、任意後見制度を利用することによって、判断能力を失った場合、あなたの信頼する人に対して、株式を長男に譲渡する契約の履行、株式譲渡承認の取締役会決議に関する事務、生活費・療養費を支弁するための財産管理処分行為などを委任することができます。

 
 ところで、相続の事件では、親(特に資産家の場合)が判断能力を低下させてから死亡するまでの間に、親を監護する長男が自分のために親の財産を使ってしまったり、監護のために出費がかさみ財産の多くを使った場合、領収書が無いと他の兄弟から自分のために親の財産を使ったと疑われて兄弟が仲違いしたりすることがあります。

 
 このような紛争は遺言では避けることができません。このような紛争を予め避けるためにも任意後見契約は役に立つと思います。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2008年7月号(vol.29)>

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