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【法務情報】クレーム対応の極意~義と愛のバランス~

 │ 新潟事務所, ビジネス, 弁護士古島実

 顧客から企業によせられるクレームには3つの要素があると思います。

 
 1つ目は、企業側に法的責任があり顧客のクレームに応ずることに法的義務がある要求(義の要素)。

 
 2つ目は、顧客には自分だけを上客のように扱ってほしいという企業に対する愛情要求があると言われており、何かをきっかけにしてこれが満たされないことによって感ずる不平不満にもとづく要求(愛の要素)。

 
 3つ目は、脅し、騙しによる金銭の要求や企業が慌てふためいている姿をみて喜ぶといった要求(侵の要素)です。

 
 義の要素への対応は、例えば欠陥のある商品を売ってしまった場合、顧客から修理や商品の交換を求められたこれに応じ、さらに、顧客にケガをさせてしまった場合は、治療費、休業損害、慰謝料などを支払うといった法律上要求される必要最小限度の対応をすることになります。

 
 愛の要素への対応は、顧客の愛情要求に満足を与え、不平不満を和らげるように、顧客の要求の大小、合理不合理に関わらず、企業の法的責任の有無に関わらず、態度や言葉(見舞い、ねぎらいなど)、金銭の支払い(見舞金、法的に必要な賠償額以上の支払)などで対応することになります。

 
 侵の要素には毅然として断る対応をすることが必要です。

 
 法的には、義の要素への対応をして、それ以外の要素に対しては、クレームを無視して相手にしなければ良いことになります。そして、法的な責任がない場合はクレームを無視しても、冷たく拒絶しても法的には問題はありません。

 
 しかし、それでは、顧客の愛の要素が満たされず、顧客からは、不誠実だ、冷たいなどのさらなるクレームに発展し、角が立ってしまいます。また、企業も相手が顧客であるので義の要素への対応だけでは商売にならないと考えると思います。反面、どこまで愛の要素への対応をすべきかについて明確にできず、顧客の要求に流されがちになると思います。

 
 ところで、企業は顧客への損害賠償に備えてPL保険や損害賠償保険に加入していると思います。これは、義の要素への対応として企業が顧客にお金を支払ったときに、保険会社が義の要素の範囲内でお金を企業に支払ってくれるというものです。

 
 しかし、義の要素への対応を越えるお金を愛の要素への対応として支払うと保険からはお金が支払われずその部分は企業が自腹を切ることになります。保険金の限度内で解決しようとすると極めて窮屈になってしまいます。

 
 以上のことからすれば、顧客からクレームがあった場合は、早い段階で義の要素の有無やその金額を見定めて、侵の要素を排除し、愛の要素を金銭以外で満たして、いかに支出を抑え、顧客の納得を得るようにするかがクレーム対応の極意ということになると思います。

 
 しかし、クレームは、それぞれの要素が別々に来るのではなく、複数の要素が一緒に来たり、順番で来たり、徐々にエスカレートして来たりします。そして、義の要素の有無や金額を早い段階に判断するのは難しいのが現実です。さらに、相手が顧客なので企業は愛をもって対応してしまいます。反面、保険金は義の部分の範囲内でしか支払われません。

 
 極意と言っておきながら実際には完全な実行は難しいと思います。

 
 「義に働けば角がたつ、 愛に竿させば流される、保険の限度は窮屈だ。とかく、クレーム対応はやりにくい。」と言うことでしょうか。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 古島 実◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2010年1月号(vol.46)>


 

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