2011/09/20
法務情報
【法務情報】終の棲家のそのさき
お盆、お彼岸とお墓参りに行かれた方もいらっしゃることと思います。地方の風習、家族のつながりを大事にする伝統的な葬送を守っていくのも、また年に数回これを機に親族が集まるのも良いことと思います。
ただ、最近は、配偶者・その両親とこんな狭いところに死んでまで一緒にいるのは嫌!という方、子どもに面倒を掛けたくないという方、お墓を守ってくれる人がいないという方等が増えているのも事実です。
そこで、今回はそんな思いに対応した現代的葬送の方法とその問題点をほんの少し紹介したいと思います。
【墓を持たない(墓に入らない)という選択】
埋葬と言うと、現在は特定の墓地、納骨堂にお骨を埋蔵・収蔵するのが一般的でしょう。
しかし、最近では散骨(故人の骨灰を海、山等に撒く葬法のこと)をするケースも増加の傾向にあります。この散骨という方法、かつては刑法190条の遺骨遺棄罪にあたると考えられていました。
しかし、法務省は、刑法190条は社会的習俗としての宗教感情を保護するのが目的であるから、葬送のための祭祀で節度をもって行われる限り問題ないとしています。
また、その他の法令の関係でも、社会的に相当な方法でなされる限り、墓地・埋葬等に関する法律、廃棄物処理法、海洋汚染防止法のいずれにも抵触しないとされています。
したがって、現在多く行われている、火葬後に人骨と判断できない程度まで細かく砕き、海・山等の適当な場所に撒くという方法であれば問題はありません。
しかし自宅の庭に撒くとなると法律上問題を生じる可能性があるでしょう。
【永代供養墓に入る・壇寺に永代供養を依頼する】
永代供養墓とは、寺院や霊園が永代管理・永代供養を行うことを約束して販売されるお墓のことです。購入時に永代使用料と併せて永代分の供養料の一括納入を求められることが多いようです。墓の形態もマンション型、ロッカー型など新しいものが登場しています。
ただ、「永代供養」には、現在のところ法的な定義や慣習と呼べるものがなく、実施主体にも資格要件や行政による審査等はありません。また、本人の死後に苦情を言ってくれる人がいるか、いるとしてどのような法的措置を取れるかは、なお検討を要します。
そこで、自分の望む内容の契約であるか、実施主体に永続性があるか、期待した管理・供養が現実になされると信頼できるか等、慎重に吟味する必要があるでしょう。
また、先祖代々の墓に入り、壇寺に永代の管理・供養を依頼するという方法もあります。しかし、最近はお寺も跡取り問題に頭を悩ます時代で、お寺さんに頼んでおけば安心という訳にもいかないようです。
いずれの方法を取るにしても、ご自身の希望を明確にし、それを実現してくれる信頼できる方を探しておく必要がありそうです。
◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 角家 理佳◆
<初出:顧問先向け情報紙「こもんず通心」2009年10月号(vol.43)>
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